これは昔作った楽器の写真と日記を元に、
現在からの視点を交えた『回想記』であります。
なので時系列はバラバラです。
それは、そう昔でもない2011年の冬の事。
太鼓仲間から巨大な塩ビ管が大量に手に入りますよという、
謎の電話がかかってきました。
それで僕はピンと来たのです。
ははーん、これは以前から
ドゥンドゥン(西アフリカの大太鼓)作りにむいた
巨大な筒状のものを欲しがっていた僕への太鼓の神からのプレゼントであると。
半信半疑で現場に到着してみるとそこには、本当に大量の塩ビ管が。
さて、実は本題はここからなのです。
ドゥンドゥンという太鼓は和太鼓(長胴太鼓)と同じ両面太鼓で、
25台分ということは、必要な牛の皮だけでも50枚。
ざっと必要な材料と、材料費を計算した我々は、
完全に正気にかえりました。
材料(太鼓25台分)
・牛の皮 (25台×2=50枚)
・牛の皮を引っ張るためのロープ(約1000メートル)
・牛の皮を挟むため鉄のリング (25台×4=100本)
ロープだけで1km。ロープにおいては僕はあまり聞いたことのない単位です。
まず、ロープは共犯者にロープ屋に連絡を取ってもらい
特注でサンプルを150メートル作ってもらいました。
これは、その後の手違いにてもじゃもじゃ。
そして、牛の皮です。これは、入手難易度が一番高かったです。
普段牛の皮の張り替えがあるときは
西アフリカから輸入された牛の皮を使用してますが、
この時必要であった牛の皮はなんせ50枚。
色々と考えた結果、予算の都合上
アフリカからの輸入はパス。
今回は、屠畜場に連絡を取ってみました。
怪しい人だと思われたのか、何度か断られかけましたが
ここは、我々にとって最初で最後の砦。
25台分の胴を切り出した後だったこともあり、
簡単に引き下がるわけには参りませぬ。
怪しい者ではなく、太鼓を大量に作るのに必要である旨を説明すると、
こころよく1頭単位で売っていただけることに。
そして、いざ屠畜場へ。ホルスタイン・黒毛和牛の皮を見せてもらいました。
カバンに入るかなと思って、電車でゴミ袋と小さなカバンを持って行ったのですが、
大笑いされました。
爆笑です。そうです。大爆笑されたのです。
というのも無理はなく、牛の皮はあなどれませぬ。
黒毛和牛1頭の皮は車(ハイエース)1台分位の大きさ程もあり、
ホルスタインに至っては、そのさらにひと回り大きかったのです。
そしてその重さ、皮だけで約40kg。
当たり前ですが、臭いもすごいです。
いろいろ悩んだ挙句、食卓でお馴染みの黒毛和牛の雄の皮を譲っていただきました。
臭いがもれぬように袋を何重かにしてもらいましたが、
電車で持ち帰るのは正直キツかったです。 (色々な意味で)
●皮の裁断作業。
塩漬けにされた牛の皮を、それぞれ太鼓の大きさにカットします。
この時点では、皮は柔らかいので、
ジャキーン。
今回は、1頭から口径の小さめの太鼓用の皮を
これで、材料は全て整いました。
ここからは、組立の作業になります。
まずは、塩ビ管のままでは味気ないので、胴のペイントから。
科学の臭いがすごいです。