絆~十一話~
お風呂から出て、部屋に戻る。
部屋をこっそり覗くと、陵がスマホを手にいじってた。
『りょ・・・』
あ、そっか・・・。
声、出ないんだ。
凄い悲しくなった。
自分の声を忘れたわけじゃない。
でも、どうにかすると声の出し方も忘れてしまいそうで。
怖い。
陵は、あたしの声を覚えててくれるかな・・・?
「あ、未来さん。
大丈夫でしたか?」
何が??
陵はスマホを置いて、あたしの傍に来る。
・・・今更だけど、大きくなったなぁ。
近づくと、あたしよりも身長が高くなったのがよく分かる。
10センチは違う?
じーっと見てると、陵は顔を逸らした。
「あんまり見ないでください」
ドキッとする心臓。
あたし・・・何かした?
「じっと見られると、その・・・っ
僕も男なので・・・」
ぼっと真っ赤になる頬。
陵の口からそんな言葉が出るとは思わなかったから、
びっくりした。
「僕、お風呂入ってきますね!」
先ほどのあたしみたいに、凄いスピードで入っていった。
・・・体育祭、一等賞とれるんじゃない??
10分ほどで出てきた陵。
紙に、
【早かったね】
て書くと、陵はにっこり笑った。
「未来さんとなるべく長い時間、傍にいたいですから」
サラリと凄いこと言うとこ、変わってないね・・・。
普段言えないこと、紙でなら伝えられるかも。
サラサラとペンを走らせて、陵の顔の前に突きつける。
【あたしも、陵とずっと一緒にいたいのは同じだからね】
ふふっと笑う陵。
「僕、ずっと、とは言ってないんですけどね」
なっ!
意地悪いうならいいもん!!
ぷいっと横向いてると、陵があたしの髪の毛を撫でた。
「綺麗な髪ですよねー」
・・・言いながら自分の方へと抱きしめるのヤメテクダサイ。
「あ、でもシャンプー同じの使ってますから、
香りは同じってことですよね?」
そーだね。
でもでもでもさ。
それとこれとは、どういう関係が・・・?
「さっき結界張った時、
全ての術も霊も人も入ってこない結界にしたんですよね」
言ってたよーな
そうでないよーな。
「未来さんと一緒に寝ていいですか?」
はぁ!?/////
「この3ヶ月間、未来さんに振られる悪夢しか見てないんですよ・・・
せめて今日こそは、いい夢を見せてください・・・」
・・・元はといえば、あたしのせい、だよね。
しかも、ちょっと陵やつれたっていうか、そんな感じに見えるし。
コクンと頷くと。
陵は微笑んで。
パチンと電気を消した。
真っ暗で何も見えない・・・。
ぎゅっと陵にしがみつくと、ふっと笑った気配がした。
「・・・暗いの苦手なところ、変わってませんね」
だって・・・。
霊とか見え出して急に怖くなっちゃってさ。
ガラじゃないけど!
だんだん暗闇に目が慣れてきて、横になる。
すると陵も、毛布をかぶってあたしの隣に横になる。
・・・?
じっと見てる、よね?
負けじとじーっと見ると。
暗闇の中で、しかも傍から陵が。
「・・・言いましたよね?
あんまり見ると、僕も男だからって」
離れようとしたけど。
陵が離してくれなくて。
「僕が眠れてないからって理由で一緒に寝ていいのを許すなんて・・・
単純すぎですよ、未来さん」
真っ暗な中、
3ヶ月ぶりに獲物という名のあたしを見つけたオオカミさんに、
満足するまで相手をさせられました・・・。
~続く~
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・・・・。
もはや「絆」の影すらない・・・。
ということには触れないで置いてください(涙