こんばんは、熊です。
今回は、インドが開発を明らかにしたMIRVについて、その特徴や開発の意味を書いていこうと思います。

8日、インド防衛研究開発機構が、MIRV能力を持つ多弾頭長距離弾道ミサイル「アグニ6」を開発中であると発表しました。

今回の開発が明らかになったMIRVとは、Multiple Independently-targetable Reentry Vehicle(=複数個別誘導再突入体)の略称であり、読んで字の如く、複数の個別誘導可能な再突入体(弾頭)を意味します。
このMIRV化された弾道ミサイルが兵器として優れている点としては、まず第1に、複数の標的を1発のミサイルによって同時攻撃できるという事が挙げられます。MIRVにおける弾頭にはPBV(post-Boost Vehicle)と呼ばれる小型ブースターが搭載されており、1つの再突入体から速度や方向をずらして切り離される事で、異なる標的に対して飛翔する事が可能となっています。この特徴によって、は単体の弾頭と比べて着弾精度が劣る一方、MIRVはミサイルを増やさずに攻撃力を増やす事が可能になるという利点を持つのです。これは、経済力に限りのある国家にとってはお得な選択肢となります。

また、MIRV化された弾道ミサイルは、著しく迎撃が困難であるという利点も持っています。核抑止を考えるとき重要なのは、核戦力の生残率を向上させると共に、核戦力に対する相手の損害限定能力を削ぐ事であると言えます。幾ら多数の核兵器を保有していても、相手の損害限定能力(≒対処力・迎撃力)が十分である場合、相手による拒否的抑止が成立してしまい核攻撃を行う意味が無いのです。
複数の弾頭によって同時攻撃を可能にしたMIRVの場合、全ての弾頭を迎撃する事が困難であるため、結果的に相手の損害限定能力を削ぐことで、核攻撃を行う意味を強化し、相手に対する核抑止力を強める事ができるのです。

以上の様に核戦力を経済的に増強する事が可能で、なおかつ相手の損害限定能力を削ぐことのできるMIRV化技術は、パキスタンや中国といった核保有国との間に問題を抱えるインドにとって重要な意味を持つ技術であると言えます。
インドは既にSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の開発に成功しており、核戦力の生残率の面では着実に抑止力を強化しつつあります。これに加えて、MIRV技術の開発を目指している事は、インドが攻撃力の面においても核抑止力の強化に乗り出しているという事を意味しています。