「心に風を通して、

よどんだ空気を入れ替える」

 

ある時、学生の一人が自殺した時がありました。

いのちについて一緒に考えていた人だったので、

一層かなしくつらい思いでした。

次の講義の初めに黙とうした後、

この学生の冥福のため、

「苦しいから、もうちょっと生きてみよう」を、

約束する、と皆で申し合わせしました。

 

数日後、廊下で大学の寮長をしていた

四年生と出会ったのですが、

その頃、学寮に色々な

問題が起きていた事を知っていた私は、

「貴方も大変ね」と声を掛けました。

するとその学生が、笑顔で、しかしきっぱりと、

「はい、大変です。大変だから、

 もうちょっと頑張ってみます」と答えて、

足早に去ってゆきましたが、

去った後に、一陣のさわやかさな風が

廊下を吹き抜けていったのを

今も覚えています。

 

「スカッとさわやか」を宣伝文句にして

売り出された清涼飲料水が

あったように記憶しています。

今や、さわやかな香りも

人工的に作り出せる世の中です。

しかし、これらお金で買えるさわやかさは、

私たちの毎日の生活の中にある煩わしさ、

うっとうしさを払しょくして

くれるものではありません。

 

心のさわやかさは、

お金では買えないのです。

それは、生きることの難しさから逃げることなく、

その一つ一つをしっかりと受け止めて、

「大変だから、もうちょっと頑張ってみます」

という心意気から生まれるのです。

ピンチをチャンスに変える、

聡明さと明るさが生み出す健氣こそが、

心のさわやかさとなって表れるのです。

 

苦しいからこそ、

もうちょっと生きてみる決意をするとき、

そこには、さわやかな風が立って、

生きる力と勇気を与えてくれるのです。

 

苦しいからこそ、もうちょっと生きてみる。

生きることは大変だが、

生きようと覚悟を決めることは、

人に力と勇気を与えてくれる。

 

今日も一日、前だけ向いて力強い

一歩を踏み出せる日でありますように。

御陰様で、ありがとうございます。