あなたの背中を 見送りながら 放電して | パリの家

あなたの背中を 見送りながら 放電して

$シトロエンで逃走

15日はスーパーデラックスで山本精一とPhewのライブを観て来ました。

・山本精一
ギター一本と机上の機材で演奏。歌はなし。
先月バウスシアターで吸血鬼ノスフェラトゥを観ていたので、大体あんな感触なんだろうなーと予想していましたが(機材もたしか同じ感じだった)、その何十倍もスケールの大きなライブでした。星の一生を観るような、整合と混沌がてらいなく同居した展開。豊穣そのもの。山本精一という人の引き出しの多さ深さを実感させられたというか。退屈になりかねない長いアンビエントも、絶妙に挟み込まれる(それでいてあざとさのない)細かなフックによって美しさを湛え続けていて。
過剰さはなく、ただひたすらに豊かな時間でした。息をするような自然さであんな空間を作り出せる音楽家、精一さん以外に思いつかない。緊張はなく、かと言って弛緩しているわけでもない。ただそこにいて音楽をするだけの人って感じ。こんなに凄いことはないと思う。

・Phew
レトロくゴツい機材に囲まれ、黒いワンピースにヘッドセットを装着したPhewさん。硬質で単調なビート、しとやかなノイズ、原始的な電子音を忙しなく調節しながら、電波や波長についての朗読(というよりは説明)をマイクに囁きかける、人力マッシュアップという感じのセット。
とにかく物凄い完成度で。このままアルバムにしてほしいくらい素晴らしかった。どこか原点回帰のにおいもしました。現在のPhewさんが昔のPhewさんをプロデュースするような、コニープランクが生きていたらなんて言うだろう、って妄想してしまうような。
オペレーターという設定らしいけれど、遠くにいる人に呼びかける、という意味ではすごくPhewさんの歌にぴったりだと思いました。声や音を電波にのせるのは遠くへ届けたいからなんだよな、って思い出させてくれた。空間、時間、距離にはいろいろあるけれど、誰かに届けるためにそれを越えようとするって、すごく深い愛だよなって。

VJも素晴らしかったです。三面スクリーンでド迫力。山本精一セットはMasato TSUTSUI、Phewセットは本人が用意した写真映像を小林エリカがオペレーションしてたそう。極彩色の図形や光彩がインタラクティブに絶え間なく変化する前者と、白黒の静止画(たまに動画)がやや神経質な手つきで淡々とスライドされていく後者は、アプローチは真逆ながらそれぞれの音楽に実によく馴染んでいて、耳と目の幸福な一体感がありました。

Phewセット終盤で歌われたBig Picture「音楽みたいに」は、この日の総括のような趣がありました。たとえば音楽のようにあなたと拡がれたら~。