高齢者直腸癌 | 「あとは緩和」といわれたら

「あとは緩和」といわれたら

少量抗がん剤治療(がん休眠療法)で
元気に長生きを目指す ー

低容量抗癌剤治療を導入している
対象患者さんの多くは再発癌症例であり,
原発巣コントロールを目的に

導入することは殆どないのだが・・・


今回,高齢者の直腸癌の原発巣コントロール目的に
低用量抗癌剤治療を導入した症例を提示する.

提示症例の患者さんはとても元気なご老人.

 

しかしながら,見た目がどんなに元気でも,
 

心筋梗塞の既往,うっ血性心不全の既往(最近の話)のある
高齢者(四捨五入で90歳)という条件の中,
手術や標準抗癌剤治療を是非やりましょうという
医者はまずいない.

 

 

病巣は肛門直上の直腸膨大部に陣取っている.
 

肛門からの距離が短いので開腹手術なら,

人工肛門は必須.


内視鏡的切除は筋層浸潤アリ,のため,
“根っこ”が残存するので止めた方がいいという,
内視鏡医のコメント.

 

ただ,腫瘍は直腸膨大部という
比較的広い空間を有する部分にあるため,
このまま病巣が大きくなってきても,
腸閉塞症状をきたしてくる可能性は低そうだ.


また,この時点で他に転移は認めない.


そういう意味では,こういう癌は手を付けず,
放ったらかしにしておいても
臨床的にはあまり“悪さ”をしないため,

 

特に御高齢の患者さんの場合,
予想される人生の残存時間を考慮すると,
治療の必要性そのもののが問われるところはあるだろう.

 

とはいえ,人の寿命を“いつまで”と言い当てるのは
基本無理だし,


御高齢であろうと治療する・しないを
最終的に決断するのは患者さん本人であるという,
当院のスタンスは変わらない.


だから,当院は本人が希望するのであれば,
状況が許す限りナニか治療を提供することを考える.

 

さて,本症例.副作用もなく,
病巣もいい感じでコントロール出来ている.

 

知り合いの内視鏡専門医に
定期的に経過をみてもらっているのだが,
原発巣は縮小傾向にあるとのコメント.


“低用量の抗癌剤でこの結果は興味深いですね”と
大腸内視鏡検査を毎回快く引き受けて頂ける.

 

この状態を維持しながら
元気に日常生活をおくれることを目指す.

 

当院に課せられた役割は明瞭である.

 

 

★φ(-_- 。)・・・
※当院での低用量抗がん剤治療症例が
 2012年4月の時点で総数400症例を超えました. 
 その中からの経験症例を少しずつ紹介していきたいと

 思います.
 
※低容量抗がん剤治療・・・
 細かいことをいうと微妙な定義の違いはあるようですが,
 当院ではがん休眠療法,メトロノミック療法と呼ばれて

 いるものとコンセプトは同じと捉えています.
 本ブログでは低用量抗がん剤治療の呼称を使用します.

※当院の治療は,同一がん種においても使用する抗がん剤の

 内容・投与量は個々の患者さんの病態・治療歴・その他の

 諸条件により様々です.
 そのため,提示した患者さんに行っている薬剤使用法が,

 ブログをご覧頂いている患者様にそのまま適用できるという  ものではありません.
 読者の皆様に,そういった誤解を与えないために本文中では
 使用薬剤についての
記載を省いてありますことをご了承くだ

 さい.


2012年4月
銀座並木通りクリニック 
http://www.ginzanamiki-clinic.com/