日本株は中国離れしてきたようである。今後、注目しなければならないのは先物の動き。

先月あたりまでの日本市場の特徴としては、中国が下がりだし警戒感が高まると、大口の日経先物売り出て相場が下落のパターンであった。当然、裁定買いも積みあがりにくく、場合によっては裁定解消売りが市場にマイナス要因として働いたものと思われる。某欧州系証券経由の売りと言われているが、個人的には他海外市場との裁定、あるいはヘッジに近い形での先物売りではと思っていた。いずれにせよ前提としての日本株投資家の中国市場への過剰反応が収まった今、先物大口売りは有効でなくなるのでは。今後は大口の先物売が減少する可能性が高いと考えられる今後は(本格化は日銀の利上げ=裁定コストの確定後かもしれないが)裁定買残が積み上がる形で相場が上昇する可能性も。

6月9日付けの日経の以下の記事、円を日本株におきかえるとぴったりでは。それにしても勝手なものである、この間までは中国株下落→世界的なリスク資産圧縮という構図が主流であったのに。投資家の認識が市場を動かす以上、中国株の影響は限定的になるのであろう。


ただしリスク要因として金利の上昇が意識されだしており、金利を見ながらの先物大口売りの可能性は頭に入れる必要がある。とりあえず債先と金先が注目される。まず考えられるのは債先売り・株先売りであろうか?最も日本の債券市場は長期ゾーンでは生保、中期ゾーンは貸し出し伸び悩みの地方金融機関という圧倒的な買い手の存在があり、また伸び悩むCPIがある限り、海外の様に単純に金利が上昇するとは思えない。日銀のり利上げによって短期が上昇しても、中長期ゾーンで吸収されるパターンが見られるのでは(いわゆるイールドカーブ=利回り曲線の平坦化)。従って金利上昇を理由とした株先売りの戦略は難しく、仮に金利上昇→株先売りにより株が崩れたら拾うつもり。金利の上昇により債券の含み損を抱えた国内金融機関が、株の益出しをする可能性はあるので、それは注意。全体的な売りというよりは、大きく利の乗った個別銘柄の大口売りで対応か?特に理由がなく、直近で新値をとったような大型優良株が売られたら、その可能性もあり積極的に拾うつもり。あるいは大分ETFに持ち株を組み替えた大手金融機関もあるはずなので、その場合はインデックスに近い形の売りだが。いずれにせよ一時的なもの。


米国市場に関しては今回の金利上昇は景気の底堅さによるものであり株の下げは限定的と思うのだが、あくまでもマイナス要因と投資家が解釈すれば、金利の上昇に限界がある日本で世界景気拡大の恩恵を受ける個別の日本企業にシフトする投資家がいてもおかしくはないのだが。金利差が拡大する以上、円安継続の可能性が高く、そうした企業はさらに収益が拡大する訳であるし。対象は引き続き建機、機械、商社、鉄鋼等の外需銘柄では。問題はそこまで投資家が賢明であるかどうか。


多分にポジショントーク。考えすぎるのが私の悪いところ。運用戦略は自己責任で。というか他人のシナリオを鵜呑みにして収益を上げられる程、甘くはないのがこの世界なのは誰でも知っていると思うが。


なお債券市場の現状は6月7日付日経のマーケトウォッチャーが分かりやすい。証券会社の法人営業マンなら誰でも知っている事だが。



6月9日付日経:

円相場、中国株に「免疫」―株安・円買い、連動性薄れる(マーケットウオッチャー)

中国株の動きに翻弄(ほんろう)されてきた円相場に「免疫」ができてきた。二月以降、中国株の下落は世界的な株安不安を連想させ、投機筋の円買いを誘ってきたが、こうした連動性は薄れつつある。外国人の参入が限られる中国株式市場は他市場から隔絶しており「中国の株安が世界的な株安にはつながりにくい」との認識が市場に浸透してきたためだ
 ▼…八日の東京外国為替市場で円相場は前日終値より小高い一ドル=一二一円前後で推移した。前日の米国株式市場でダウ工業株三十種平均が二〇〇ドル近く下落。ヘッジファンドなどがリスク回避の狙いで円買い・ドル売りを膨らませ、このところの円安にひとまず歯止めがかかった。
 米国株の急落とは対照的に、八日の中国株式市場では上海株式相場が四日続伸。上海総合株価指数は五営業ぶりに三九〇〇台を回復した。個人投資家の投資意
欲は衰えておらず、中国株の調整局面入りを懸念する声は急速にしぼんでいる。
 市場関係者の間ではつい最近まで「上海株が上がれば円売り、下がれば円買い」が合言葉だった。しかし、八日の動きをみて「両者の連動性はなくなりつつある」との指摘が増えている

