~願いつづければ、その思いはいつか届いて叶う~


1月に観に行った嘘ツキタチノ唄、その公演パンフには次回、次々回の公演日程が書かれていました。


がーん!どちらも月曜日に公演がないっ!次にボクラ団義さんの作品を観に行けるのはいつになるんだ?その思いが強すぎて、公演後に団員のみなさんに月曜までしてくださいと懇願しまくっていました。


するとどうでしょう、遠慮がちな殺人鬼の公演期間が月曜まで1日延長されているではありませんか!強く願えば叶ってしまうことがあるのだなと。こんな僕のためにみなさんに感謝です、と勝手に思ってます(笑)


今回は番外公演ということで、少しテイストが違いなおかつ出演者もゲストの方が約半分で、しかも劇場も池袋のKASSAIで一公演約100名限定という内容でした。


サスペンスコメディで会話劇、公演時間途中休憩込みで約3時間半!いままでに僕が経験してことないものばかりでした。当初は2時間半以内と久保田さんには聞いていたのですが、なんというボリューミー。これでは夜の部だと22時東京駅発の高速バスに間に合わないと思い、お昼の部に予約変更していただきました。平山さん、ご無理をお願いしてすみません。


4月8日、千秋楽、東京の空も真っ青できれい。昼間は少し汗ばむ暑さでした。そんな僕の服は新しく買った真っ青なジャケット。派手かと思いましたが、ブルー好きにはココロ持ってかれちゃいまして。劇場内でもちょっと目立っちゃってたみたいでした。舞台上から大友さんに見つかっちゃってました^^


そうそう、これにふれないわけにはいきません。初日の二日前、主宰の一人でもある、今回も出演される予定だった沖野さんが急病のため降板されてしまいました。無念だったとは思います。沖野さんの存在は大きすぎますし、代役された添田さんはいきなりあのセリフ量、動きを憶えるのは大変だったと思います。


みなさんのパワーを集結して、添田さんを支えていたのだと感じられる舞台でした。やっぱり信じあえる仲間がいるってステキだなぁ。


それにしても、久保田さんって嘘つきだなぁ~。サスペンスコメディなんで軽い感じに観てねって言っておきながら、内容はなかなかのブラック。今回の出演者のほぼすべてが隠し事や嘘をついている。しかもその理由はすべて自分の保身や利益のため。前回の嘘ツキ~の時は他人のための”やさしい嘘”の集まりなら、今回は自己欲のための”汚い嘘”の集まり。だからエンディングもブラック満載。因果応報、自業自得、この言葉久保田さん好きなのではと。


あと会話劇といいながら、ダンスはハンパなく激しい。大神さんの豊かな表情のダンスと上段から下に飛び降りたジャンプシーンにはドキッ!っとしちゃいました。毎回成功させてるの、これを!真凛さんのジャンプも高っ!さすがモブガール^^このみなさんのダンスを全体図で見渡したいので、いつも席は後ろにしていただいてはいるんですけどね。


話のキモになる白髪の陶芸家にはやっぱ中村さんでした。あらすじが発表されたときに、この陶芸家は中村さんであろうとは思ってました。陶芸家とその息子、竹石さんとの会話が続きます。いやに実の親子押しをしている。さては血のつながりが実はないのかな?と予想ルートを二つに分けました。しかし母親までつながってなくて、実の母親があの人とは。そこまで広げるのは難しかったですね。やっぱ伏線の張り方がうまい。


そして番外公演らしい、キャストひとりひとりにスポットをあてたお話が続きます。あきなしって名前が出たときに、まさかこれは春夏冬?と。それにしてもみなさん個性的。今回は他人が話してるときの待ちの演義がみなさん素晴らしかった!ひとりひとりの性格をしゃべってないときに表現されてました。ある方はイライラ、ある方はいじいじ、そしてまたきょどりまくり、全体を見渡せる席でよかったと思いました。話してる人だけを観てると、見逃してしまうところでした。


大神さんと大友さんのボケとツッコミの掛け合いもおもしろかったですね。それにしても大友さんは、いい音を出す。そりゃあ大神さんの太ももにアザが出来ちゃうもんだわ。いつもはニコニコの大友さんの表情が、舞台上では怖いぐらいの迫力のニラミ。ゾゾゾっとしました。新たなコメディエンヌ&ダークヒロインの出現を感じました。


2時間を過ぎた頃、初めての経験。ブレイクタイムが入りました。ちょうど一通り殺し方のエピソードが終わり、これから解決編にってとこでした。このシステム、僕は好きです。5分ほどの休憩時間ですが、この間に配られたブレイクタイムパンフを観ながら、人物整理。やっぱあきなしは春夏冬だった!とちょっとにやり^^。この時間で人物整理ができたことにより、休憩後のタネあかしが理解しやすかったです。


僕は現在の常識の中でしか予想ができませんでした。だから、この結果は予想できませんでした。ほんと久保田さんの四次元ポケットからいい道具でてくるなと。あの壺は思いつきませんでした。柔らかい痛くない壺までは想像できたとしても、土が消えるのは思いつかない。今は無理でも50年後にはできてる技術なのかもしれません。この久保田さんの創造がいつも予想できないから、面白いんですよね!


