脳を鍛えるという名目で、

利き手とは逆の手で絵を書いたり
紐を結んでみたりという遊びが

姉妹の中で
流行りだしているようです。

妹たちは何気ない日常の動作に
別のルールを設けて遊ぶことが
楽しいようで、

姉たちは記憶力が向上すれば
テストが楽になる――

という理由で一生懸命です。

もっとも、
左右の脳にある程度機能が
局在しており、

作業によって左右の脳の
活動に差があることは
示されていますが、

それはあくまで相対的な
活動の差異であり――

利き手と逆の手で作業を行い、

普段とは逆の脳を
刺激したからといって――

理論的なあるいは逆に
観念的な思考や機能が
身につくといった言説は
科学的な根拠に乏しく、

現状否定も肯定も出来ません。

――ですが、
生物の身体は生存のために、

使わない機能ならば
どんどん衰えるように出来ているため、

指先動かすことにより
脳に刺激を与え、

その機能を維持するという
点においては――

ある程度意義が
あるかもしれませんね。

むしろ私の関心は、

この流行りをもたらした
妹の観月にあります。

キミは――
見ましたか?

利き手はもちろん、

着物の合わせから
髪の分け目まで
反対になっている観月を――。

しかもその全てが
注意を払わねば
気づかないほど自然でした。

着物はともかく――

他はそう簡単に
出来るものでしょうか?

いくら観月の髪が
癖のない直毛だからといって
あそこまでキレイに
髪型のセットが可能なのでしょうか――。

あの奇妙な左右反転も
脳を刺激するためなのでしょうか?

もしかしたら
観月の見えないものが
見える目というのも、

その特別な刺激によって
活性化した脳による
高度化された画像処理の結果、

あるいは元々他人より
広く紫外域、赤外域の光を
捉える目を観月が持っていて

さらに脳がそれを効率良く処理出来る、

といったことなのでしょうか?

検証の価値はありそうです。

ちょうど夏休みの自由研究が
決まっていなかったところですし、

腰を据えて検証してみましょうか。

イヌやハチやヘビのように、

人間とは可視光の領域が
異なる生物との比較研究も
面白いかもしれませんねv

そういえば――

観月によれば
キミも見えないものが
見えるのでしたね?

ならば研究に協力しては
くれませんか?

観月には出来ない
様々な実験が、
キミには可能でしょうから――

フフフv

-あとがき-
べびプリ日記風SS
昨日(7/25)のSS「付喪神」の続き。
この家の自由研究は毎年大変そうです