ー臣ー

そのあとすぐにタカヒロさんから
連絡がきて
飲みに誘われた









タ「今月中にはスタンドやめるんだろ?」




居酒屋の個室で二人で飲んでいた





臣「ま、辞めるっていっても
親父の手伝いしてるだけなんです

今、バイト募集かけてるんで
それが決まり次第って感じですかね」



タ「色々と話は進んでるからな来月から忙しくなるぞ」



臣「はい!」



タ「身辺整理しとけよ、色々と」



臣「身辺整理?」



タ「そりゃそうだろ、お前デビュー控えてんだぞ

悪い仲間とか、女とか色々だよ」



臣「悪い仲間って(笑)もう、そんな歳じゃありませんよ」



タ「彼女は?どうすんだ?」



臣「どうする…って…アイツ、まだオーディション通ったって話も知らないですよ」



タ「デビューの話してねーの?」



臣「あ、いや実は喧嘩してて…連絡とってないんすよ」



タ「そのまま別れちまえば?その方が身軽で
いいだろ?」



臣「それは無理っす」



タ「なんだよ、入れ込んでる女なの?」



臣「入れ込んでるってゆーか…」




タ「ま、今時彼女がいる芸能人が珍しいわけじゃないからいいけど、面倒な事にはなるなよ」



臣「はい、わかってます」



タ「なぁ、今度会わせろよ」




臣「…会わせるって?」



タ「臣の彼女に。見極めてやるよ
臣に相応しいのか」


臣「えー…」


女好きのタカヒロさんに
合わせるのはちょっとな…



タ「なんだよ、えーって(笑)
お前の彼女に手ぇ出すほど飢えてねーし
俺と同じくらい女好きな臣ちゃんが
入れ込んでる女見てみたい」


まぁ、大丈夫か…な


タ「二人きりで会わせろってわけじゃねーよ
あ、なんなら今呼んでよ」


臣「今っすか…?
たぶん具合悪くて寝込んでると思いますよ」


タ「寝込んでるって風邪?」


臣「いやー…わかんないすけど
今、中島に様子見に行ってもらってます
連絡しずらくて…」



タ「中島…?中島ってこないだ
合コンに来てたやつ?」


臣「そうです」


タ「…大丈夫か?」





臣「本当に寝込んでるかもまだわかんないですし」


タ「いやいや、そうじゃなくてさ…」


タカヒロさんが口ごもった



臣「な、んすか…?」



タ「いや…まあ、俺も安易なことしたから
言うのやめようと思ってたんだけど…」


めずらしくまどろっこしい言い方をするなと思った



臣「そう言われると気になるじゃないですか」



タ「うん合コンの時の話だけどさ…」


しぶしぶと言った様子で話始めた


タ「会計の時、俺の財布渡して支払いさせたろ?

細かくはわかんねーけど
5万円くらいかな…

抜かれてたんだよ」




臣「えぇ…」



まさか…


タ「俺も安易に財布渡したし
どーせもう会う事もないと思ったから
言わなかったけど…」

何やってんだアイツ


臣「すぐ、返すように連絡します」


テーブルに置かれたスマホに手を伸ばそうとした



タ「いや、もうそれはいんだよ別に」



それは…?


臣「まだなんかあるんすか?」




タ「みくって覚えてる?」



みく…?



臣「あー、合コンに来てたまつげバサバサの子ですね」


タ「そうそう…
中島がちはるちゃんにしつこくいい寄ってるってみくけら連絡きたんだよ」


臣「まじっすか…」


タ「でな、ちはるちゃんは臣が気になってたらしく
断る口実も含めて臣が好きだからと言ったらしいんだ」


ちはるってあの大人しい子か…



タ「で、それを聞いた中島はちはるちゃんに罵声を浴びせたらしい
てめーみたいなブス臣が相手にするかよって…」



…あの馬鹿…



臣「けっこうなクズっすね、アイツ」




だから今日あんな態度だったのか…?



タカヒロさんは俺を見て



タ「だから大丈夫かなってさ…」




それって…



臣「俺を逆恨みしてる…みたいな事っすか?」



まさか…な



今日の中島の様子が頭に浮かんだ











…まさか、な…



まさかまさかと言い聞かせるが
嫌な予感がよぎる






臣「…俺…」



タ「とりあえず今、彼女に電話しときな」




臣「はい…」







迂闊な事をしたと思った



俺は何を考えているんだ…


様子が知りたいとあせったばかりに


とんでもない事をしたんではないかと…


スマホを握りしめ
席をたった



臣「すいませんタカヒロさん、俺様子見にいってきます」


タ「俺もいくよ」


同時にタカヒロさんも席を立つ







まさかともしもが
頭をめぐり

嫌な予感しかしなかった