Hidden Enemy43 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
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また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)




ティナと和解した後…彼女とリッキーを一緒に連れて自宅に戻った。朝に父さんが今夜は俺達家族の歓迎ホームパーティーをしてくれるって言っていたから。

家に着いた頃にはもうパーティーの準備は出来ていた。今回 母さんはキョーコとユリアの為に部屋をメルヘンに飾るのに夢中になり、料理は父さんが担当したらしい。

(…俺はその話をお手伝いさんから聞いた時、少しホッとしてしまったけれど…それは母さんには内緒。)

そして…パーティーにはリックの両親も来ていた――…。

緊張しながらリックの事故の件を謝ろうとした俺を…彼らは優しく抱き締めて…そしてこう言ってくれた――…。


“ずっと…ずっと心配していたんだよ…立派に成長して帰って来たんだね…。結婚して家族も出来て――…。”

“これからは…幸せいっぱいに暮らすんだよ…。そうすれば…リックも喜ぶからね…。”

“久遠の幸せが…リックの幸せでもあるんだ――…。”



“――おかえり久遠―――…。”



本当に…見えない所で色々な人に支えられて…俺は生きているんだって…今日ほど感じた事はない…。

アメリカに戻って来て良かった…これからは…俺を支えてくれている人達の為にも、何があっても…前向きに生きていこうと…そう思った。



今回のパーティーは俺達ヒズリ家と…いつもヒズリ家で働いてくれているお手伝いさん達、そしてリックの家族という内輪のみで…和気藹々とした雰囲気の中 皆それぞれ楽しんでいた。


俺とティナはリックと昔3人で遊んだ時の懐かしい思い出話を語り合い…


キョーコはメルヘンチックに部屋を飾り付けてくれた母さんに“妖精コーン”の話をしては盛り上がり…父さんもその横で食べながら一緒に話を聞いていた










そして…リッキーは他の部屋から“敦賀蓮”の写真集を見つけ出し、夢中になって読んでいた。彼は“敦賀蓮”の大ファンである。

「あーパパだー!パパーー!!くろいパパーー!」

ユリアが近くにやって来て…ページを捲る事に嬉しそうに“パパ”と言うので、そんな様子の彼女をリッキーは不思議そうにしていた。

「…?ユリア…?何さっきからレンの事を…パパ!パパって…。」

「だってパパの しゃしん だもーん」

「は…?」

ユリアの話を聞いても…まだリッキーは蓮の正体には気付かない。
そして…ティナはクスっと笑い久遠の方をじっと見つめた後…リッキーに話し始めた。


「…そうそうリッキー、母さん貴方に言い忘れていた事があったんだけどね」

「ん…?何…母さん…?」

「………………………。あのね……。実は…そこにいる久遠…って…貴方の大好きな…あの “敦賀蓮”なの」

“へ…?”という意味不明な顔をしたリッキーだったが…そう言われてみれば、髪と瞳の色が違うだけで…久遠と“敦賀蓮”の顔が全く同じ事に漸く気が付いた。

「あ…あれ…? え…?え…えええぇぇぇええええーーー?!ほっ…ほんとだ…! レンだぁ…!レン…!!//////」

突然 目の前に自分の憧れのスターがいた事に、リッキーは驚きながらも…嬉しくて興奮が止まらない。

「…ホンモノのレンなんだぁ…?髪の色とか違うからオレ全然分からなかったよ…!」

久遠はリッキーが自分のファンである事が嬉しくて…にっこりと微笑み、そして彼の頭を優しく撫でた。

「………………………。これから本名の“クオン・ヒズリ”として…ここハリウッドで映画に出るから」

「うわぁぁーー!すっげぇーー!!レン!あ…クオンか…。楽しみにしてるよ!オレ…!!」

その様な2人のやり取りを…キョーコとティナは目を合わせながら、微笑ましく見守っていた。





その後は…リッキーの提案で、皆で大河ドラマ“源氏物語”のDVDを観て盛り上がった。

「オレ…このヒカルゲンジとても好きなんだ…!!着物も凄く鮮やかで美しいし…!!貴族ってクールだと思うんだ…!」

リッキーは“敦賀蓮”ファンであると同時に、日本文化にも興味深々になっていた。しかし彼的に光源氏には疑問に思う所もあった。

…女癖は悪いんだよな…どうしてあんなに次から次へと…恋をするんだろう…??

