昨日の環境保全委員会では、高砂市が梅井の産廃問題の建設予定地の所有者から訴訟を提起されたことが報告されました。

国家賠償請求(公務員が悪いことをした場合に国や自治体にその責任を追及する民事訴訟)で、市長が産廃の許可手続きの進行を妨害したことにより、産廃施設を計画するクリーン・ラインと建設予定地の売買契約が白紙となったことから、その手続遅延の2年半の土地購入のための資金の利息や固定資産税、慰謝料など約1億7千万円を損害として請求しています。


なお、行政当局がクリーン・ラインに確認したところ、産廃建設計画の断念及び白紙とした事実はないようです。産廃建設が思うように進まずヤケを起こしたのか、金回りが悪くなってパニックに陥っているのかは知りませんが、くだらない訴訟に付き合わされる高砂市(その費用は私達の税金であるが)には同情するのみです。以下、当該訴訟のくだらなさを法的に見ておきたいと思います。


国家賠償法に基づく損害賠償請求が成り立つためには、公務員(本件では市長)が、その職務を行うについて

①故意又は過失の加害行為

②によって(因果関係)

③違法に

損害を与えることが要件となります。


①故意又は過失の加害行為

(1)県知事の意見照会の放置

原告は、事業計画書を提出する準備段階において、県知事が再三意見照会をしたにもかかわらず、市長が放置したという。

しかし、この事実があるのかどうかも疑わしい。

仮にあるとしても、法的に高砂市長が意見照会を受けるのは、事業計画書が関係住民に周知されたという報告書が提出された後であり(※)、準備段階ではない。

百歩譲って、県側が市に非公式に意見照会した事実があり、その非公式の意見照会に応じなかったとしても、それをもって手続きの進行を明らかな悪意をもって妨げたという評価には無理がある。


(2)産廃施設設置許可の断念の要求

産廃建設を断念するように要求されたとあるが、そのような事実があるかどうか疑わしい(まぁ、裁判では証拠でも出せばよい)。

など質問したり、あるいは紛争の予防及び紛争の適正な調整(※2)のために行政指導したことはあるかもしれないが、行政指導が違法な加害行為となるのは、相手方が当該指導に従わないという真摯かつ明白な意思表示をしたにもかかわらず、指導を継続した場合のみである。


(3)全市民対象の説明会の実施要求

「全市民に対する説明会を要求するという常軌を逸した要求」をしたというが、説明会の対象が全市民かどうかは、市条例8条1項の「関係住民」の解釈の問題である。(これについては、解釈が事業者と市で平行線をたどり、県が斡旋した)

高砂市の面積及び人口などからも、関係住民の対象を「全市民」と解釈することは正当であると考えられるし、少なくとも「常軌を逸した」とは到底評価できない。


②因果関係

因果関係は、行為と損害との間に社会通念上相当といえる関係がなければならない。

しかし、土地売買が進まないのは、相手方の経済的事情もあろうし(これは差押えの事実などの間接事実からも推認できる)、当該売買契約の条件が成就しないのも事業者であるクリーン・ラインが県が斡旋した交渉のテーブルにつかないからである。

そもそも、売買契約には期限が付されており失効しているのではなかろうか。


③違法性

高砂市長の行為は高砂市の条例あるいは兵庫県の条例に則っており、違法性を帯びるものではない。

余談であるが、原告の弁護士は一般条項である行政手続法1条を引用するが、高砂市行政手続条例を引用するべきであるのが正しいように思う(まぁ、一般条項であるから間違ってはいないが)。


その他、損害額もツッコミどころはあるがそこに触れずとも、訴訟の結果は高砂市が勝つことは明らかであり、バカバカしいの一言につきるように思う。

(市側の弁護士はこんなに楽チンな事件で高額の報酬がもらえるのであるから、小躍りして喜んでいるのではないか。っていうか弁護士に依頼するまでもなく市の職員の誰かがやればよい気がする・・・・)


※1 産業廃棄物処理施設の設置に係る紛争の予防と調整に関する条例13条

※2これは高砂市産業廃棄物処理施設の設置に係る紛争の予防に関する条例3条によれば高砂市の「任務及び所掌事務の範囲」(高砂市行政手続条例30条)