クラシックを広める事 | Shuhei Itoga no BLOG

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オペラ歌手、糸賀修平のブログ。

ふと思った事です。。

昨日、家族でご飯を食べに行った時の事でした。とある、なんてことのない普通のレストランに入ったのですが、そこに何とピアノが置いてありました。結構広いし、ランチタイムコンサートができたら面白いなー、、なんて考えながら食事をしていると、いきなり、ピアノ演奏が始まりました。おそらく音楽大学のピアノ科の学生さんが「BGM」的な感じで演奏のアルバイトをしてるんだと思います。お店側の要望もおそらく、演奏を「主体」としているわけではなく、気持ちのいい「食事」をしてもらうための演奏を要求してるんだと思います。
しかし、、、ピアノの調律がひどすぎる。。。我慢できるレベルではなかった。確かにレストランに置いてあるピアノって、あんまりメンテナンスをしてないし、管理も雑だったりする事が多いから(全てのお店がそうじゃないですが)から、すぐに狂う、ってのはわかります。もう、ご飯が喉を通らない程に音程があってないピアノでした。音が鳴るたびに不快感。お客様の中に誕生日の方がいて、誕生日ソングを演奏してたんですが、、、不協和音の連続で祝福ムードにもなりませんでした。。。


演奏者、、アルバイトかもしれないけど、こんなピアノで演奏する事を受け入れてはいけないと思う。少なくとも調律を頼むのは、当たり前のことでしょう。(一般の人にはわからないかもしれない)という感覚を持った段階で、演奏者としての何かを失うと思います。確かにピアノの管理に関して、演奏者に非はないかもしれないけど、ひどいピアノで弾くことが、自分の演奏にマイナスになる事をもっと考えたほうがいいと思います。そりゃああなたにピアノの音程を超えて何かを表現する自信があるなら話は別ですが、明らかにBGMで演奏して、食事の邪魔をしない、心地の良い空間を提供したいと思うのなら、もっと真剣にオーナーに交渉するべきだと思います。
ドビュッシーの曲を演奏されてたんですが、作曲者もこんな形で演奏される事を望んでないし、想像もつかないと思います。

ある程度の主張をする事、それは専門家の義務だと思います。おかしい事を「おかしい!!」っていう事がおかしくなるそんな世の中かもしれないけど、そこと向き合う事が一番大事なんじゃないかな、と思います。


でも一番悲しい事は、オーナー、従業員を含め、他のお客様はそんな事「気にもしていなかった」という事。その程度しか、普通の人に「クラシック」が認識されてない事。

帰り際、お会計の時、従業員のネームプレートに「いつでもお客様に最高のおもてなしをご提供します」と書かれていたので、「ピアノの調律してますか?」と聞いてみました。「え?狂ってましたか??」との返答。少し悲しくなりましたが、できる限り調律してあげてください、とお願いしました。もちろんそれはお客様のためでもあるし、演奏者やピアノのためでもあります。向こうからしたらクレーマーに感じたかもしれませんし、オーナーからしてみればピアノの調律って、ただの「出費」かもしれないですけど、、、。(苦笑)

演奏するってもっと大切なものにしなきゃいかんと思いました。BGM的な感じで演奏されるんではなく、もっと興味を持ってもらわなきゃいかんと思いました。僕ら、クラシックの演奏家は、もっとパワー溢れる演奏をしていかなきゃいけないですね。