 ▼…円相場が中国の株式相場をにらんで神経質な動きをするようになったのは、二月末に中国株が急落してからだ。
 上海総合指数は一日で約九%下落。世界的なリスク回避の動きが低利で調達した円を売ってドルなど高金利通貨を買う円キャリー(円借り)取引の巻き戻しにつながり、円相場は三月上旬に一時一ドル=一一五円台まで上昇した。
 「この時のトラウマで外為ディーラーは過剰に中国株を意識するようになった」。ある市場関係者はこう指摘する。
 しかし、中国株と円相場の連動に明確な根拠があるわけではない。もともと中国株はごく一部を除いて外国人は買えず、投資家のほとんどは中国国内の個人。国際的なマネーの移動とは無縁だ。一部で意識された「中国株で損失を被った欧米のヘッジファンドが円キャリー取引を手じまって損失を穴埋めする」というシナリオはそもそも成り立たない
 ▼…中国株の下落が中国経済の減速につながり、世界経済の拡大に水をさすとの見方が連鎖株安を誘発した面もある。しかし、個人投資家が主体の中国株式相場は経済のファンダメンタル(基礎的条件)を反映しているとは言い難く「そもそも中国経済が失速するとはだれも思っていない」(バンク・オブ・アメリカの藤井知子氏)との認識が市場では浸透している。
 米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン前議長が五月下旬に「(中国株は)いずれ劇的な収縮が起きる」と指摘したこともあり、市場関係者の中国株に対する関心はなお高い。ただ、近い将来に中国株と円相場の連動性が復活する可能性はあまり大きくなさそうだ


6月7日付日経:

2年債、利回り、10年ぶり1%台、利上げ観測で売り圧力(マーケットウオッチャー)

債券市場で中期債の利回り上昇が続いている。新発二年物国債は一九九七年六月以来十年ぶりに一%を超えた。日銀の早期利上げ観測がくすぶっており、金融政策の影響を受けやすい中期債に売り圧力がかかっている。一方で長期金利の上昇は一服した。生命保険会社などが、残存年限が長く利回りが高い債券への入れ替えを進めているためだ。
 ▼…新発二年物国債の利回りは六日、前日比〇・〇一五%高い一・〇〇五%で取引を終えた。五月二十三日からほぼ一本調子で上昇し、十一営業日で〇・一%強、水準を切り上げている。
 二年物の利回りは郵便貯金など公的部門の買い観測や国債大量償還による需給の引き締まり見通しを背景に、五月中旬まで低水準を維持してきた。ここへきて日経平均株価が一万八〇〇〇円台を回復。米国では景況感が改善し利下げ観測が大幅に後退した。「日銀の利上げ観測が市場に浸透し、二年債がようやく調整したという印象だ」とUBS証券の道家映二チーフストラテジストは指摘する。
 ▼…中期債が売られる一方で、長期・超長期債には買いが入った。前日に入札があった新発十年物国債は前日比〇・〇一〇%低い一・八三五%で取引を終了した。二十年物国債は前日比〇・〇一五%低い二・一九〇%だった。
 「長期債を買っているのは生保が中心」(ABNアムロ証券の市川達夫チーフ債券ストラテジスト)だ。生保各社はALM(資産・負債の総合管理)の観点から保有債券の平均残存年限(デュレーション)の長期化を推進している。長期金利は一カ月で〇・二%程度上昇しており「これ以上待っても仕方ないとばかりに買い始めている」(市川氏)という。
 生保は昨年も、長期金利が二%近辺に上昇した四―八月にかけ、短期・低利回り債を損切りして長期・高利回り債を買う、保有債券の入れ替えを進めた。大和証券SMBCの概算では、生保大手九社合計のデュレーションは〇六年三月末の七・六年から〇七年三月末には八・一年に長期化している。
 ▼…生保各社は契約者に約束した予定利率よりも市場での運用利回りが下回る逆ざやが続いており、運用利回りの引き上げが至上命題だ。今期も長期・超長期債を中心に九社合計で約二兆円規模の積み増しを計画している。「長期金利で一・八%を超えれば円債を積み増していく方針」(富国生命保険の桜井祐記財務企画部長)との声が大勢だ。
 「利上げ観測を織り込んで金利の上昇基調は続きそうだが、生保の買いが入るため年限が長期になるほど上がりにくい
」と大和証券SMBCの末沢豪謙チーフストラテジストは語る。イールドカーブ(利回り曲線)の平たん化が一段と進みそうだ