Hidden Enemy17 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
作者様・出版社様には一切関係はございません。
また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

 

※このお話は33巻からの続き未来のお話だと思って下さい。本誌とはズレが出て来ます。


今だったら…あの当時の俺達はお互いに想い合っているのに…なんて誤解をしていたんだろう…って笑い話に出来るけど…。

当時は想いが強すぎて…でもその想いを伝える事には躊躇って――。

”関係を壊したくない”

”傷つけたくない”

でも”想いは止められない”―――…。

本当に…苦しくて…切なかった―――。


「ねぇキョーコは覚えてる…?君は…あの当時は一体どんな事を考えていたの?」

『もう…!…あの当時は私も辛かったんですから…』

『”誤解の…誤解の誤解”をしていましたよね…私達…』

「そうだね…でも今はこうして一緒に居られるんだから…」

俺は彼女を後ろからそっと優しく抱き締めた。

「本当は俺の事が好き過ぎて、どうしようもなくて辛くて泣いていたんだよね…?」

『もぉーー!久遠さんったら…!///恥ずかしいから止めて下さいよ…!』

『今でもコーンとの交換日記手帳は私の宝物なんですから…!』

『…あっ!!今お腹が動いたわ…!!』

「えぇーーっ?!本当?!…初めてじゃない…?!どれ…」





早く大きくなって…

ママのお腹から出ておいで――…。

そうしたら…3人で仲良くあの公園に行こう

家族で楽しく遊ぶんだ…あの時の親子3人組みたいに―――。





* * *





ホテルの部屋に着き、俺は最上さんの傷の手当をした。

どうしてもっと早く気付いてあげられなかったんだろう…と自責の念に駆られた。

君と…一日過ごせる事につい浮かれて…楽しくて…。

…痛かっただろうに…。

そして暫くそのまま無言でいたら、最上さんを不安にしてしまったらしい…。

『………。兄さん…どうしてずっと黙っているの…?もしかして怒ってる…?アタシが我儘言ったから…?』

「…セツを連れ回して怪我させた事を後悔してるんだ…。気付いてやれなかった…すまない…」

本当にごめんね…最上さん…。

『もぅ…兄さん大げさよ…ただの靴擦れなんだから…アタシもさっき気付いたの』

『それに…謝らないで…今日1日、アタシ…とても楽しかったんだから…ね?///』

そう言うと彼女はを少し頬を赤く染めて、照れながら微笑んだ。

「…本当か…?」

『うん!とても…今日はアリガト兄さん!』

”今日1日とても楽しかった”

彼女の口から出たその言葉はとても嬉しかった…。

「…なら…いいんだ…」

朝からずっと不安だったから…俺一人だけが楽しんで、実は迷惑に思われていたらどうしようかと…。

でもそうでは無かった事がわかって…良かった…安心した…。


こうして…傷の手当ても終わり…彼女の気持ちも聞けてホッとしていたら…少しずつ今の状況がどうなっているのか周りが見えてきた。

窓の外は相変わらず滝のような豪雨が降っていて、たまに稲妻がピカッと光って見える。

そして…今…俺達はホテルの部屋で2人きりだ…。

彼女の…足の様子に気付く事が出来なかった罪悪感で頭がいっぱいで…早く手当てして、ゆっくり休ませてあげたいと思って…。

その後…こんな状態になる事をあまり深く考えていなかったな…。

今日はこの激しい雨の影響で…狭い部屋しか空いていなかったけど…ヒール兄妹の時みたいにベッドが2つあるだけマシか…。

「………喉が渇いたな…セツも喉が乾いただろう…?取って来てやる…」

俺はそう言うと彼女から離れて冷蔵庫の方へと向かった。

「セツ…ウーロン茶とコーラとオレンジジュース、どれがいい?」

『うーん…オレンジジュース!』

ベッドに座っている彼女にオレンジジュースを渡し、俺は少し離れてソファーに座り持ってきたウーロン茶を一気に飲み干した。

後は…俺の問題だな…なるべく彼女には近付かずに…無難に今晩を乗り越えなくてはならない…。

「セツ…先にシャワー使わせてもらうぞ…」

『うん兄さん!わかったわ…』




* * *




「はぁーー………。」

俺はシャワーのを勢いを強くして、水を思いっきり浴び出した。

セツカである最上さんと…確かにもう少し一緒にいたいとは思ってたけど…今のこの状態はあまり良くないな…。

俺はゲリラ豪雨に感謝するべきなのか…?それとも恨むべきなのか…?

