ーひろみー


朝の8時を過ぎたあたりから
何度か電話を鳴らしたが…出ない


家に行ってみようか…



でももし居なかったら?


もし女の人といたら?


もし…もし…




こうなるとマイナスなことしか
浮かんでこない




先走る妄想はどんどん膨らむばかりで
何も手につかない




結局昼前になり迷いながらも家を出る準備をした



もっかい連絡してみて
来なかったら
いってみようかな…と

どーせ出ないだろうと思いながらスマホを耳に当てた



呼び出し音が鳴り3コール目が終わる頃
ガサゴソという音とともに臣くんの声が聞こえた




臣「ん…もしもし…」




それは完全に寝起きの声だった




ひ「やっと、でた!」








臣「ひろみ?どうした、こんな朝早くに」



ひ「何いってるのよ、もう昼前だよ!何回も電話したんだから!」






臣「…わりー、気付かなかったよ…」



ひ「もう、夜も連絡ないし心配したじゃん!」



臣「あー、そっか。ごめんごめん」




安心と不満がいりまじって
苛立ちを臣くんにぶつけてしまった



これ以上言ったら疎ましがられるかも…



そう思って自分の中でブレーキをかける




ひ「まぁ、何にもないなら別にいいけどさ」



ほら、また…我慢しちゃった



本当はどこに行ってたのか聞きたい


誰とどこで何をしていたのか


何時に帰ってきたのか


なんで電話してくれなかったのか



言いたい事も聞きたいことも


いっぱいある






でも、臣くんの中の私はきっと
そんな小さな事をしつこく聞いたり、怒ったりしない









臣「めしでも食いに行く?」






本当はそんな気分じゃなかった
モヤモヤして言葉に出来ない 想いが
体の奥にあったけど



私は
ひろみを演じて 〝らしく″返事をした





ひ「うん!」