2. この恋、きみ色 | 君がために奏でる詩

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鍛練というイジメが終わって家に帰ると、


神山夫妻とちょうど玄関で鉢合わせになった。



「あー、碧君! 今帰り? お帰りー」



綾のお母さんは、父さんと母さんと同級生だと言うのに、


昔から変わらず綺麗で、そして誰よりも優しくしてくれる。


その御夫君の陵さんは・・・、年々、俺に向けてくる笑顔が怖くなっていく。



「お帰りなさいです、碧羽君。ちょうど良かったですー」


「な、なんでしょうか・・・」



さっきまで、ご機嫌斜めな樹さんご指名で体術の相手をさせられ、


精神的にも体力的にもボロボロなところに・・・綾のお父さんまで・・・。


嫌な予感がして逃げ出したいのに、


陵さんの笑顔の威圧感が怖くて足が動かない・・・。



「最低でも、樹の術に勝てて、双の体術に勝てるような人でないと、


          認めませんよ?」


「・・・・・勝てたら、認めてくれるんですか?」



普段、運動をしたがらない樹さんにすら勝てないのに、


運動神経抜群の双さんに体術に勝てる人なんて・・・、


この世にいるのか謎なんですが。


でも、それくらいの根性を見せろ、と言うのなら、俺だって・・・!



果敢に挑んでみるけど、陵さんは笑顔を崩すことなく


ニコニコと笑いながら、釘をさしてくる。



「勝ってから言ってくださいね? 綾に手を出したら・・・」


「だ、出したら・・・・何デスカ」


「生き地獄を「さぁ帰ろうか! うん、帰ろうねっ! 碧君、バイバイ!」



何だか怖い単語を言おうとした陵さんの口を手で塞ぎながら、


未来さんが慌てた様子で引き摺って帰っていった・・・。



二人の姿が見えなくなるまで玄関で固まっていると、


俺達の様子を見ていたらしい母さんが、扇子で俺の頭を叩いてきた。



「こらっ。そんな所で固まってないで、さっさと着替えていらっしゃい」


「・・・・・はい」


「それで綾を家まで送ってあげなさいな」


「・・・・綾、いるの?? 今、陵さんと未来さん、帰ったのに?」



どうして一緒に帰らなかったんだろう??


未来さんはともかく、陵さんなら絶対に


「女の子が1人で夜道を歩くなんてとんでもないです」


とか言いながら、連れて帰りそうなのに・・・。



靴を脱ぎながら母さんに聞くと、頭上から溜め息が聞こえてきた。



「綾、泣きながら、『家出してきました』って言って来たのよ」


「は?」


「あそこも綾に関しては過保護だから・・・。そりゃ綾もキレるわ」


「はい?」


「とにかく着替えてらっしゃい。綾は稽古場にいるから・・・あ、こら!」



泣きながら? 家出?? 綾がキレる??


よく分からないけど、綾のことが心配で、


母さんの言うことを聞かずに、制服姿のまま稽古場に直行した。




母さんが言っていた稽古場は、いつもは母さんや未来さん、


それに綾が舞の練習をしている部屋。


そこのドアに手をかけた時、部屋の中から歌声が聞こえてきた。


綾の・・・いつもより少し沈んだ歌声。



「君が愛せし綾藺笠 落ちにけり落ちにけり    


「・・・・よりによって、その今様?」



引き戸を開けて中を見ると、綾がビックリした顔でこっちを見た。


そして何故か頬を膨らませながら、プイッとそっぽを向いて・・・。


なんで俺にまで怒ってるの?



「あたし、帰らないもーん」


「もーん、って・・・。なんで家出?」


「だってお父さんもお兄ちゃん達も酷いんだもん!」



綾に対してヒドイことをする人達でもないけど・・・?


不思議に思いながらも、綾の前に座り、話を聞く体勢をとると、


綾も同じように座りながら、体をズイッと前に出してきた。



「碧はあたしにとって一番悪い虫だから近づくな、って!」


「虫扱いデスカ・・・」


「いつ狼になるか分からないから、信用するな、とか!」


「今度は狼デスカ・・・」


「碧はモテるから、あたしが傍にいて、碧の恋路を邪魔しちゃダメだとか」



・・・・・あたし、邪魔?


