第9回大阪国際室内楽コンクール 第1部門(弦楽四重奏) 本選 および結果発表 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

第9回大阪国際室内楽コンクール

第1部門(弦楽四重奏) 本選

 

【日時】

2017年5月20日(土) 開演 11:00

 

【会場】

いずみホール (大阪)

 

【演奏・プログラム】

アイズリ・クァルテット

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 op.130

(終楽章を大フーガ op.133に差し替え)

 

ヴィアノ・ストリング・クァルテット

シューベルト:弦楽四重奏曲 第15番 ト長調 D887

 

ユリシーズ・クァルテット

ベートーヴェン弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 op.132

 

 

 

 

 

現在、大阪国際室内楽コンクールが開催されている(公式サイトはこちら)。

第1部門は弦楽四重奏で、3次予選まで終了していた。

その演奏動画がアップされており(公式YouTubeサイトはこちら)、その動画を視聴した感想を先日の記事で書いた(そのときの記事はこちら)。

そして、本選が今日行われたのだが、本選だけは生演奏を聴きに行った。

 

まず、アイズリ・クァルテットによる、ベートーヴェンの第13番(終楽章は大フーガに差し替え)。

やはり、完成度が高い。

音程がかなり安定しており、音色も柔らかで均質。

フレーズの付け方とか、全員の息の合わせ方(ちょっとした間を取るときなど)、全員の音楽の方向性が揃っており、「プロ」らしい印象を受ける。

ただ、もし贅沢を言っていいのであれば、「中庸に過ぎる」きらいは少しあり、一聴して魅了されるほどの味わい深い音色とか、ベートーヴェンの後期カルテットにふさわしい突き詰めた表現とか、あと一歩何らかの「個性」が感じられればなお良かった。

とはいっても、カヴァティーナでの安定した美しい演奏はさすがだったし、大フーガでの隙のない充実したフガート演奏には大きな感銘を受けた。

4人による小宇宙と言いたいような不朽の大曲「大フーガ」、この曲を実演で聴くのは初めてだが、これほどの完成度で奏してくれたらもう文句はなく、感謝あるのみである。

4人全員のレベルが安定して高いのが素晴らしい。

 

次に、ヴィアノ・ストリング・クァルテットによる、シューベルトの第15番。

彼らも、レベルが高い。

音はやや硬質だが、音程は安定しており、何よりも繊細な最弱音から迫力ある最強音に至るバラエティ豊かな表現力が素晴らしい。

それでいて、クセの強いわざとらしい演奏とはならず、ストイックで求心的な演奏で、このシューベルトの書いた最後のカルテットにぴったり合う表現となっていた(逆に、例えばクス四重奏団の録音では、終楽章冒頭のアクセントのついた音で大きな「タメ」を作っており、わざとらしくて私はあまり好きになれない)。

表現力という点では、アイズリ・クァルテットに優るかも。

ただ、第2ヴァイオリンが若干弱いのと、チェロの高音の音程がときどきわずかに不安定で、第2楽章の聴かせどころのメロディがもったいないことになっていたのが残念だった(チェロは高音でない部分では問題なく、存在感のある良い音なのだが)。

 

最後に、ユリシーズ・クァルテットによるベートーヴェンの第15番。

分厚めの音による、情熱的な演奏(特に第1ヴァイオリン)。

ベートーヴェンらしいと言ってもいいかもしれない。

情熱的とは言ってもそれほど粗いというわけではなく、音程は概ね安定しているし、悪くない。

ただ、ヴィブラートのかけ方がややごつめで、フレージングも滑らかでなくゴツゴツしてしまうときがあり、やや残念。

緩徐楽章の「感謝の歌」、静謐な演奏でかなり良いのだが、やっぱり第1ヴァイオリンが少しごつい。

それに対し、チェロは落ち着いた味わいや自然なフレーズ感があってかなり良い。

 

 

そんなわけで、私の勝手につけた順位は、先日の予想と同じく

 

1. アイズリ・クァルテット

2. ヴィアノ・ストリング・クァルテット

3. ユリシーズ・クァルテット

 

となった。

 

さて、結果はどうなるか。

 

 

 

―追記(2017/05/20)―

 

先ほど、結果が発表された。

 

【本選結果】

1位: アイズリ・クァルテット

2位: ユリシーズ・クァルテット

3位: ヴィアノ・ストリング・クァルテット

 

まぁ、妥当な結果だと思う。

 

先日の記事では「弦楽四重奏のコンクールは、個人的にそれほど盛り上がれない」などと不遜なことを書いてしまったが、なんだかんだ言いながら楽しんでしまった(笑)。

ソロ楽器のコンクールと違って、本選が派手なコンチェルトでなく、ベートーヴェンやシューベルトの感動的な弦楽四重奏曲なのが、なかなか良い(それに対し、例えば先日開催されたルービンシュタイン国際ピアノコンクールでは、3人がラフマニノフのピアノ協奏曲第3番、他の3人がプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番という、胃がもたれそうなプログラムになっていた)。

まぁ、予選と本選の曲があまり変わり映えしないという意見もありうるけれども。

 

 


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