比翼の鳥 連理の枝 ( 8 ) | 君がために奏でる詩

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重なった唇はすぐに離れたけど、


熱をもった陵の吐息が、あたしの唇を撫でていく。



ギュッとつぶっていた瞳を開けると、


目の前に広がっているのは陵の顔。


ボーと焦点のあっていない瞳から伺えるのは、


夢か現か分かっていない様子…。



「あー、なんだ。未来よー」


「……た、助けてクダサイ」



今まで動かなかった父親の気配が動いた気がして


ちょっと期待しながら助けを求めると、、、、


気配は無情にも遠ざかっていく。。。



「11年分だしな? しかも今はお堅いリミッターも外れているだろうし」



頑張れよー、とか言われて、襖が閉まる音がした。



がっ頑張れって何をよっ!!


お堅いリミッターって、この場合は理性のこと言ってる!?


しかも11年分っ!!?



…………。



この場合の選択肢は…。


①陵を殴って逃げる


②陵の気が済むまで相手をする


③助けを呼ぶ。……お父さんもお母さんも来ないと思うけど。



うん、これはもぉ①だ! ①しかないっ。


ごめん、陵っ!!


心の中で謝りつつ、自由になった手を拳にして振り上げた。



      未来さん、やっと捕まえた…」



振り上げた拳を手首ごと掴まれ、そのまま布団に押し付けられた。


汗で濡れた陵の髪の毛から、滴があたしの顔に落ちる。


熱のこもった瞳は、熱のせい…? それとも…。



「……りょ、、、、ん、、、っ」



再び重ねられた唇は、探し求めていたあたしを奪うかのように


どんどんと強く押し当てられる。


隙間すら作らないように覆われて、唇が濡らされていく。



唇の柔らかさと、熱さと、それに舐めていく舌の感触と、、、


恥ずかしくて、でも少し気持ちよくて、、、でもやっぱり恥ずかしくて、


思わずつぶっていた瞳を、更にギュッと何も見えないくらいに固く閉じた。


……強く閉じすぎたのか、目尻には涙が溜まっていたけれど。



それに気づいたのか、、、、


陵はあたしの唇を解放して、今度は目尻の涙を吸いとるかのように


目尻、それに鼻の上や頬、それに首に唇を落としてきた。



「未来さん…。僕を拒まないでください…」


「~っ、ど、どんな夢見てんのよっ! 夢だっ! それはゆーめーっ!」



っていうか熱が更に上がるだろーっっ!!


今は逆効果っ! 脳みそまで沸騰してるんじゃないの!!



「……恋焦がれ過ぎて、、、焼けるように熱いんです。


未来さんに触れれば触れる程、気が狂いそうなくらいに…


「ど、同調中で本当に焼けてるんだと、お、思うよ…?」


「未来さん、助けてください…」


「この場合、助けてほしいのはあたしの方…ふっ…んっ」



夢は願望の表れだ、って言うけど…。


意識がある時でも本当はこんな事したい、って思ってるの?



何もかも奪い取るように重ねられた唇。


でも今まではずっと表面だけだったのに…。


薄く開いた唇の隙間を見つけたのか、更に奥に入ってこようとした。



さすがにそれは無理          っ!!



陵が一瞬離れた隙に、思いっきり頭を突き出して頭突き!


……あたしも痛かったけど、やっぱり陵も痛かったのか、、、


あたしの手首を拘束していた手と、身体がようやく離れた。



ようやく布団の上に寝るように倒れて、


あたしは急いで陵の上に掛け布団をかけ直して、


再び捕まらないように急いで距離を取った。



あ、危なかった…。


ぬるくなった水桶の水を取り替えにいく為だから!


そんな言い訳を心の中でしながら、あたしは部屋からも逃走。



すると廊下に出ただけで微かに匂ってくる甘いご飯の香り。


お母さん、何作ってんの??



水桶を持ったまま台所に行くと、


お父さんとお母さんが和気あいあいとしながら夕飯を作っていた。


………赤飯を。



「おー、未来。なんだ、意外と早かったな。


陵も11年分だしなー、急いちゃったのか?」


「は?」


「あらあら。女の子には優しくしなさい、って注意しなくては」


「……な、なんの話…?」


「「初体験の話」」


「……」



もぉぉぉぉぉぉ、この両親いやだぁ         っ!!



