比翼の鳥 連理の枝 ( 13 ) | 君がために奏でる詩

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お互いの無事を確かめるように抱きしめあっていると、


顔に影が出来た。


不思議に思って顔を上げると、


さくらさんと龍羽君が僕達を見下ろすように立っている。


だけどその表情は、どこか複雑そうで…。



「……助けてくれて、おおきに」


「すまなかった…。こんな大事になるとは思っていなくて…」



未来さんもどう対応して良いのか分からないようで、


考えこむような表情をした後、溜め息をついた。



「……とりあえず、これ、ありがとね」


「ええよ。…それに元々あんたの物やし。あげるわ」



もともと未来さんの物?


未来さんが持っている扇子を見ると、


古いながらも綺麗に保存してあったのが伺える。



未来さんは扇子を開いたり閉じたりしながら、


僕から体を離し、ゆっくりと立ちあがって二人と向き合った。



「これ『前世で』あたしが持っていた物だよね…? なんで…」


「前世で…? という事は天女の時に?」



僕も驚いて二人を見ると、さくらさんと龍羽君は苦笑交じりで教えてくれた。



「うちらは天女の子孫やからな。


……やけど、血が薄まり過ぎて天女の力がもぉ使えんのや」


「だから未来が必要なんだ。さくらを助けてくれた恩人だし、


無理強いはしたくない…。未来、俺の元へ来てくれないか…?」



そんなこと…。


それは桜咲家の問題であって、未来さんには関係ない。


それに天女の魂を持っていれば、未来さんで無くても良いんですよね?



でも…、最終的に選ぶのは未来さんだから…。



無言で二人と対峙している未来さんを見ながら、僕も立ちあがった。


すると未来さんの手が僕の手を掴む。


驚いて、手を見た後に未来さんの顔を見ると、


……何故か真っ赤になっていた。



「……未来さん?」


「悪いけど…、『天女』だったあたしを必要としてくれる人より、


『未来』としてのあたしを必要してくれる人の…」



握られた手が熱く感じる。


未来さんが視線だけで僕を見ながら、「うぅぅ」と唸りながら


それでも二人に対して、ハッキリと言ってくれた。


        期待で、僕の胸までも高鳴る。



「…陵のそばに、いたいんだ」



やっぱり未来さんはズルイ…。


どれだけ僕を好きにさせれば気が済むんですか…?



真っ赤になりながらも未来さんを見ていると、


未来さんもこの空気に耐えられなかったのか、、、、


いきなり僕の手を引っ張って歩き出した。



「そっそんなわけだから、あたしの事は諦めてねっ! じゃっ!」


「…なっ! 諦めんからなっ!! ちょい待ちぃ!!」


「あ゛ぁぁぁ、しつこいなっ!! 嫌だって言ってるじゃん!」



さくらさんと龍羽君が僕らを追ってこようする。


それを少しだけズルイ方法で足止めした。



「木の神句句廼馳、道をふさぐ盾となれ」



緋扇が輝き、木や草が揺れ始めた。


そしてすぐに僕達と桜咲家の二人の間に壁を作ってくれる。


それを見た未来さんは、軽く目を見張ったけれど、


いたずらっ子を咎めもせずに走る速度を更に早めた。



        そのまま僕達は駅に向かって走った。






    よく見たら、あたし達ボロボロじゃんね?」



駅のコインロッカーに預けたままの荷物を肩に担ぎながら、


僕も言われて自分の格好を見た。


服もだけど、龍神の風圧で出来た切り傷が所々ある。


それに未来さんの白い肌に所々切り傷が出来ている…。



「うぅぅ、すいません…。未来さんに傷が…」


「ん? 別に痛くないから平気だよ。それに陵の方が痛々しいし…。


旅館に着いたら手当してあげるよ」


「そうですね! 僕が責任もって未来さんの手当てをします!」


「いや、逆だから…。あたしが陵の手当てするんだよ…?」


「女の子なのに傷が残ったら大変です」


「……聞け」



父さんと母さんが予約してくれた旅館に着くと、


優しそうな年配の仲居さんが部屋まで案内をしてくれた。


そしてありがたいことに救急箱も貸してくれて、


「ごゆっくり」の言葉で締めくくり、出て行った。



………まぁ、予想はしていたものの、


やっぱり未来さんと同室なんですね。


僕の理性、保てますかね…。



荷物を部屋の端に置きつつ、そのまま部屋の中を見て回る。


襖を開けて隣の部屋を見ると、すでに布団がひいてあって。。。。


これは未来さんに見せない方がいいかもしれない…。



静かに襖を閉めつつ、座卓の前を陣取っている未来さんを見ると、


いつもと変わらない様子のまま、急須にポットのお湯を入れていた。



……意識されても困りますけど、


ここまで平然にされるのも何だか少しへこみますね。



「……未来さん」


「なっなに…っ、あつっ!?」



声をかけた瞬間、未来さんの手元から急須が零れ落ちた。



その中には熱湯が入っているのに…っ!