今のこのシャワーのように…激しい雨が降らなければ…薬局で絆創膏を買って…タクシーで彼女をそのままだるま屋まで送り届けていただろう…。

複雑な心境だけど…でも…それでもやっぱり君と今晩一緒に居られる事はとても嬉しい…。

大丈夫…しっかりと…ヒール兄妹で過ごした時のように理性を保てばいいんだ…。

傷付けたくないから…君の事はとても大切にしたい。

それに俺は…彼女の北欧人への想いが薄れるまで…待ち続けるって決めたのだから――…。

そう自分に言い聞かせながらバスローブを羽織ってバスルームから出た。






「シャワー終わったぞ…セツ…」

そう言いながら彼女の方を向いた時…俺は一瞬固まった。

昼間に…彼女の背中を隠す為に俺が着せた上着を…セツカは脱いでいたからだ…。

更にサンダルブーツも脱いでいる為に、綺麗でスラリと伸びた…彼女の生脚が丸見えだ。

「はぁーー………。」

俺は思いっきり深呼吸をした。いくら何でも無防備過ぎないか…?

「セツ…お前も早く…足の怪我に気を付けてシャワー浴びて来い…」

『うん…浴びて来る』

一体俺の事…何だと思ってるんだ…?じゃが芋とかキュウリとでも思っているのか…?

少しくらい…男として意識してくれてもいいだろう……?




* * *




もう…キョーコ…!どうして”疲れたし足痛いから休みたい”なんて我儘を言っちゃったのよ…!

いくらまだ一緒にいたかったからって…敦賀さんの迷惑も考えずに…。

カインを演じているからセツカである私には優しくしてくれるけど…敦賀さん…ため息ついてた…。

『やっぱり迷惑だったわよね…』

だって…敦賀さんには…好きな女性がいるんだもの…。

そう考えたら急に涙が出そうになってきた。

好きです…敦賀さん…。

今日1日で貴方への想いが更に育ってしまいました――…。

貴方の…腕の中はとても安心出来て…気持ちが良くて…。

でも…”私のモノ”ではないのよね……。

『ダメよ…キョーコ…泣いちゃ…!』

今夜までセツカでいられるんだから…最後まで楽しんで演技して終わりたい。

『そうよ…!楽しんで演技をするの!役者の後輩としては…近くにいられるんだから…!気持ちを切り替えなきゃ…。』

そしてシャワーを終えた後はショーツを軽く洗ってドライヤーでさっと乾かし、ホテル専用の浴衣に着替え、髪も乾かしてセツのウィッグをまた頭にセットした。

『うん!結構良い感じじゃない…?』

セツとバスローブは微妙に似合わないからどうしようかと思ってたけど、浴衣があって良かったわ…。しかもオシャレだし…!

ふふ…兄さんも褒めてくれるかしら…?そう考えながら私はバスルームから出た。





* * *




彼女がシャワーを浴びている間に、雷は先ほどよりも更に激しく鳴り出していた。

稲妻が光り、地鳴りのように凄まじい音が鳴り響き…俺は窓から外の様子を眺めていた。

『兄さん、出たわよ』

「……あぁ」

終わったか…と思いながら彼女の方を向いた瞬間…俺は…また固まってしまった。

ゆっ浴衣?!

浴衣に合わせてセツカの長い後ろ髪を全部左肩の方に流して…。

湯あがりで少し赤く染まったうなじが…右側だけ見える…。

『ホテル用の浴衣着ちゃった…!…どう…似合う?!』

「あぁ…!よくセツカに似合っている…綺麗だ…とても…」

『本当?!兄さん!!…嬉しい…///』

紫の…”雪の花”の結晶の柄か…まるで雪花の為の浴衣だな…。

華奢な身体に…綺麗なうなじ。

化粧はしていなくても…とても肌が透明感で溢れていて…魅力的だ。

少し…彼女が演じた…花魁”夕霧”っぽい妖しい色香が漂う――…。


「凄い雷の音だな…稲妻も激しい…」

彼女の浴衣姿はとても魅力的過ぎて…内心かなり動揺していたけれど…俺は冷静を装い、窓から外を見ていた。

「本当にただのゲリラ豪雨なのか…?明日までに止めばいいが…」

こんなに激しかったら…明日の予定にも支障が出るかもしれないな…。

「あの雲の形は異常だ…あんなの見た事ない…」

渦を巻くような不気味な形の巨大な黒い雲が、雷の光に照らされてはっきりと見える。

『え…どんなの…?アタシも見たい…』

そう言うと彼女は窓の方へ移動しようとしたが、途中で自分のバッグに足を引っ掛かけてしまい、転びそうになった。

『きゃあ…っ』
「…セツ!」

バサバサ、コロコロコロ…とバッグの中身が勢いよく飛び出して絨毯に散らばっていき、よろけた彼女を、俺はなんとか受け止めた。

そして…そのまま抱き締めるような形に自然となった。

彼女の甘い誘惑の香りが…鼻をくすぐり俺を虜にして離さない――…。


きっかけは些細な事から――。

俺達はお互いまるで惹かれ合うように見つめ合ったまま…

目が離せなくなっていた…。


そうして…

言葉もなく 暫く時が流れた後

気が付けば夢中になってキスをしていた―――。





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