水桶を乱暴にお父さんの目の前に置いて、ギロリと睨んだ。


だけどニヤニヤ顔で見られると、逆にこっちが恥ずかしくて…。


思わず視線を外すと、「照れるな、照れるな」と言われた。



「てっ、照れてないしっ! っていうか、お父さんが看病してやってよ!」


「あぁ? 陵も俺よりも愛する未来に看病してもらった方が喜ぶだろうに」


「お母さん、看病代わってよー! あたしご飯作るし!」


「未来ちゃん、ファイトですっ」



………ですよねー。


この二人に頼んだあたしが馬鹿だったよ。。。



水桶を再び持ち上げて、ぬるくなった水をシンクの上に流した。


蛇口をひねって新しい水を入れつつ


冷凍庫から氷を取りし出して大量に水桶にいれる。



とりあえず陵の身体を冷やしてあげなきゃ。


さっきよりも重たくなった水桶を持ち上げ、


あたしはまた陵の部屋へと向かった。











      いつものように、白鳥の姿で人間界に降り立った。



余呉湖があたしのお気に入りの水浴びの場所。


綺麗な湖の上から、辺りを見渡した。



人間に見つかると、天帝にものすごく怒られるのが一番の理由。


それに友達からも口うるさいくらいに注意されているし。



人間界は今、悪天候の為に飢饉に陥っているから。


白鳥だとしても捕まれば食べられてしまう、らしい…。



それに天女の姿を見られたら、、、、。


人間ならば弱いからまだ良いけれど、


妖に見つかれば、これまた喰われてしまう、らしい…。



今までそんな危ない目にはあった事はないけれど。


それでも一応は周りを確認してから、湖に降り立った。



そして足がつく水深まで泳ぐと、そこで本来の姿に戻った。


身に着けていた羽衣を、近くの木の枝にかけ、


あたしは久しぶりに思いっきり湖の中で泳いでいた。



      人間の男に、羽衣を隠されていたなんて思いもせずに。










「……んあっ。。。あー、今度は前世の夢かー…」



いきなり首がガクッと落ちて、驚いて意識が戻った。


いつの間にあたしも眠ってしまったんだろう。



寝ぼけながら頭を掻き、居眠りする前のことを思い出す。



        あ、陵っ!」



急いで壁際から、陵が眠る布団の元へ駆け寄る。


陵の息使いは少し落ち着いてきていて、いつもの寝顔に戻ってきてる。


………良かった。



額にあったタオルを取ると、すでに温くなっていた。


だからそれを水桶の中の冷水で洗い、固く絞ってまた額に乗せた。


水の冷たさにビックリしたのかな?


瞼がふるりと震えた。



         未来、さん?」


「大丈夫? 咽喉が渇いたなら、水差しあるよ?」


「あー…そう言われれば、咽喉が渇きました…」



水分も取らせないとね。


汗でかなりの水分が外に出たはずだし。


本当はご飯も食べさせて、消耗した体力も回復させたいけど。


だけど、そこまでの元気はまだ無いよね…?



枕元に置いたペットボトルを手に取って陵に渡そうとしたけど、


じーっと見られている視線を感じて。。。


しかもなんか子犬みたいな瞳で。。。。



「な、なに……?」


「身体を動かすのが辛くて…。の、飲ませてください…」


「………そ、それは、どんな方法を言っていたりする…?」


「多分、未来さんが思っている方法です。ダメですか…?」



だーかーらっ、子犬みたいな瞳で見るなーっ。


今度は熱のせいで幼児退行してる?


それともまた寝ぼけてたりするっ!?



……うぅぅぅ。そんな瞳で見ないでよ。



これは看病。うん、看病だし。やましい事ではなくて。


そう、動けない兄の看病ついでに、水を飲ませてあげるだけ!



ペットボトルのキャップを回して外すと、


一気に口の中に流した込んだ。



「………え…未来、さん…? なにを…。…っ!?」



陵の戸惑いの声に気づかずに、あたしは陵の両頬を掌で包んで、


そのまま水を含んだままの口を近づけた。



噎せないように少しずつ水を流し込むと咽喉が鳴る音がした。



「…ぷはっ、こ、今回だけだからねっ!」



水を流し込み終わると、水で濡れた口を袖で拭いながら


陵から身体を離した。


ただ自分のした事が恥ずかしくて、陵の顔は直視できなくて…。


すぐに顔を背けたけど、陵からは何の反応もなくて、、、、。



「……陵?」


「……っ、あ、えっと、、、身体を起こす手伝いをしてもらって


あとはストローでも付けてくれれば良かったんですけど…」


「んなっ!?」


「……いつもの水よりも美味しく感じました」


「~っ、そんな感想はいらないからっ! もうひと眠りしなっ!」



同調もだいたい終わったんだろうし。


あとは眠れば、看病も必要ないよね。



布団をかけ直してあげて、側から離れようとしたけど、


まだ熱を持っている手で手首を素早く取られた。



「……身体を動かすのが辛かったんじゃないの?」


「どこに行くんですか…?」


「?? 自分の部屋に帰って、あたしも寝るよ」


「傍に、いてください」



だからっっ、その子犬のような瞳はやめてっ!


しかも今まさらに捨てられちゃいます、みたいな!


うー、あー、もぉっっ!



「……いいよ。いいけど、陵、回復したらぶん殴るからね」


「えっ、な、何でですかっ」


「自分の胸に聞いてみなっ! このムッツリめっ!!」


「………」



陵が身体をずらして布団の端に寄ってくれたから、


あたしも添い寝するように布団の端に寝転んだ。


ただし掛け布団の上に、だけど。。。。



でも、小さな頃のように手は繋いだまま。



「……ずっと、そばにいてくださいね」



陵はそれだけ呟くと、あたしの返事なんか聞かずに


また眠りに落ちていった。



ずっと、そばにいるよ。陵のそばにいたい。


この手が離れないまま、そばにいたいよ。



陵の手を両手で握りしめながら、


あたしも再び眠りについた。







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日曜日なのに、「空飛ぶ広報室」が終わっちゃったので


とってもションボリです(´・ω・`)



あ、今回の話は「あやかし緋扇 INDEX ③」 にあります。


いつも5・6話溜まるとINDEXにリンクを貼っているんですよ?(´∀`)




さぁーて、アイロンがけしてきますヽ(;´Д`)ノ


明日は銀行巡り。


火曜日・水曜日は、午後からも娘っ子を連れてお出かけ。


あ。木曜日も幼稚園に送迎か…。



うわーん ・°・(ノД`)・°・