「………………………………………。」

だけど…“紫の上”のように…小さい頃から自分の恋人として育てていくっていうのはアリだよな…とリッキーは心の中で何気なくそう思った。

『.......Operation “HIKARU GENJI”.........(オペレイション)』(光源氏作戦…)

リッキーはユリアをじーっと見つめた後に、ぼそっとそう呟いた。

「…ん…?リッキーにぃに…なにかいった…?」

「いや?何でもないよ――…。」

「………………………。オレはヒカルゲンジとは違って一途に想える自信あるけどなぁ…?」

「へ…?」

意味が分からず不思議そうにしているユリアの頭を、リッキーはそっと優しく撫でた後に…満面の笑みを浮かべ、自分の年と…ユリアの年を密かに計算し…色々と考え始めた。

因みにリッキーは現在12歳、ユリアは3歳である――…。



* * *




そしてパーティーは終わり…子供達も寝付いた頃、キョーコは風呂上りに水を飲みにキッチンの方へ向かうと…そこのカウンターで久遠とクーが2人で酒を飲んでいるのが目に入った。

…何だかとても真剣な雰囲気で2人は話し込んでいた――…。






「………………………………………………。」

「…なぁ久遠……。父さんは…仕事で忙しくて…お前が苦しんでいる時に…それに気づけずに…力になってやる事が…出来なかった…。」

クーは…ウィスキーのロックを飲みながら…悲しそうな表情で語り始めた…。

「…お前はリックを殺した…って悩んでいたが…それを言うなら…“人殺し”は父さんの方かもしれない――…。」

「………………っ!何…を言っているの…父さん…!!」

戸惑いながら…そう言った久遠の胸にクーはそっと自分の手を置き…静かに口を開いた…。

「………………………。父さんは…お前の……お前の“心”を壊してしまった――…。」

「……………………………………………。」

久遠は無言のまま…思い詰めた表情をしているクーを見つめ…暫くお互い何も言葉に出来ないままでいた――…。

そして…その様な2人に…キョーコは声を掛ける事もその場を去る事も心配で出来なくなり…暫く隠れたままリビングの入り口で様子を見守っていると…後ろからジュリエナに話掛けられた。

「…キョーコ?そんな所で何をしているの?」

「………………………。あ…あの…」

キョーコはジュリエナに“しー”のジェスチャーをした後に、久遠とクーのいる方に視線を向けた。





「………………………………………………。」

「…久遠…。お前の心が壊れて…身動きが取れなくなってしまう限界まで…父さんは…気付かないうちに…追い詰めてしまっていた…。」


「………………………。父さん…!それは…」


…久遠――…。

何度 後悔した事か……。

…あの時にちゃんと気付いてやっていれば…お前は“久遠・ヒズリ”を捨てる事なく…ここまで苦労させる事も無かった――…。

いや…それ以前に――…!