ある意味チラシで持たれてた一番関係ないと思われる大神さんの凶器である”豆腐”、これがトリックの最大ヒントだったのか!と勝手に思ってしまいました。凶器になりうる壺が凶器の効力がなく、残ってしまうはずの土が時間とともに消えてしまう。この矛盾。ぼくの勝手な想像の飛躍ですが、豆腐ってそのままでは撲殺の凶器にはならないですが、例えば凍らせてカチコチにすれば頭を殴って殺すこともできるはず。そして殴ったあとに溶かして食べれば凶器は消える。ちょっとこじつけすぎましたかね?


エンディングのブラックな内容には納得しました。全員殺されてしまうのは驚きました。しかもあの方法で。


やはり自分のためにつく嘘をつき続ける人間にはそれなりの死が待っていないと。


人を恨み続ける、これも人の醜い願い。それを願い続けた思いが叶った結末でもあるのがこの作品の結末でもある。僕の願い、この陶芸家親子の願い、どちらも叶ったけど、叶ったからといって必ずしも幸せとは限らない・・・。他人を恨み続けることこそ、人間は遠慮しないといけないのかもしれませんね。


このシアターKASSAIという劇場、ここがあったから今の僕がある。ハイスクール・ミレニアムに出会い、久保田さんの作品に出会い、そして平山さんに出会い、だから今がある。劇場に入場した瞬間、あぁここだ!と思わず声にしてしまいました。この感動を思い出させてくださったボクラ団義のみなさんに感謝です。

徐々にいろんなことが明らかになってつながっていきます。


使用人を中原は自分だと言っていたが、じつはマネージャーこそが中原で、使用人の名前は大柳でした。

(よっしゃ、仮説は当たってた)

雪子の病名はショックなことを見てしまった心因性の記憶喪失らしいとのこと。だからかいつも通っているマネージャーの名前も憶えていないし、昨日起こったことも忘れてるみたいでした。その見てしまったものというのが父親が死んでしまう原因になってしまった事でした。見てしまったということを日記に書いてしまっていたので、その犯人に襲われる危険があるために、この日記帳には嘘ばかり書いてますよと中原が書いたのでした。

そして、ピンクパンサーのメンバー矢口、岡田の恋人の今村、タレントの小石原裕二郎とはじつは雪子本人のことだったのです。


嘘と事実の場面の対比が好きなんですよね。同じシーンのはずなのに表情や表現が見る者の立場によって少し変化するんですよね。Aからの視点で物事を考えるのではなく、その対極にいるBの視点から見ることでまた別の考え方が表れてきます。相手の立場にたって物事を考えるのって大事なんですけど、大変なんですよね。僕もお客様目線での満足度の追及を考えてますが、はたしてどうだろう?


雪子が書いた日記にはあの男をゆるせないと書いてありました。そして中原は社長のまわりにいた男の中で怪しいと考えたのが使用人の大柳でした。社長夫人にも近づき、社長亡き後この事務所を乗っ取ろうと考え、社長を交通事故にみせかけ殺したのでした。そのために必要だったのが青酸入りコーラでした。


そうだったのか!77年に設定してたのは、この犯人の捕まってない青酸コーラ事件を使うためだったのか。フィクションですが、この事故死にみせかけるために使う青酸コーラの威力を試すために、実際にあったコーラ事件を起こしたのです。そして記憶の戻った雪子は大柳が捨てたはずの予備の青酸コーラを隠し持っていたのです。それを大柳の持っていたものだと証明するために雪子自身が飲んでしまうのです。みんなに囲まれて岡田の腕の中で息絶えてしまうのです。犯人である大柳を、父の敵討ちをしようとしてた雪子の代わりに母が刺殺するのでした。


このラストにたどりつくまでには雪子のためを思って、周りの人がついた優しい嘘がたくさんありました。

昨日のことも忘れてしまう雪子に楽しんでもらうために、ピンクパンサーやビコーズは大人気だと書いてみたり、岡田は彼女とうまくいっていると書いてみたり、中原はマネージャー業が忙しいと書いて。


