崎市 75歳 男性
一般道路に面した家の玄関には、短い鎖につながれた犬がいた。
終日、排ガスをあびるその犬をなでると尻尾を振ってくれる。

ある日、飼い主と遭遇。
私の朝の散歩に犬も連れて行きましょうか、と。
翌日から一緒に歩くようになった。
こちらを見つけては、全身で喜びを表現する。
こちらも犬が待っていると思うと気分が良かった。

1年ほどした頃、犬がいなくなった。
引越しをしたみたいだ。寂しくなった。

転居先に充分な庭があることを願った。


、犬の飼い方に対する考えは変わってきた。
外犬という概念もかなり薄くなってきている。
というのは、都心の話で地方ではまだまだ古くからの飼い方が多いという。

この家の飼い方もそうだ。

しかし、男性と犬は運命的に出会えた。出会うためにそこにいたとでも言おうか。

朝の散歩は両者にとって、かけがえのない時間であったことは想像に難くない。
犬の眼の輝きは、人にチカラを沸き起こさせてくれること、
またその逆のことも証明してくれているとても良い話。

突然の別れは、僕らにこの出来事を新聞という媒体を通して、
人と動物の共生の大切さや可能性を教えてくれるきっかけになった。

全てのことに意味があって、それを軽く流してはいけない。
しっかり受け止めて、必要ならば受け入れて、伝えていくのが大切なんだ。