「量子宇宙干渉機」ジェイムズ・P・ホーガン 内田昌之 訳 創元 | 表層人間の半可通読書とゲームリプレイブログ(略称半読書リプレイw)

「量子宇宙干渉機」ジェイムズ・P・ホーガン 内田昌之 訳 創元

結末が甘すぎる(理想の並行世界に逃げるというのは「発狂した宇宙」で提示されたもっとも古いハッピイエンドのパターンである)
マイクル・P・キュービー=マクダウエルの「悪夢の並行世界」の方が視点がシビアで(現実世界は主人公達にとって単なる沢山ある並行世界のひとつでしかないというか異世界側の視点で描写されている)
宗教を馬鹿にしているからよっぽどこれよりはSFである。
宗教が存在する世界を理想世界とするとは、絶対にこれはホーガンの作品ではない。
宗教を信じているキチガイに弟を殺され、自らも身体障害者にされた主人公が、
宗教が存在しない理想世界を築く為に、たった一人で全銀河を敵に回す、
G・R・ディクスンの「兵士よ、問うなかれ」よりも志しが低い。
本書にはサラという人物が登場するが、ホーガンファンにはサラと言えば「創世記機械」のヒロインの名の筈である。
本書のサラの別世界類似体が「創世記機械」のサラかどうかは一切語られない。
ホーガン本人が書いたのならサラには思い入れがある筈だからこんな糞作品に同じ名を使用しない筈だ。
白ける結末は問題外だが、仮想論理の展開も甘い。
理想世界を侵略するのは主人公の世界だけだが、他の世界も同時に侵略を開始して一つの肉体に人格が三つ以上同時に存在するとどうなるかは追及されない。
ここを発展させればP・J・ファーマーの「ディワールド」のような面白さを描写することも可能だったのに・・・。
プロローグのコンピュータとのゲームでのコンピュータが使う必勝法も白ける。
フレッド・セーバーヘーゲン以下である。
セーバーヘーゲンよりSFとして劣るのにセーバーヘーゲンの最高傑作「オクタゴン」を並行世界プロジェクトの暗号名にするのもふざけている。
結論としては読まなくていいです