ゴリ(小西貴士) の 森のようちえん日記



森のようちえんの卒園生と 赤岳へ ―



てっぺんから


来た道を ふりかえる



その スケールの おおらかなこと



こんな体験は


毎日せんでも よろしいでしょうが



もし そんな日が いちにちあって


それを 共有する


なかまが いれば



それは 測れないほど おおらかで


図れないほど 豊かなことです



下山後の 露天風呂で


男子3人が


お湯の浮力を 借りて


お互いの身体を 抱き上げては


まるで 今 眼の前に 広がっているかのような勢いで


てっぺんから見た あの景色のことを 話していました



― 雲 すげえ 早かったよな !


― マッハだよ! マッハ!!


― 乗ってみて~ !!!




体験がもたらすものって なんだ ?


日々を生きることの豊かさって なんだ ?




おやすみなさい ―


今夜は 夢の中で


マッハの雲に 存分に 乗ってくださいな



心をこめて ―







ゴリ(小西貴士) の 森のようちえん日記



小僧と お山へ ―



今から 登る峰へ


ヘリが 急ぐ


救助隊が 走る



深呼吸を ひとつだ



誰だって そうなるし


誰だって そうなりたくない



深呼吸を もうひとつ



ドクドク


ドクドク



信じられるもの



ひと手


ひと足









ゴリ(小西貴士) の 森のようちえん日記



小僧と お山へ ―



小僧が 稜線で ぼうっと 眺めているのは


あちら こちらに 張りめぐらされた


これまでの 5年分の 足跡です



初めの よろこびは 点でした


点から点を 歩いていると 線のうれしさが 湧いてきます



そんなふうに 足跡に 包まれて 居るということが


自分を 大切に 大切に してくれるような 気がしてきます



あそこが ああで


ここが こうだったね


というのは もう あまり 言わなくなりました



それは ―


登らなければならない


のではなくて


登っていたら こんなふうになりました


って いうことに


ちょっと 気づき始めたからかもしれません



左手のカールから


雪で冷やされた 風が


やさしく 吹いてきます







 


ゴリ(小西貴士) の 森のようちえん日記



小僧と お山へ ―



ひとつ ひとつの テントに


ひとつ ひとつの 希望やら 不安やらが こめられていて



そんなのを 


ぜんぶ 抱いて眠るから



多くを 話さなくっても


いいのかもしれないな




雪渓から 吹いてくる風が


晩秋を 想わせる 夜です









ゴリ(小西貴士) の 森のようちえん日記



小僧と お山へ ―



崖っぷちから 戻ってきて



ちゃっちゃか 着替えて


運び上げた 炭酸飲料を プシュッとやって


文庫本の中で 世界の海を旅している



時おり 峰々を 仰いで あくびをして


今晩のために シュラフを ひっくり返し


本に飽きたら ロープを練習している



ちょっと気になる 取りつき口の偵察には


面倒だからと言って 付き合わないし


もちろん ビールには 付き合えないし



お山に 行ったら


小僧には 小僧の時間が 流れる



どうやら 覚えちゃったらしい


緊張のあとの


自分を大切にする 仕方を