2012年11月30日
監視カメラの是非に関する議論。プライバシーが問題なのではない!
単純に画像を撮影するだけなく、被写体の顔を自動判別する機能を搭載した新しいカメラが増えているという。
読売新聞の報道によると、東京都江東区の大型商業施設「ららぽーと豊洲」では、施設運営会社が店舗案内のディスプレーに小型カメラを設置。画像認識ソフトを使って視聴した人の性別や年代を分析することでマーケティング活動に反映させているという。
記事では「専門家からルール整備が必要との声が上がっている」と結んでいる。
日本は世界的でもトップクラスの監視カメラ大国。
JRや地下的の主要駅だけでも6万台近くのカメラが稼動しており、全国では累計300万台以上設置されているという。
こういった監視カメラをめぐっては「監視カメラが市民のプライバシーを奪う」として反対する声もあがっているほか、ネットなどにおいても監視カメラの是非をめぐって議論が戦わされている。
だが不思議なことに、監視カメラの設置について問題提起される内容のほとんどが「プライバシーの侵害」に関するもの。
「ららぽーと」のケースは防犯用の監視カメラではないものの、記事のトーンはやはりプライバシー侵害の延長線上にある。
だがプライバシーを論点にしたカメラ設置の是非論は、カメラ設置がもたらす負の側面を矮小化させてしまう危険性がある。
繁華街にカメラを設置して不特定多数の人物を撮影したところで、そのカメラ映像から得られる情報などたかが知れている。大したプライバシーの侵害にならないことはほぼ明白であり、これが許容されないとなるとTVのニュースで街頭を撮影することも不可能になってしまう。
実際、カメラ設置に賛成する人の多くは、プライバシーを理由に反対する人を過剰反応と考えている。
だがカメラ設置に関する本当の問題は一般人のプライバシーなどではない。
警察が多数のカメラ映像を同時に収集し、恣意的にこれを分析することによって、冤罪が発生したり、政治的な権力闘争に悪用されることが問題なのである。
監視カメラの映像はソフトウェアと組み合わせることによって、その有用性が飛躍的に増大する。
顔認識ソフトを用いて多数のカメラ映像をリアルタイムに分析すれば、特定の人物に関するスキャンダルを容易に見つけ出すことができるようになる。
この分析結果が、自白の強要につながったり、政治家の権力闘争に利用される事態になれば、それは大変危険なことである。
分析結果の取り扱いに厳重なルールを設ける必要があるのはこういった事態を防ぐためである。
監視カメラを導入するのであれば、その運用に厳格なルールを設けることはもちろん、第三者によるチェック機能の設置も必要だ。
併せて証拠主義の徹底化や取調べの可視化といった司法改革とセットで議論することが望ましい。設置のデメリットを上回るだけの成果を客観的数字で示し、社会的なコンセンサスを得ることも重要である。
もし監視カメラの導入を推進する側が、あえて一般人のプライバシーという話題で話を矮小化させたいという意図があるのなら、それこそ憂慮すべき事態である。この問題に対する大手マスコミの姿勢は底が浅い。
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