スキルス胃癌.
胃癌の中でも厄介な胃癌として有名.
教科書的な話になるが,年齢の若い女性に多い.
また,癌細胞が胃粘膜の下に潜り込むように
進展・増殖していくために,胃カメラで癌の存在が,
熟れた術者でも発見しずらい.
胃カメラの術者が
「アレッ?なんか変だ」と思ったときには
結構進行しているという代物.
提示症例は,スキルス胃癌を指摘されて胃全摘術施行.
術後経過は良好であったが,
その約1年後,腹膜播種・癌性腹水で再発.
TS1+タキサン系で加療.
効果無く,「あとは緩和」の宣告.
スキルス胃癌を指摘された患者さんには
類似したパターンの方が多いのではないだろうか.
提示した患者さんに,始めてお会いしたときは,
癌性腹水貯溜5リットルの状態..
他院にてCART(腹水濾過濃縮再静注法)を施行し,
腹水を落ち着けたあと低用量抗がん剤治療の導入となる.
残念ながら,スキルス胃癌を消し去ることはできない.
ただ,現状キープを目指すコトはできる.
癌を無理やり押さえつけるのではなく,
低容量抗がん剤治療で,身体に負担をかけずに,
癌をなだめながら共存していくという感じになる.
一般に癌性腹水そのものは,簡単には減ってくれず,
コントロールが難しい.
必要に応じた腹水穿刺の併用は必須となる.
CART(腹水濾過濃縮再静注法)という
スキルが少しずつ広がりつつある.
腹水・胸水でお悩みの患者さんは,保険適応にもなっており,
主治医に相談してみるのも手だろう.
★φ(-_- 。)・・・
※当院での低用量抗がん剤治療症例が
2012年4月の時点で総数400症例を超えました.
その中からの経験症例を少しずつ紹介していきたいと
思います.
※低容量抗がん剤治療・・・
細かいことをいうと微妙な定義の違いはあるようですが,
当院ではがん休眠療法,メトロノミック療法と呼ばれて
いるものとコンセプトは同じと捉えています.
本ブログでは低用量抗がん剤治療の呼称を使用します.
※当院の治療は,同一がん種においても使用する抗がん剤の
内容・投与量は個々の患者さんの病態・治療歴・その他の
諸条件により様々です.
そのため,提示した患者さんに行っている薬剤使用法が,
ブログをご覧頂いている患者様にそのまま適用できるという ものではありません.
読者の皆様に,そういった誤解を与えないために本文中では
使用薬剤についての記載を省いてありますことをご了承くだ
さい.
2012年4月
銀座並木通りクリニック
http://www.ginzanamiki-clinic.com/