『宇宙犬ビーグル号の冒険』 山田正紀 早川書房 | 表層人間の半可通読書とゲームリプレイブログ(略称半読書リプレイw)

『宇宙犬ビーグル号の冒険』 山田正紀 早川書房

山田 正紀
宇宙犬ビーグル号の冒険

想像できないものを想像する天才山田正紀。


今回のモチーフは、においコンピュータである!?


インターフェイスとして匂いを情報処理出来るだけでも凄いが、


匂いを論理演算子とする気体コンピュータに接続され、


スーパードッグになったピーグル犬が、


地球の為に宇宙人と戦う物語である。


想像できないものを想像する天才というと、


レムの名も挙がるが、


本当に想像できないものは、人間に関係するわけがない。


本書では最後まで人間は宇宙人の存在には気づきません。


地球を守ろうとした宇宙人が、


地球を守る戦士として犬を召集し、


人間並みの知性のスーパードックにして、


人間の知らないまま行われた太陽系大戦の記録である。


語り手はもちろん犬。


スーパードッグになっている間に、


彼が書いた本という構造である。


物理的には電信柱にかけられたオシッコであるがw


自意識があるのは、においコンピュータに接続されて、


スーパードッグである間のみという設定が科学的に正しくていい。


人間以外の動物は本能で生きているのみ。


言語を操る能力はありません。


知性を獲得してセクースすることに躊躇いを覚える主人公の犬がとても魅力的。


何の疑問も抱かずに平然とセクースする人間は、


人間に進化してないケダモノだと思います。


ヴォクトの『宇宙船ビーグル号の冒険』のオマージュとして、


四つのオムニバスで終わるが、


最後の短編が、


ダーウィンのビーグル号のオマージュとして、


進化論SFとしてもセンスオブワンダーに満ちた傑作。


地球を守る使命を担うのは、人間ではなくて犬が相応しいと宇宙人は判断して物語は始まったのだが、


正義の宇宙人も人間の進化史を洗い直した結果、


人間が存在するのが間違いだと気付き、


宇宙のほとんどの知性体は、人間を絶滅させるべきだという論調に傾く。


主人公の犬は、人間の素晴しさを訴える必要に迫られる。


地球の敵、宇宙の敵の人類に存在意義はあるのか?


世界一の犬SFである。