「タイで自分探し」
などとは僕には考えにも及ばなかった今から二十年前、タイ・カンボジア国境付近の農地開拓を指導する王室プロジェクト主催の謝恩会に呼ばれたことがある。
タイ人外国人20人前後の貸し切りリバークルーズの宴もたけなわになった頃、プロジェクトの総責任者だというオジサン(写真は近影)に、
「そこの、ヤング・ジャパニーズさん、「昴」でも歌ってくれますか」
と流暢な英語で言われて、僕は凍りついた。
たぶん、ばんそうこう男さんは僕が「昴」に凍りついた理由を推測して笑ってくれると思いますが、ほかの方々も「おお、そうだそうだ。うたってください」などと煽るなかを凍りついたままでいるのも失礼なので、
「「昴」なんかよりも、もっといい歌がありますから」
とクラシックギターで弾くには手ごろな「知床旅情」を歌ったところ、やはり、外国では知名度のない楽曲だったものなのか、申し訳程度の拍手をいただきました。
もし、あの時にピチット将軍(当時は国軍ナンバーツー)のリクエスト通りに「昴」を歌って、その後も老舗和食店でその姿をみる毎にそのお勘定を僕が任せてもらっていたら、今頃は僕の地位も山田長政の足元ぐらいまでにはたどりついていたのだろうか。
例えば、心筋梗塞の入院治療費は何もかも免除してもらえる、とか。
などと、そんな楽しいことを考えていた矢先に、タクシン先生がここにきて元気になったつもり なのか見苦しいまでに怪気炎をあげ、
「タイを後退させる五人の長老」
として、ピチット枢密院評議員を含む五人の退役軍人を名指しで批判した。
■タクシン氏が「宣戦布告」 国王側近を名指し批判 (「日本語総合情報@タイランド」3月30日)
ほか英語ニュースで多数、タイ語ニュースで無数。
かつての日本がそうであったように、枢密院批判イコール国王陛下への反逆、不敬罪と解釈されても言い逃れができない、あいかわらずのタクシン先生の軽挙妄動ぶりなのだけれど、数日前にはタクシン信者の陸軍大尉らによる枢密院顧問暗殺計画が露見 するなど、一般民間人の暮らしとは離れたところでまた、キナ臭い動きが急速にひろまっているようです。
暗殺を計画していた連中は、
「ビジネスで競合する相手の代表として殺すつもりだった。枢密議員であることは知らなかった」
と容疑を認めているけれど、最初の言い分が罷り通ってしまうことのほうが、タイで仕事をしている外国人にとっては大変におそろしいコトだと僕は思いました。
■タイ国王顧問暗殺容疑、陸軍大尉ら4人逮捕 (「日本語総合情報@タイランド」4月8日)
ほか英語ニュースで多数、タイ語ニュースで無数。