●山崎三郎氏(独協大学教授)の『ユダヤ問題は経済問題である』には、面白い逸話が紹介されている。

かつて満州重工業の総裁であった鮎川義介氏が、ドイツを訪れてヒトラーに面会した時のことである。ヒトラーは鮎川氏に対し、次のような意味のことを語ったという。

「貴方の国が如何に努めてみても、我がドイツのような工作機械は作れないだろう。しかし、ドイツがどうしても日本にまね出来ないものがある。それは貴方の国の万世一系の皇統である。

これはドイツが100年試みても、500年間頑張っても出来ない。大切にせねば駄目ですよ……」

 

 
(左)昭和天皇 (右)鮎川義介。大正・昭和期に
活躍した実業家。「日産自動車」の実質的な
創立者。満州重工業開発総裁。

 

●これはヒトラーが、日本の天皇を崇敬しているというより、君民一体の理想的な国家形態を伝統的に継承している日本に対して、率直に敬意の気持ちを表わしたものであろう。

「君主政治」を完全に近い形で実現している国は、当時では日本だけであった。外国、とくにヨーロッパの王朝の場合、国王はたいてい飾り物的な意味合 いが強かった。また国王は往々にして圧政をしき、国民と対立関係にあった。しかし日本の場合、天皇は国民を慈しみ、国民は天皇を敬愛するという、欧米人に とっては甚だうらやましい関係が、ごく自然な形で成り立っていたのである。

      

※ この「君主政治」と対極をなすものが、主権在民を置く民主主義であるが、ヒトラーは民主主義の欺瞞性を鋭く見抜いて批判していた。  

     ヒトラーの日本観より転載