『デッド・エンド』 山田正紀 文春文庫
- 想像出来ないものを想像する天才山田正紀。
今回のモチーフは終末神話、宇宙の終わりである。
これは山田正紀の宇宙もの本格SFの第一作だが、
完成度は物凄く高い!
世界一の破滅SFだと断言する。
これを越える悲惨なデッドエンドは有り得ない。
人類が進化し、宇宙人とも汎宇宙同盟を結び、
超知性体へと進化しようとしても、
宇宙の破滅は阻止出来ない。
素晴しき知性体がいても宇宙は滅びる。
だが、宇宙が滅びると、
あの無慈悲で残酷な神が甦り、
滅びる運命の宇宙をまた創造してしまうのである。
神狩りテーマも含んでいる傑作である。
滅びる運命は変えることが出来ない、
愛する者も理不尽に死ぬ。
それでも、生きるのは無意味ではない。
殺され続けても、
人類はいつか、神を出し抜ける超知性体に進化出来るのではないか?
という希望が残る傑作である。
恋愛小説としてもいい塩梅のベタさ加減が素晴しい。
あっと驚く時間論が登場する時間SFでもあるが、
時間SFの結末としては小松左京のあの結末より、
こっちの方が小説として感動出来る。
小道具の使い方が巧い。
本格SFとしても、並みのセンスオブワンダーは価値が逆転するだけだが、
このSFからは、認識力の拡大という素晴しいパワーを受け取ることが出来ます。
山田正紀の最高傑作のような気がする。
ただし、書かれた時代が古すぎて、
数学SFとしては致命的な間違いがある。
カントールの連続体仮説を否定して、
アレフ0とアレフ1の間の無限で予知能力を計算するという間違いがある。
言語はアレフ0、テレパシーはアレフ1と定義したのなら、
予知はアレフ2とするべきであった。
アレフ2の概念に気付かず、アレフ0.5を定義したらギャグだっちゅうの!
アレフ2の順序数のπがアレフ0の基数であるという
とんでもない説も出てきます。
超越数を山田正紀は理解していない。
まあ、SFファンって数学に興味が無い、
知的好奇心のないアフォというのが常識だから、
数学的間違いはどうでもいいですけどねw
山田 正紀