カラスの巣作り ~帰るべき家のある平和~
武蔵野は、
歴史ある原野。
欅の大木が多いことは
前にも書いた。
だけど、
歴史を見つめて来て
残っている大木は
欅だけではない。
この木がなんだかお分かりだろうか。
高さ30数m。
枝ぶりから、
欅でない事はすぐわかる
この木は、
枕崎台風、
室戸台風と合わせて
死者・行方不明者約5000人、
負傷者39000人と言われる甚大な被害を出した、
昭和の3大台風と言われる
1959年の伊勢湾台風で
木の半ばから折れ、
その時に、
高さが半分になったらしい。
50年ほど前にそうだったのだから、
この木の歴史を遡れば、
200年くらいは経つのではないかという。
なんという名前の木?
国分寺市には、
個人の自宅の敷地内のある
歴史的な大木に対して、
保存樹木と言う制度がある。
それに指定された大木は
めったやたらと切り倒してはいけない、と
行政が強制する代わりに、
その保存にかかわる経費を
少しだけ支給する制度であるが、
その金額は、
秋口に
膨大な落ち葉を掃除する費用にも満たないと聞くが、
大地主であればこそ、
それを、
何も言わずにこなしてくれる。
行政が
住民におんぶに抱っこの制度ではあるが、
そのために
歴史的な大木が今も生き残っている。
その木の上には、
カラスの巣。
この保存木を管理する地主に聞けば、
一昨年に巣を作って子供が巣立ちしたが、
昨年は
その巣は、
バラバラに崩れ落ちて
その残骸が下にうずたかく積もったという。
ところが今年は、
また作りだした。
時期になると、
きっと親鳥がうるさくなる、と
その地主は言う。
その、
巣作りをしているカラスが、
時々大木の周りを舞う。
巣に落ち着いては
ちょっと顔を出す。
木も、
芽吹きの時を迎えているので、
このカラスがヒナを孵す頃には、
巣はきっと新緑に覆われて
周りからは見えないかもしれない。
このカラスの夫婦は、
今年また
新しい家をこしらえて、
ゼロからのスタートを切った。
自然は、
いつでもこのように
ゼロからのスタートである。
震災で
なにもかも無くした人たちが、
人であればこその知恵と
そして助け合いで、
なんとか
ゼロからではない、
厳しいマイナスからのスタートではあるが、
なんとかスタートしてもらいたいと、
切に思うこの頃である。
機会のあるたびに
支援金も義援金も
拠出していきたい。