今から十数年前、いつも仕事終わりに行ってたBARがあった。

そこにMSRという若いスタッフがいて、そこまで仲は良くは無かったが、バイク好き。愛想も良かった。


ある日、仕事に出て掃除をしていると、O熊さんが出勤。

「ちょっとみんな聞いて」


ただならぬ雰囲気でオイラ達も手を止める。


「どうしたんですか?」


重々しい中、O熊さんが口を開く。


「BKLYのMSRが死んだよ・・・」


「え?」


スタッフ全員言葉が出ない。


本当に言葉を無くすってこういうことか。


「どどど、どうしたんですか?」


「昨日の仕事帰りにバイクで事故って」


「えええええ」


自分より一回り以上も若いMSRが・・・


人の命はあっけない。本当にあっけない。


その次の日、仕事を終え通夜へ。


本当に呆気なくやつは旅立っていった。


それから数日後、元々一緒に働いていたKSKが店に遊び来た。


おNEWのバイクで。


しこたま昔話なんかをしていて、MSRの話も。


もう夜は明け、自分は帰ります、と先にあがる。

当時、ちょっと変態で携帯を持っていない時期でもあった。


次の日、出勤すると休みのはずのMZOが出勤している。


「あれ?今日休みじゃないの?」


「はい、ところが昨日オイラさんが帰った後、O熊さんがそのバイクで事故ってしまって」


「ええええ!怪我は?」


「はい、顔面を強く打ちつけてかなり酷いと思います」


命に別状はないらしい。


「そうなのか!どこにいる?」


「医療センターにいると思います」





翌日、妹(O熊さんとなぜか誕生日が同じ)とお見舞いへ向かう。


すると、顔面をかなり変形させ、その打撲具合の酷さが伺えた。


ただ、顔面が酷いだけで元気そうではあった。



しかも、O熊さんが事故った日は「友引」でもあった。



そこに、エレベーターのドアが開く。



「あ!O熊さん!」



ぞろぞろと知人が見舞いにやって来たのだが、
その姿を見た看護婦長が『クワッ』という顔をしていた。





ん?なんだ今の顔・・・。





よーく見ると、その知人はMSRの告別式の帰り。





そう、全員喪服・・・。




黒ネクタイ、黒いスーツの男達がぞろぞろと・・・。




窓際には点滴を付け、車椅子のお爺さん。杖をつき、やっとの思いで歩いている人・・・。



まさに明日生きれるか分からないような方達が入院している場所でもある。




市内では一番デカイその医療センターに喪服の男達がやって来た・・・。



『そうか、あの婦長のあの顔・・・』



オイラは忘れない、あの婦長の『クワッ』という顔を・・・。




常識知らずにも程があるよねえ・・・。




『クワッ』




ポーン