とっさに体を後ろにひいたけど、


それでもお湯がかかったのが見えた。



「未来さんっ! なにやって…っ!」


「だ、だって陵がいきなり話かけてくるか…ぎゃあっ!?」


「水ですぐに冷やさないと!」



すぐに抱き上げて、そのまま風呂場に連れて行く。


その間、当然未来さんは真っ赤な顔で抵抗したけど、


これ以上、未来さんの肌に傷が出来るなんて我慢できない。



浴室の床に下ろすと、すぐに冷水のままシャワーを


服の上から未来さんにかける。


お腹付近と、あとは太ももに熱湯がかかりましたよね?



「ぎゃぁぁぁああぁぁ、冷たいし傷にしみるよっ!!」


「我慢してください。火傷のあとが残ったらどうするんですか」


「つーか服のおかげで肌にはかからなかったから!」


「本当ですか?」


「本当だって!!」



未来さんは怒った様子で、シャワーの蛇口を閉めようとした。


本当に肌にかかっていないのなら良いけど、


もし服に染み込んだ熱湯が肌に触れていたら…?


こんな短時間の冷却では痕が残ってしまうのに。



「んもぉ、びしょびしょじゃん。なにすんの」



出て行こうとする未来さんの腕を掴むと、


そのまま浴室の壁に押しつけた。


そして未来さんの服の裾を掴むと、


固まっていた未来さんから鉄拳が飛んできた。



「なになになにっ!? なにしてんのっ!?」



未来さんの拳を避けて、そのまま細い手首を握りしめた。


壁に縫いつけるように押し当てつつ、


体重を少しかけるように体を密着させ、未来さんの動きを封じる。



「火傷のあとが無いか確認するだけですよ」


「………それで何でこんな格好?」


「未来さんが抵抗するからですよ」


「するでしょっ! いきなり服捲られそうになったら!!」



別に今はやましい気持ちでしているわけでは…。


そう言うと、未来さんは顔をさらに赤く染めて「バカッ」と言ってきた。



「お腹は、、、まぁいいとしても、太ももどうするつもりだったのよ!」


「?? 見てはダメですか?」


「ダメに決まってるでしょっ!!!」


「子供の頃、一緒にお風呂にも入っていたし、


未来さんの身体は何度も見てますよ?」



未来さんの服の裾を掴み、水で貼りついた服をゆっくりと捲ると


僕の目に飛び込んできたのは白い肌。


お湯がかかった箇所は赤くなっていないし、水ぶくれが出来る様子もない。



「……良かったです。火傷してませんね」


「だからそう言ったじゃん! もぉ離してっ!!」


「まだダメでーす。あとは…」



太ももを確認すれば…。


そう思ったけれど、そういえば火傷を確認するには未来さんのズボンを…。


僕がシャワーで思いっきり濡らしましたしね…。


この場合、、、、、



顔を上げて未来さんの顔を見ると、


真っ赤な顔の上、涙目で僕を睨んでいる。。。。



「…………妙齢の女性のズボンを脱がすのは、やっぱり」


「ダメでしょ…」


「純粋に火傷の心配をしていても…?」


「ダメ」


「ですよね…」



未来さんから身体を離すと、ものすごい勢いで距離を取られる。


四隅の角でぷるぷる震えながら僕を睨んでいるけれど、、、、


その様子は可愛いだけです…。



「自分で確認するから、りょー、出てって……」


「わかりました…」



素直に未来さんの言う事を聞きながら浴室に出て、


手の届く場所にバスタオルを置いてあげた。



本当は着替えも持って来てあげたいけれど、


勝手に鞄の中を漁ると、これまた未来さんが怒りそうだし…。


鞄ごと脱衣場に置いておけば良いですかね?



未来さんの旅行鞄を脱衣場に運ぶと、


擦りガラスの向こうからシルエットが見える。


     服の下から現われた白い肌と華奢なウエストが蘇る。



うぅぅぅ、未来さん、ごめんなさい。


あの時は本当にやましい気持ちは無かったんです…。



今更ながら恥ずかしくなって、急いで鞄だけを置いて部屋へと戻った。


そして何も考えないように、…考えられないように、


未来さんが零した急須や、濡れたままの畳を必死に掃除していた。



すると、すぐに脱衣場の方から音がし出した。


顔を向けると、サッパリとした顔の未来さんが出てきた。


………思いっきり部屋着のパーカーと短パンのまま。



ああああ。どこまで無防備なんですかー!



「あ、掃除してくれたんだ。サンキュー」


「……いえ。未来さん、春とは言え肌寒いですし、


その格好では風邪ひきますよ…?」


「?? 大丈夫だよ?」


「未来さんは僕をどうしたいんでしょうね…」


「ん? あ、それより手当っ!! 服脱げっ!!」


「……」



……もぉ、なるようにしかなりませんよね。


11年間耐え忍んできた我慢強さは、この場合、どちらに働くのか…。



言われた通り、ボロボロな状態の服を上だけ脱ぎ、


救急箱を握りしめている未来さんの前に座った。






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キャッベツ♪ キャッベツ♪ にーく♪ にーく♪



……次もアメンバー記事にはなりません、たぶん(ノ∀`)