「もし…お前が父さんの子供じゃなければ…“七光り”に悩んで苦しい思いをする事もなく…伸び伸びと…役者をする事が出来たんじゃないかって…。」

周りに何も言われずに…自分の本当の実力で勝負が出来た筈――…。

「…………………………………。その方が…久遠にとって…幸せだったのではないか…と…ずっと…考えて…っ」

「そんな事はありえない…っ!!」

久遠は大きな声でクーの言葉に反論し始めた――…。



* *



まさか…父さんが…そこまで思い詰めていたなんて――…。

俺の方こそ…本当に親不孝者だったと…そう思った…。

アメリカに帰って来るまで…残された人達の気持ちを…本当に1つもちゃんと理解していなかったんだ…というのに気付かされた――…。

「………………………。ありえないよ…父さん…。俺が…父さんと…母さんの子では無かった方が…幸せだったのかも…だって…?」

「…過去に…どれだけ“七光り”で悩んでも…そんな事…っ 今まで1度も思った事は無いっ…!!」

「いつだって…クー・ヒズリと…そしてジュリエナ・ヒズリは…俺の自慢の…最高の両親なんだ…!!」

確かに2人とも仕事で忙しくて…子供の頃からあまりずっと一緒には居られなかったけれど…2人からの“愛情”は溢れ出すくらい受け取っていた――…。

「父さん…!俺の中のヒーローはいつでも…今でも父さんなんだ…!!」

そう――…。

俺は“スーパーマン”のようなヒーローには一切 憧れを持たなかった。

その必要性が全く無かった…。

だって…本物の“ヒーロー”がいつも目の前に居たから――…。



「…俺が役者を目指し始めたのも…父さんみたいになりたいって…思ったからだよ…!」

思い詰めて暗かったクーの表情が…少しずつ…変化していく――…。

「俺はっ…!父さんと…母さんの子供に生まれて良かったと思ってる…!」

昔から色々と両親の事で絡んで来る奴らは居たけれど…結局それは…俺が羨ましかったからなんだ――…。

「……………………………………。」

「…今まで…色々とあったけれど…俺は…俺は…今とても幸せだよ…父さん――…。」

久遠はとても穏やかな表情をした後に…本当に幸せそうに微笑んだ…。

そして…その笑顔を見たクーは…今までずっとあった心のつかえが無くなり…安堵した。

「………………………。久遠…!」

クーは久遠を ぎゅっと抱き締めた。瞳には涙がうっすらと滲んでいる――…。

「父さん…俺…久遠・ヒズリとして…この家に帰って来て良かった――…。皆に…どれだけ大切に想われていたかが改めて良く分かったよ…。」





「………………………おかえり…久遠――…。」


「………………………ただいま……父さん――…。」



父と息子は改めて13年の空白を埋めるかのように…抱き合いながら…そう挨拶を交わした――…。






「…久遠…………!!」

そして…影から2人の様子を暫く見守っていたジュリエナが飛び出して来て…そのまま2人に抱きついた。

「………………………。母さん…。今まで…心配ばかり掛けて…ごめんね…。これからは…ちゃんと親孝行するから――…。」

久遠のその言葉にジュリエナは涙を零しながら…嬉しそうに微笑んだ――…。

「…期待しているわ…久遠…。これからはずっと一緒に暮らしましょう…!ここは貴方のお家なのだから…。」

「……はい―――…。」

「久遠・ヒズリとして…この先…大切な家族を守っていきます――…。」

久遠は瞳を閉じ…誓いを立て…そしてゆっくりと瞳を開くと…その視界に泣いているキョーコが映った。

「……………………キョーコ…!」

「おぉ…キョーコ!こっちへおいで」

キョーコは3人に抱きつかれて最初は少し戸惑ったものの、その愛情の深さに心地良さを感じ始めた。

「………………………。久遠さん…良かったね……戻って来て――…。」

「うん…。本当に…良かった――…。」







 


父さん 母さん…

貴方達の愛情の深さに…改めて感謝します――…。

本当に…これだけ尊敬出来る両親は他にいないと思った。

特に…ティナを支えてくれてありがとう――…。



そして…キョーコは何も言わないけれど…

彼女自身もアメリカに来るのには

本当は大きな不安があった筈なのに

俺の事を心配して…精神的に支えてくれた――…。



今ここで…もう一度誓う

これから先 何があっても…久遠・ヒズリとして

俺は…大切な家族を守っていく―――…。








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次回は久遠とキョーコのお話で、もしかしたら限定になるかもしれません。そして…お話が延びまくっていますが…本当にラストに近付いている…筈…!です…!