ぼぉっと、窓の外を観ていたら、真っ黒な鳥がやって来た。
小鳥ではなく、中型。
人で言えば中肉中背。しかしながら筋骨は結構しっかりしてて、かっけー。
ふんっ、ふんっ、と言った感じで窓枠をしばし徘徊し、僕と目が合う。
『「間」恐怖症』な僕はなんか喋らなければ相手に対し礼を失すると思い焦るのだが、
あいにく相手は言葉が通じない。
でもとりあえずなんかせな、配慮の足りない奴だと思われてしまう。
と思って、えっと、、ええっと、、
右手を高く掲げてみた。
すると黒い鳥も右の翼を高く掲げる。
「おおっ」とちょっと感動した僕は、ついで左手を高く掲げてみた。
すると黒い鳥も左の翼を高く掲げる。
「おおっ、おおっ」と僕は勢いづき、心は弾んだ。
と、いつの間にやら窓の外の景色はいつものそれとは違って、なんとも素敵なそれにチェンジ。
ビビッドなグランドキャニオン(緑マシマシ)といった感じで思わず息を飲む。
わあ、わあ、とか思いながら、心弾ませ、私を勢いづかせながら僕は、わあ、わあ。
「一緒に来るかい?」
黒い鳥が唐突に喋った。
なんだしゃべれるんじゃんやんと僕は思った。
「でももう二度と戻れないよ?」
黒い鳥が続けて喋った。
むう。「二度と戻れない」のは少し困る。。
「二度と元に戻らない」事ほど世の中に哀しい事はないと僕は思うのだが、
けれど、「二度と元に戻れない」事はそれよりもさらに哀しいのではアルマイカ。
なぜって、元に戻ろうともがきあがく俺の努力の空転が哀しきをアンプリファイするからだ。
うん、そうに違いない。
おや、でも待てよ、、、。
「元に戻らない」事だって、考えようによってはハナからこちらの働きかけを拒絶しているようなフシがあって、それはそれでその門前払い感が哀しきをアンプリファイするよね。
いや、でも違うか。。
っていうかそもそも門前払い感が僕の哀しきをアンプリファイするのは、そもそも門の前まで行ったという俺の努力が前提になっているのであって、つまりそれはそもそもやっぱり俺の努力の空転が問題になっているのか、そもそも。。
もうめんどい。
心が辛くなってきた。
まあいいや、たまには「二度と元に戻れない」も良いでしょう。
僕は窓枠から身を乗り出した。
、、、、、、ような気がする。
っていうのはこれは今朝見た夢の話で、だのに何故か終わり方がぼんやりしてて、よく思い出せない。
果たして僕は窓の外に出たのだろうか?
そして二度と元に戻れなくなったのだろうか?
よくわからんけれども、何故こんな夢を見たのかは少し心当たりがないでもない。
前日にご機嫌でビートルズの「BLACK BIRD」を口ずさんでたからだ。