年明け一発目の相談は決まって、企業など

「得意先が破産した」

といった、企業倒産絡みの事件。しかし、商売始めて間がない人や、社会人経験の少ない人ならいざ知らず、年明けに倒産するなんてことは、商売やっていればさして珍しくもないのに、相談に来る人(社長さん)は、たいてい慌てふためく。普段から取引していて、この会社は年を越せるかどうかというかはわからなかったのでしょうか。

商売人一家に生まれ、自分自身も企業にて法人営業経験を有する小生からすると、得意先や取引先が潰れたことなど日常茶飯事です。そのため、得意先が潰れて慌てふためくというのは、商売人としてのセンスがないというか、普段の取引に緊張関係がないことの証左なのかと思ってしまいます。

とはいえ、こちらも弁護士としてどうにかして回収する方法を考えるわけですが、なかなかうまくいかないのが現実です。その理由として、債務者側が用意周到に倒産していたということもあるのですが、多くは債権者側の落ち度が原因になります。

だからこそ、満足いく回答が得られないため弁護士に矛先が来ることもあります。「それをなんとかするのが、弁護士の仕事だろう」って。それなら納得いく回答をしてくれる弁護士を探して相談してください、としか言いようがないわけですが、たまに回収の見込みもないのに腹いせで「訴訟してくれ」なんて言う人もいます。目先の着手金目当てに受任する弁護士もいるかもしれませんが、少なくともそんな無駄な訴訟、小生は受けることはありません(将来的に資力回復の見込みがあり、そのときのために債務名義を取っておく必要があるなどといった特殊事例は別としても)。

また、詐欺だから警察に告訴してくれ、と言う人もいます。まあ、計画倒産の場合詐欺という構成もとりうるので、その指摘はあながち間違いではありません。しかし、そんなこと企業倒産事件を少しでもやったことのある弁護士なら考えないはずもなく、相談者の相談を聞いて詐欺の構成がとれるのであれば、相談者から指摘される前にその旨アドバイスしています。それでも弁護士が詐欺の主張に慎重になるのは、詐欺の立証は非常に難しく、場合によっては名誉毀損、虚偽告訴などといって、逆にこちらが損害賠償請求や刑事処罰を受ける可能性があるからです。この場合、受任した弁護士もただではすみません。

結局、相談に来られたのはいいですが、多くは納得のいかないまま、帰っていただくことになります。冒頭にも述べましたが、結局与信管理をしっかりできていなかった相談者の自己責任、ということでカタがついてしまうわけです。小生も事業主ですのでもこれを他人事とは思わず、常に気を付けておくよう心がけたいと思います。