『幻象機械』 山田正紀 中公文庫 | 表層人間の半可通読書とゲームリプレイブログ(略称半読書リプレイw)

『幻象機械』 山田正紀 中公文庫

山田 正紀
幻象機械 (中公文庫)

本書のベストセリフ


「吐き気がこみあげてきた。


それは自分自身を含めて、


日本人全員にたいする、


そして日本的なるものすべてにたいしての


強烈な嫌悪感だった」



想像できないことを想像する天才山田正紀。


今回のモチーフは、無中枢コンピュータ?


神経線維に擬される命令伝達システムを持たない植物的コンピュータ!?である。


人間の脳ではなくて、精神を仮想空間に並列して再現してしまう


この超コンピュータ「幻象機械」の発明者の大脳生理学者が、


「幻象機械」内の自分の分身と精神のフィードバックしていたら、


脳の制限を越えて、現実を正しく認識出来るようになってしまい、


日本人及び日本文化の恐るべき秘密を発見してしまうという話である。


世界一の悪で阿呆な日本人の正体を見事に暴く傑作。


西洋人は左脳と右脳の情報処理が明確だが、


日本人は西洋人が右脳で処理している虫の声も左脳で聞き、


西洋人には単なる雑音にしか聞こえない虫の鳴き声を叙情的に解釈し、


侘びとか寂びとかいう独自の文化を確立した。


日本人特有のアニマズムが発生したのは何故か?


魂などない自然の様々なものにシンクロ出来るのは何故か?


厳かな宗教的敬虔さとは程遠い、ケバい赤の鳥居とか、


俗物な成金趣味みたいな金ピカの仏像や仏壇に宗教的意味を感じるのは何故か?


日本人の感性はまともな人間とは言えない。


世界の常識からかけ離れすぎた


異質な日本人の正体を暴く凄い反日SFである。


で、実は明治時代にも日本人の正体に気付いた人物はいた。


石川啄木である。


オープニングは啄木が書いた小説として始まるので、


旧仮名遣いで読めない古い漢字が頻出して、


漢字萌えには至福の文章であろう。


旧仮名遣いの文章を一度も読んだことがない若者には勧められないが、


古臭い明治の文章でSFを書くとは山田正紀の天才性には恐れ入る。


日本文化の本質を理解したい人にも良いテキストになるだろう。


冷静に観察すれば、日本文化は吐き気がこみあげる嫌悪すべきものだと理解出来るであろう。


ぎゃーじんでなくて日本人の山田正紀が気付いた点が凄いよな。


日本人が日本人は劣等民族であることを科学的に証明してしまう傑作。