結婚に関連することばを男女の立場別に分類してみた。
男女どちらからもいえる結婚(所帯をもつ)
「ロシア語」(ラテン文字転写) 「村山七郎訳」 『ごんざ訳』
1「Обручаю」(obruchayu) 「婚約させる」 『にゅぼもたする』
2「брачуся」(brachusya) 「結婚する」 『にゅぼもつ』
3「небрачный」(nebrachnyi) 「結婚しないところの」『にゅぼもたんと』
4「бракъ」(brak') 「結婚、婚礼」 『ごじぇむけ』
村山七郎注 cf. ゴゼムカイ(御前迎) 嫁入りをいう。物類称呼–5
「嫁(よめいり)といふ事を...薩摩にて、御前(ゴゼ)むかひと云」
ゴゼンケ 鹿児島県姶良郡。ゴションケ熊本県葦北郡、
鹿児島県曽於郡松山。日本国語大辞典
5「супругъ пара」(suprug' para) 「夫婦」 『にふき』
村山七郎注 cf. ニービキ 婚礼。南島糸満 TZH.
ニービチ(根引の意という)結婚。南島 分類方言辞典
6「супружество」(supruzhestvo) 「夫婦たること」 『 』
男女どちらからもいえる結婚ということばは、ごんざの語彙にはなかった。
たとえば、1は、「指輪」ということばから派生した動詞だ。こういうことばは日本語にはない。しかたなく、ごんざは、自分が男なので、男性の立場からの『にゅぼもつ』『にゅぼもたする』という訳語をつけた。
4は「婚礼」という意味なので、該当する訳語をつけることができた。
5は、「夫」と「夫婦」のふたつの意味があるので、「夫婦」の方だよ、という意味で「пара」(para)(ペア)とそえがきしてある。4とちがって、「婚礼」という意味ではなく、「夫婦一組」という意味なので、『にふき』というききなれないごんざの訳語が「婚礼」の意味かどうかは疑問だ。ちょっとちがうような気がする。
6は男女両方からみての「結婚」の意味だけど、ごんざは訳語をかけなかった。