ここでの岡田と今村の表現がグッときました。雪子は中原への思いを胸に秘めながら、父親のすすめで有能である岡田と付き合っていたのです。岡田と今村の嘘の場面では、岡田が思っていることは雪子が思っていた事(岡田のことは無関心)で、今村が思っていた事は岡田が思っていること(雪子のことが大好き)でした。なので今村が岡田の事を思って好きで好きでたまらない表現をすればするほど、実は岡田の報われないであろう思いが詰まっているし、今村の思いを鏡写しのように真裏の思いだったのが、岡田に対する雪子の思いなので楽しい表現をすればするほど雪子の冷めた思いや中原への思いが伝わってきて切なくなりました。


中原も雪子に思い出してもらうために、ショック療法として自分のことを大柳だと名乗ってみたり雪子のために嘘をつきます。雪子への思いにフタをするために。ガンの告知に似ているのかなとも思いました。相手に希望をもってもらうための嘘、これは思いやりなのかなって。


岡田の腕の中で息絶える雪子、中原への思いをわかっていながら愛した人を助けれなかったくやしさ、せつなすぎます。


父への復讐を果たさせてしまい、死なせてしまった雪子を思いながらの36年はどうだったんだろうと中原の気持ちも考えてしまいます。自分の雪子への想いを封印したまま。沖野さんの無念と悲しみの表現には見入ってしまいました。


そこに絡んでくるのが、雪子が中原への思いを伝えるために作ったビコーズへの曲でした。「嘘ツキノ唄」ココロに染みます。ストレートな表現だとクサく感じるんですが、雪子が作ったのに男性目線になってるし、好きなのに好きと言わない、でもそれは嘘つきだからみたいに。ビコーズのハーモニーはすばらしかった!もちろんギターの音も。さすが楽王!照明でキラキラ光ってってかっこいいって。名付け親としてうれしい限りでした^^

そうそう、それで朝観た鈴木先生の事を思い出したのでした。相手への思いやりで自分を変えるのっていい事なのかなって。集団の中での役割を演じるって大変だけど、おもしろい。リーダーでずっといるのも疲れるでしょうしね。


刑事の相川が、実は雪子の妹さゆりと中原との間にできた娘だったっていうのには驚かされました!でもこれはほんとなんだろうか?もしかして嘘?


いつまでも考えさせられる作品だなぁと。余韻の残り方がハンパないと思いました。観たものひとりひとり受け取り方、感じ方が違ったんじゃないでしょうか。言葉のひっくり返しが多いので、2度・3度観たくなるんだろうなって。この作品を再演された意義はそこにあったんじゃないでしょうか。初演を観ずに行った分、衝撃力はすさまじかったです。


いつも思いますが。久保田さんは人間というものを愛しているのだなと。毎回いろんな愛を表現していると思います。次とその次の公演は月曜日にないのでいけれないのが無念でしかたありません。


公演を観た後、大神さんの歌声に刺激されて一人でカラオケ3時間行った事実は墓場まで持っていかなければ。

1月20日(日)池袋のシアターグリーンにてボクラ団義さんの「嘘ツキタチノ唄」を観てきました。

play againという再演プロジェクトの第2弾で、初演は3年前に行われました。今回は再演を観るにあたり、あえて初演のDVDを観ないようにしました。いっしょに謎に挑みたかったからです。


ボクラ団義さんの作品を観るときは、全体を見渡せるよう後ろの席を用意していただき、脳を3分割して観ています。今回の作品は今まで以上に脳をフル回転しました。それぐらい言葉遊びや表現が複雑に絡み合ってました。


ネタバレ防止のためすべての公演が終わった後(ということは、僕が観てから1週間たっているので、記憶間違いしていることがあるかもしれません)にこの日記を書いています。これはウソの日記ではなく、僕の気持ちを素直に書いています、だから長くなります・・・。


夜公演を観に行ったので、早朝から東京にいるのでなにしよっかと考えてたら、さいたま新都心のムービックスで9時すぎから映画「鈴木先生」をしていました。ムービックスのポイントが貯まってて10回ぐらいタダで観れるのでタダで観てきました。


あれ?舞台の感想なのになんで映画の話が??って思われるでしょう。しかし、この映画の内容が後になって関連してくるのです。


ちなみに鈴木先生の内容はというと、中学教師の鈴木先生が自分の受け持つ生徒を使って、いろんな学校内で起こる事件を解決していきながら、自分の教育理論を実験していくというものです。今回は生徒会選挙とひとりの卒業生による立てこもり事件が軸になって展開していきます。


結果的に、選挙制度に反感を持ちぶち壊すために会長に立候補した生徒が当選して、会長をする気はなかったが友達に押されていやいやながらもその役割をはたしていこうと決意します。


