2016年度 大阪音楽大学 大学院1年 修士リサイタル(第二夜)
【日時】
2017年02月22日(水) 17:30 (開場) 18:00 (開演)
【会場】
大阪音楽大学 ミレニアムホール (大阪)
【出演】
ピアノ:
佐々木 美穂 (1)
井上 千尋 (2)
田代 彩 (3)
【プログラム】
ブラームス:4つのバラード 作品10 より 第1, 2, 3曲 (1)
ブラームス:2つの狂詩曲 作品79 (1)
ショパン:バラード 第1番 ト短調 作品23 (2)
ショパン:バラード 第2番 ヘ長調 作品38 (2)
ショパン:バラード 第3番 変イ長調 作品47 (2)
ショパン:バラード 第4番 へ短調 作品52 (2)
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第1番 へ短調 作品1 (3)
プロコフィエフ:4つの小品 作品3 (3)
(1. おとぎ話 2. 冗談 3. 行進曲 4. 幻影)
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第2番 ニ短調 作品14 (3)
今日は、大阪音大の修士リサイタルを聴きに行った。
全5日間のうち、本日は2日目らしい。
本日は3人が演奏したが、私は遅れて行ったので、残念ながら2人目の後半からしか聴けなかった。
その2人目の奏者である井上さんは、ショパンのバラード全曲というプログラム。
私は第3、4番を聴くことができた。
第3番は、真面目で丹念なアプローチによる、不用意な表情付けをしないストレートな演奏で、曲の清冽さがよく表れており、美しかった。
今回の演奏会のプログラムでは、各奏者の楽曲に対する小考察が掲載されているが、この曲では他のバラードとは全く異なり甘く優しい香りが漂っており、シューマンが「フランスの首都の貴族的環境に適応した、洗練されたポーランド人が発見される」と評してその独創性を称えた旨が紹介されている。
そのことがよく表現された演奏だったが、例えば第2主題の直前に現れる右手のオクターヴ跳躍でゆらゆら揺れるような箇所など、もう少しふわっとした柔らかさがあれば、この曲の「洗練された」様子がより良く表現されたかもしれない。
第4番も、冒頭の幻想的な序奏や妖しい第1主題、そして美しい第2主題といった特徴的な各主題の性格をもう少し描き分けられれば良かった。
ただ、展開部において右手で六度が連続する部分など、かなり安定した演奏だった。
再現部に入ってからも、カノンで奏される第1主題、大きなアルペッジョ(分散和音)を伴い波打つように回帰する第2主題、ともに美しく奏された。
白眉であるコーダ(結尾部)でも、難所である右手の三度連続の部分が、スカスカにならず安定して奏され、この曲のデモーニッシュな側面は強調されなかったけれども、丁寧にまとめ上げられていた。
3人目の奏者である田代さんは、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第1、2番で、その間に「4つの小品 作品3」を挟み込む、といったプログラムだった。
彼女の演奏は、私は一昨年の11月のコンサートで聴いており、そのときのラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」の鮮やかな演奏が印象に残っている。
今回のプロコフィエフも、やはりさすがだった。
プロコフィエフの鋭角的な性質を前面に出した演奏ではなく、また轟音をとどろかすような演奏でもない。
もっと、品のある演奏である。
しかし、決して真面目なだけの演奏ではなく、曲の隅々まで表現力に溢れており、ソナタ第1番の冒頭から惹きこまれる。
各々の曲において、スケルツァンドな部分と、抒情的な部分とが、よく描き分けられている(プロコフィエフ特有の「風刺的な音楽」と「叙情的な表情」との併存について、プログラムの小考察にも記載されている)。
一つの端正な解釈として、音楽的に成熟している感じ。
テクニック的にも、ソナタ第2番の終楽章など、キレッキレとまでは言わないまでも、かなり安定しており、アルペッジョのユニゾンも和音連打も大変鮮やかだった。
ところで、今回の田代さんや、先月のKOBE国際音楽コンクール(記事はこちら)で知った吉田彩華さん、高御堂なみ佳さんといった、きらりと光る才能を持つピアニストたちは、今後どのように活躍されていくことになるのだろうか。
存分に活躍されるのであれば、嬉しい限りである。
しかし、もしなかなか活躍の場がないようであれば、もったいないことだと思う。
留学して外国の著名な教師に師事し、世界の数々のコンクールに挑戦していく、といったことが、活躍するためにはどうしても必要なのかもしれない。
しかし、経済面やその他諸々の事情により、留学できない人だっているだろう。
そのような人でも、国内で気軽に活躍できるようであれば、良いのだが。
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