二代目指導者の急死により、風雲急を告げる北国内、一体かの地では今何が起きているのでしょうか・・・
さて今回のゴンブロはデロイの戦後遍歴第四弾。
デロイが北朝鮮に渡ってからの形式名の考察です。
1.おさらい(戦前の鮮鉄局機関車命名規定)
(1)蒸気機関車
米国式車輪配置名称の二文字+補助記号の一文字で形式を表現する。
その後は同一形式内連番
車輪配置名称:例 2C1→パシフィック型(パシ)
1D1→ミカド型(ミカ)
補助記号は「数字の数え方の一部のカタカナ」を使用する。
1(イチ) イ
2(ニ) ニ
3(サン) サ
4(シ) シ
5(ゴ) コ(ゴではない、コ)
6(ロク) ロ
7(ナナ) ナ
8(ハチ) ハ
9(ク) ク
10(ヂウ) チ(ジでもヂでもなく チ)
(例外)狭軌機関車には車輪配置名称の代わりに「ナキ」を使う。
(ナキ:ナロー軌道の略です。うーん、さりげなく
英語が入っています・・・)
↑Wikiから、パシコ型蒸気機関車
(2C1のパシフィック型5番目の形式。日本の旅客用蒸気の
動輪径1750mmを上回る動輪径1850mmの巨大蒸気です。
有名な満鉄のパシナよりは一回り小さい。ライトに灯火管制を
しているので戦時中の撮影と思われます。)
この命名方法は満鉄も同じでしたが、鮮鉄、満鉄で採番体系は
独立運用しており、鮮鉄、満鉄双方にミカイが存在するような
状態になっていました。
(2)電気機関車
蒸気機関車と少し異なり
電気機関車の「デ」+ *動軸の数+ *補助記号で形式を表現する
(*動輪の数、補助記号の付け方は蒸気の補助記号とおなじ)
例:デロイ→同軸六輪の一番目の形式
2.北朝鮮での形式名の命名基準は?
(1) 北朝鮮の最近の鉄道写真を見ると
・蒸気機関車
「증기(チュンギ)」(漢字で書くと「蒸気」)の後に連番
・ディーゼル機関車
「내연(ネヨン)」(漢字で書くと「内燃」)の後に連番
となっているようですが、電気機関車は形式毎の固有名称+連番となって
いるパターンが多く、有名な固有名称では
・「붉은기(プルグンキ)」
(これは最初の二文字は漢字で書けない固有語の「赤い」
なので旗の意味の「기」と一緒で「赤旗」の意味)
・「만경대(マンギョンデ)」
(万景台。平壌市郊外の金日成主席の故郷です。
この近郊の山があの船の名前にもなった「万景峰
(マンギョンボン)」です)
があります。
(2) ではデロイはどうなの?
この1988年の北朝鮮発行の鉄道シリーズ記念切手に
取り上げられたデロイ(デロニ?)戦後の姿には説明として
史的機関車「≪전기하≫3호」とあります。
「전기(チョンギ)」を漢字表記すると「電気」「電機」と
二通り解釈可能ですが、おそらく(1)からの類推で「電気」と
判断。
3호は英文でも判る通り3号と判るのですが、三文字目の「하」が
判りません。発音は「ハ」で、漢字で置き換えると「下」「河」
「夏」が候補ですが、どれもしっくりきません。
・・・とここで、発想を転換して、韓国語(朝鮮語)の数詞の内、
固有語(日本語でいう、一つ、二つの数え方の方)を並べて
いくと、
1(하나) ハナ
2(둘/두) トゥルもしくはトゥ
3(셋/세) セー
4(넷/네) ネー
となり、「하」は「하나」の一文字目から採ったという推測に
立つと意味が通じそうです。(旧鮮鉄局の名称規定の「補助記号」
と同じ発想)
そうか!デロイ(デロニ)の北朝鮮名は「전기하」で、読みは
「チョンギハ」意味は「電気1」だ!・・・と、ここまでは
ゴンブロ開始一か月くらいで思い当たったのですが、あまりにも
解読ケースとして少なすぎ、いまひとつ確証持てず。
そんな中、最近ピョンヤンの鉄道省革命事蹟館で撮影したと
いう、鉱山用凸型電気機関車の画像をある方から頂戴しました。
見づらいですが、車番にご注目ください。
赤いプレートの車番は「전기너201」とあり、「너」は「넷」の
変化形ですので、この機関車の形式を「電気4」車番201号と
すると、意味はやはり通りそうですので、やはり初期の
北朝鮮電気機関車の名称規則は「電気」+「独自の補助記号」
らしいことが判りました!
そうなるとデロイが「電気1」で上記の凸型電機が
「電気4」なら、デロニが「電気2」でデロイ30番台(三菱
製)が「電気3」なのか、と妄想は膨らみますが、本当の
ところは判らないですね。
ちなみに上記の凸型機関車は、戦前東芝、三菱重工、
日立製作所などが 旧満州国の撫順炭田向け専用線などに
納入した電機に酷似しています。
この車両がいま平壌にあるのも何か言われありそう・・・
↑撫順炭坑の専用線用凸型電機です。
日本製!上記の写真とじっくり比べてみてください。
今回も長文になってしまいました。
いつも本当にご愛読ありがとうございます。
感謝の気持ちを込めて、1943年日立製作所笠戸工場で撮影されたと思われる「デロニ1」の写真を添付します。(デロイではなく、デロニです!写真不鮮明ながら、何となく角ばった印象があるように思われます)
それではまた!