立てこもり犯は、中学時代に先生に従順な生徒を演じていた自分は今ニートなのに、中学時代に不良だった生徒が今は建築会社の社長をしたり、医者の玉の輿にのって幸せになってる、そんな教育はおかしい、自分と同じようにまじめな生徒は汚れたほうが将来幸せになるんだから、おれが汚してやるという目的で乗り込んできました。それを鈴木先生が傷つきながらも教え子を助け、犯人も説得します。


まぁそんな感じでした。鈴木先生の教えとしては、若いうちにいろんな役を演じて自分の引き出しをいっぱい作っておけということでした。いい子ぶっててもいいじゃないか、悪ぶってもいいじゃないか、自分のキャラじゃないからやらないと言わずに、やってみることでその経験が将来に役立つ。なので従順な生徒に見えても自分の芯を持った強い子にみんな育ってました。



と鈴木先生の話はここまでにして、20日の夜公演の「嘘ツキタチノ唄」を観てきました。もう1週間たちますが、頭の中に余韻がいまでも残っています。ですが、流れを完全に憶えきれてないのが苦しい所。間違えてる場面もあるかもしれませんが・・・。


「これは嘘の日記帳だ。ここには嘘ばかりを書こうと思う」

5人の人物で回し書きされたという36年前の日記帳。その日記帳には中原という男が神谷雪子という女性を殺したとする内容が書かれていた。このコールドケースの事件を調べに相川、瀬戸沼、羽田という3名の刑事が中原の元を訪ねる、という場面から始まります。


オープニングスクリーンでは大神さんが歌う唄が流れながら36年前の映像が流れます。そして実際に起こった青酸コーラ無差別殺人事件の内容が説明されます。歌は叙情的でこれからなにがどうつながっていくのか、ハッピーエンドなのかはたまた・・・謎を深めてくれます。


そして中原はその日記に書かれた内容を話していくのです。日記を書いたとされる5人とは、殺されたと書かれてる神谷雪子、ビコーズというバンドのリーダー杉崎信也、ピンクパンサーというアイドルユニットをしている前田君枝、雪子の父が経営してた芸能事務所に勤めてる岡田賢吾、その事務所でマネージャーをしているおおやなぎ(だったっけ?)。それぞれが書いた日記の内容は嘘であると、でも締めくくりには嘘だとも。


嘘の嘘は本当、すべての話を脳に記憶しながら、どこにコトバと動きの仕掛けがあるのだ?と2個の脳域をフル回転。この瞬間が観ててたまんないのです。いつも後ろの席を予約しているのですが、その日は満員ではなく、となりには人がいませんでした。なのでひじかけを使いつつ、推理。ウィダーインゼリーはダメでもチョコがほしくなる。余談ですが左の方を見ると、大野清志さんがおられてビックリ!オーラとバツグンの腹式呼吸での笑い声がバンバン出てます(笑)


神谷雪子は病気らしく、いつもベッドの上にいます。元気そうに見えるのですが、しゃべり方に???なんかすっとぼけてるような。名前を憶えてなかったりとか違和感がちょろちょろ出てきます。その傍らには使用人の男が。この男が中原、自分自身だと答えてます。(ん?ほんとか??)そしてその部屋にみんなが回し書きした日記帳を届けるマネージャーの姿が。なんで関係なさそうなマネージャーが届けるの?しかもめっちゃ気になるのがシャツの袖をこれでもかとまくってる所。中原もそこまで大げさではないが袖をまくってる。もしかしたら、マネージャーが中原?と仮説をたて、その方向の推理も始めました。


3人組のバンド、ビコーズは仲が悪いのに、日記では仲がいいと。曲も変なのにナウいと書かれてます。

アイドルグループ、ピンクパンサーもそんなに売れてないのに日記では人気絶頂で武道館コンサートをやったと書かれています。

事務所に勤めている岡田は自分はそこまで相手に対して好きではないが、彼女の方が自分に熱心であると。

マネージャーは小石原裕二郎というワガママタレントについていると。

そんな日記帳の中身は嘘ばかりだという。なんでそんな嘘を書かなきゃいけないの?なんで回し書き?

今、舞台上で個性的な役者さんたちが演じられてた話はどこまでがほんとなの?それとも全部逆?関係なさげに見える人も何名かいる。なんなんだろう?仮説も立ちにくい。ただ、70年代とかは流行りの髪型ばかりしている人だらけだったんだろうと(77年だと3歳だったから記憶にはないですが)。雪子とピンクパンサーのメンバーの矢口、岡田の恋人の今村の髪型が似てるなぁというひっかかりはありました。どうしても職業柄、そういう所に目がいっちゃうのです。

結論からいうと、小石原裕二郎が男だったので、あの結論にたどりつくことは推理上できませんでした。さすが久保田さん!!


長くなりすぎました。謎解き前までは進めたと思うので、その2に続けようと思います。