そんな泣きそうな顔で、そんなことを言われたら・・・・!



「・・・・・あお?」



気付いたら、華奢なその身体を抱きしめていた。


戸惑うような声で名前を呼ばれるけど・・・、今さら離したくなくて、


少しだけ力を込めて、さらに綾の身体を抱き寄せた。



「邪魔じゃないから・・・、ずっと傍にいて・・・?」


「・・・・・いいの? 本当の本当に、、、いいの?」


「うん。綾と一緒にいたい」



今は、、、綾のお兄さんたちに勝てないから。


だから幼馴染として見ていてくれても構わないけど・・・。


だけど、いつか幼馴染という枠から抜けだして、


1人の男として綾に見てもらいたい。



綾の肩に手を置いて、抱きしめていた体を離すと、


綾は少しだけ頬を赤くしながらも、


何が何だか分かってない顔をしていて。


だけど俺が笑ってみせると、綾も釣られたように微笑んでくれた。



「じゃあ、傍にいる」


「うん。俺、双さんと樹さんに勝てるように、鍛練を頑張るから!」


「?? お兄ちゃんズに勝てばいいの?」


「あー・・・うん。二人に勝たないと、認めてもらえないから」


「認めて・・・? よく分からないけど、勝てばいいのね」


「え? うん・・・」



そっか。じゃあ、家に帰るね。


そうあっさりと言って、綾は俺から離れた。


部屋の隅に置いてあった荷物を片手で持ち、もう片方の手で


綾の扇子を開けたり閉めたりして、手になじませている。



いやいや、夜道を1人で帰すわけにはいかないし!


綾は惚れた良く目を差し引いても可愛いから、


変質者に狙われたり、ナンパでもされたら・・・・っ!!



慌てて追いかけて綾の隣に並んで歩くと、


綾は俺を見て、「あっ」と声を洩らした。



「なに?」


「擦り傷とか打撲の痕が多いけど、今日、相手は誰だったの?」


「・・・・何だかご機嫌斜めな樹さん」


「もぉ樹お兄ちゃん! やり過ぎっ」



綾は憤慨した様子で、扇子をパラリと開いた。


そして、俺の顔や首元に扇子を近づけて、優しく仰ぐ。



「痛いの痛いの、とんでけー    ・・・・」



ふわりと扇子から出てきた淡い光。


母さんや未来さんは淡いピンク色だけど、綾が出す光は無色。


何色にも染まってない、透明な光。



       だったはずなのに、今は・・・・



「あれ? 青緑?」


「あれ?? 本当だ。いつも透明なのに・・・なんでだろ?」



傷なんか癒してくれなさそうな色なのに・・・


光が体に溶け込むと、痛みも、もちろん傷跡も綺麗に無くなる。



「何だか、碧の色だったね?」


「ん? 青緑が俺の色??」



俺、そんなイメージ?? 寒冷色??


首を傾げると、綾はクスクスと笑いながら答えてくれた。



「だって『碧』って無色の奥から浮き出すあおみどり色、ってことでしょ?


だから、碧の色みたいだね」



無色が碧色に染まったね。


そう無邪気に言うきみの一言が、嬉しくて、幸せで。


俺の心を何度も奪っていく。



この恋がきみ色に染まるように・・・、


俺色に染まってくれるように願いたい。



「綾、・・・・・・碧色って好き?」


「ん? 好きだよ」


「うん・・・。ありがと! 勇気でた」


「?? どういたしまして?」




綾を神山家に送り届けた後、


勝てないだろうけど、双さんと樹さんに勝負を挑んでみよう!




だけど、その時はすっかり忘れていた。


父さんと母さんが、


「綾は陵と未来の良い所取りだから、神山家で一番強いと思う」


そう言っていたのを          







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ちなみに、お題配布元「確かに恋だった」です(´▽`)


INDEX③に載せて行きますw


花 初々しい恋10題 』です(´∀`)b




書くだけ書いて、更新するのを忘れて寝落ちしてました・・・。

すみません・・・orz