「全国1500万人の昆虫すごいぜ!ファンの皆様 香川照之です」から始まった「昆虫すごいぜ!」の夏休み特別スペシャル。何の前触れもなく、突然放送された。実は、今回の放送を全然把握していなく、友人のタレコミにより、ようやく再放送を見た次第である。今は、どのテレビ局もネットで配信しているが、テレビっ子の私は、やはりテレビでの視聴をモットーとしている。

 

今回のテーマは、以前「タガメちゃん、本当に好きなの、タガメちゃん」と熱くタガメへの愛を語っていたタガメ。香川は、小学生の時に、デパートでタガメを母親に買ってもらい、それを飼育していたが、飛ぶというタガメの習性を忘れ、水槽の蓋をせず夕飯を食べそのまま寝たら、翌日には居なくなったという悲しい経験を切なくも熱く披露。彼の母親は、そう、浜木綿子。彼のエピソードで語った「照之、ごはんよ」というセリフや着物を着た浜木綿子に手を引かれ、「タガメを買って」とねだる照之少年の姿。「何でも好きな物買っていいわよ。えっ?タガメなんか欲しいの?変わってるわねぇ、この子は。しょうがないわねぇ。」と言ってタガメを買う浜木綿子の母親の顔がリアルな映像として見えてくるのである。それにしても、おそらく40年ほど前の夏。デパートでタガメを買うとは、東京ってスゲェ場所だなと改めて日本の首都TOKYOに畏敬の念を抱く。

 

全国視聴者の捜査情報により、栃木県の某所へ向かう香川。「私は今日は12才」「12才の力を見せてやる」と意気込む香川のバックに流れるのは、なぜか懐かしのクリキン(クリスタルキング)のヒット曲「大都会」だ。

 

とは言え、やはりEテレであり、香川のインテリジェンスもあり、タガメの説明などかなり分かりやすい構成だ。あぜ道へ繰り出すと、早速、かまきり先生の本能が出て捕獲モードの香川。動く者には何でも反応する。歩けば5分のところを20分かけて水辺へたどり着いた香川。鬼気迫るまなざしでタガメを探す香川。2か所目の水辺に移動した香川は、「これは200%いる」とテンションMAXになる香川・・・するとすぐにタガメを発見!「ほれ!見て!見て!」と興奮してキャメラ(By和田アキ子)へアピールする香川。結局、40年ぶりのタガメとの再会にあまりにも興奮しすぎて捕獲することを忘れ、捕獲し逃すという痛恨のミス。その後、3時間も中腰で捜索する香川。スタッフが見つけたタガメをやっと捕獲。タガメの習性を説明する間のバックミュージックは、XJapan の Forever loveだ。スタッフのセンスも遊び心満載だ。さらなる大物をゲットすべく頑張る捜査一課長。するとカエルを捕食していたタガメを見つけた。とその時だ!画面には、「現行犯逮捕」のテロップが・・・。

 

タイトルの字「昆虫だいすき」という文字も香川自身によるものだが、その一文字、一文字の先端がカブトムシの角のように、先端が二つに分かれている文字なのだ。芸が細かい。

 

30分の番組は、教養とユーモアに溢れている。こんな番組制作のためなら、受信料を2倍払ってもいい。(ウソ) この番組のキモは、誰一人、視聴者を笑わせるために制作していない。香川の昆虫愛を成就させる事だけが目的だ。しかも楽しみながら・・・。その結果、そこらへんのお笑い番組よりかなり笑え、尚且つ、教養も深まる近代稀に見る素晴らしいコンテンツになった。以前、民放のバラエティ番組に出た香川が、「いつかEテレで昆虫番組を作るのが夢」と語ったのを見ていたNHKスタッフが動いて「昆虫すごいぜ!」が誕生したらしい。香川の戯言を真剣に受け止めたNHK職員に心から敬意を払う。