『弔鐘の荒野』 山田正紀 双葉社 | 表層人間の半可通読書とゲームリプレイブログ(略称半読書リプレイw)

『弔鐘の荒野』 山田正紀 双葉社

山田 正紀
弔鐘の荒野

本書のベストセリフ


「政治家なのだ。


どんなときにも自分を大物に見せかける演出を忘れようとはしない。


いや、なおさら悪いことには、


本心から自分を大物だと信じているかもしれない。


やってられない。


あいにくだが、大物ごっこ、愛国者ごっこは、


代議士先生ひとりで遊んでもらうことにする」



想像出来ない事を想像する天才山田正紀。


今回のモチーフは死後の世界で、


テーマは環境破壊の、


社会派ミステリホラーと思わせて、実はSFという問題作。


小説推理に連載されたが、


普通の推理小説だと思って読んだ読者は、


ホラーぽくなった時点で?となり、


SFとして爆裂してしまうラストに呆然としたに違いない。


たった230Pの作品なので、詳しく書くと読む楽しみが無くなるので、


詳しくは紹介しないが、


SFにしなくても社会的問題意識に溢れた傑作だと思うが、


ホラーの要素もSFの大技もぶち込んでしまう、


山田正紀のアイデアの奔流にはほんとに恐れ入る。


並みの作家なら、本書のネタで長編3作書くよw


では以下は引用をお楽しみ下さい。


「企業は利益を追求するためなら、


どんなことでもする。


基本的に行儀が悪いのだ」


「日本のODAは、タイのツング・ヤン・ヤスレアン野生動物保護区内に、


秘密のうちに、ダムを建造しようとしたことがある。


そのダムが建造されれば、自然保護区の一部が水没してしまうことが分かっていながら、


海外技術協力団の事前調査では、


そのことに触れようともしなかった。


もっぱら経済コストの観点から、


調査がなされただけで、


自然保護については、


まったく無視されてしまったのだ。


そのことが判明し、


タイ国内から激しい反対の声が起こり、


またそれを欧米の環境保護団体が支持して、


ついにタイ国政府は、


ダムの建設を断念せざるをえなかった」


「この代議士は心底から日本の行く末を懸念している。


その愛国心には、


疑いの余地はない。


いかにも古めかしい言葉だが、


愛国の士といってもいいかもしれない。


おそらく、ほかの政治家たちもおなじことだろう。


しかし、それは――狂人の愛国心だった」