温故知新(9) | goukakuojisanのブログ

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31年連続で塾生の全員を合格に導いている中学受験専門塾の塾長が語る「中学受験」・・・「うかろうよ」

●生徒のスイッチが入るとき(2)

 

S君が入塾してきたのは4年生の3学期、ちょうど塾の新学期が始まる2月でした。それまで通っていた大手塾では下から4番手から3番手のクラスをいったりきたり、あまりに多くの宿題を抱えて、ちょっと行き詰っていた時でした。「勉強は耐えるもの、そして、その苦しさに耐えることが努力」そう思ってがんばっていましたが、本音はやはり「たえられるかな????」と受験そのものに疑問を抱き始めた頃でした。

 

私の教室でも、女の子の優秀な生徒の影で目立った存在ではありませんでした。偏差値も50程度をうろうろと、志望校も偏差値55程度の中堅校でした。でも、着実に算数の基本を知らず知らずのうちに身に着けていきました。これが後に開花する大きな下地になったのです。

 

6年の夏の前でした。この時期は受験勉強の疲れがピークに達する時でもあります。漠然と、今からどんな学校を目指せるのか、彼に質問されました。

 

「六甲か、がんばれば甲陽くらいは」

 

彼はそれまでの志望校には疑問を抱いていました。がんばってもそこにしか合格できないのならと、もう一つがんばるスイッチが入りきらなかったようです。

 

「えっこっ甲陽ですか・・・・・」

 

彼のその頃の偏差値は52程度、とても届きそうにもない学校の名が私の口から出たことを驚き、

 

「ほんとうですか」と聞き直しました。

 

「君は国語が得意だから、算数の今までの下地をちゃんと活かせばこれからぐんと伸びるよ。算数に自信がつけば理科も自然に伸びてくるからね」

 

夏期講習に参加する彼の姿勢が変わりました。自分のことはじぶんで責任をもつ・・・そんな「他人まかせにしない」姿勢が身につきました。自分は合格したい、すると、今自分がやらなきゃいけないことがはっきりと見えてくる、そんな姿勢に。

 

算数の下地が少しずつ表に表れてきました。徐々に成績があがってきました。間髪をいれず、少しの変化も見逃さずにほめられることで自信がついてきました。11月まで週1回のペースで続けた水泳でつけた体力もがんばりを後押ししました。

 

私と二人の難問解説授業にもくらいついてきました。冬を迎える頃には、堂々と甲陽を狙える位置に自分をもってきました。

 

風花がまう厳冬の夙川の土手を甲陽に向かいました。

 

そして、夕闇が迫る頃、教室の電話が「こ゜っごうかくしましたー」と鳴り響きました。

 

合格校 甲陽学院中、明星特進