『南海の迷路』 デズモンド・バグリィ 早川文庫NV | 表層人間の半可通読書とゲームリプレイブログ(略称半読書リプレイw)

『南海の迷路』 デズモンド・バグリィ 早川文庫NV

南海の迷路 (ハヤカワ文庫NV) 南海の迷路 (ハヤカワ文庫NV)
井坂 清

早川書房 1986-11
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デズモンド・バグリィ の幻の第一作。


作者が生きていた時は黒歴史として封印されていた作品で、


デズモンド・バグリィ 自身は発表するに値しない作品と思っていたみたいだが、


いいぞ、これ!


冒険小説の主人公は、


頭脳派より肉体派の方が多いと思われるが、


本書の主人公は、銃を撃った事がない海洋科学者である。


同じ海洋科学者の弟(ただし敵対している)が謎の死を遂げ、


弟の遺品から、海底に潜む謎の存在に主人公は気付く。


それはうまくすれば、数億ドルの価値をもたらすもの。


主人公は金持ちをパトロンにし、


父の部下だった元軍人でコマンドチームを結成し、


太平洋に宝探しに旅立つ。


1960年代の物語だが、


主人公達が乗るのは帆船!


海洋調査には磁気を使用するので、


正確な測定には、調査船は木造の帆船の方がいいのである。


もちろん敵の船も、大自然の驚異も出ますぜ!


本格推理としてドンデン返しも2回あります。


最初のドンデン返しは誰でも気付くだろうが、


ラスト1Pでさらにひっくり返るのが痛快。


帆船の乗組員に女が二人いるのは欠点だが、


ラブロマンスをギャグとして描写しているのは好感を持った。


冒険小説とは極限の命が危ない状況が頻出するものだが、


のんびりまたぁりセクースする小説は冒険小説として二流だね。


本書の主人公はヒロインに愛を告白しようとするが、


ロマンティックな状況にならず苦悩ギャグをやるから痛快である。


「14もの死体を背景に告白は出来ない」w


隙を見てなんとか告白して両想いになるが、


最後までセクースする状況にはならなかったのは、


一流の冒険小説である。


ドラマツルギーの面で物足りないと思う諸兄がいるかもしれないが、


臭いドラマを演じずに、死ぬ時は呆気なく味方が死んでいくのも、


逆に新鮮でした。


白々しい感動の名場面に飽きている人はぜひ読んで下さい。