施設からの脱走について 前編 | はばたけ! 養護施設出身者

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養護施設で虐待を受けて育った者が、その後、社会で生きて行くために歩んだ記録

以前にも少し問い合わせがあったのですが

虐待を行う職員に反抗しなかったのですか

という疑問を頂いた事があります。

これについては、まず反抗する子は居ません。


児童養護施設に入ってくる子で、中学生から入ってくる子というのは、あまり多くありません。

ほとんどの子は、小学生それも低学年位までで入ってくる子が多いです。

以前にも記事にしていますが、職員からの虐待は、この抵抗する力のない低学年のうちに、徹底して行われるため、中学生の頃には、職員に対する絶対的な恐怖を植え付けられてしまっているのです。

その私たちが唯一できる抵抗が、脱走になります。

ただしこの脱走についても、捕まれば虐待が待っていましたし、私の居た施設の場合は、3度目の失敗は自動的に教護院への送致になっていました。 

2回目はグレーゾーンで、1回の脱走で、教護院に送られた子は居ません。


この脱走については、大人数による集団脱走ができれば、世間にそれなりにインパクトを与える事ができると思い、私たちの施設でも計画が持ち上がった事はあるのですが、私たちの場合は失敗に終わっています。

理由は簡単で、人数が多くなればなるほど、それらの計画は施設に居る他の子にも伝わりやすくなります。

そして施設の中には、職員に気に入られる事で、施設の中での生活を快適にしようと考える子も、少なくありません。

実際、この計画などを職員に報告した者は、施設の中で表彰され、チョコレートやお菓子といった物を受け取っていました。


そういった事もあるため、私の居た施設では脱走は、本当に仲の良い信頼が出来る者同士か、単独による事が多かったです。

つまり一人の単独か、二人での脱走ですね。 3人以上のパターンは9年間の間に1度あったかなかったかという程度です。それ位、珍しい事でした。

あと男女といったように、性別が違うパターンもなかったですね。

それと、私たちのように帰る家を持たない者で、脱走に踏み切った者も私の居た施設では居ません。


脱走自体は比較的簡単で、児童養護施設は鑑別所などと違い、塀に囲われているわけではありませんから、逃げようと思えば好きに逃げる事ができます。

パターンとしては、学校に行くふりをして、そのまま行方をくらます場合。

学校にいった帰りに、そのまま居なくなる場合。

外出の日を狙って、居なくなる場合。

そして、就寝後の朝までに居なくなる場合。

といったパターンなのですが、やはり夜中が圧倒的に多かったです。

季節的には、暖かい時の方が楽に思われがちなのですが、冬も意外と多かったです。

何故かは、また次回に説明します。


脱走で捕まらずに、そのまま行方不明となった者は、私tのいた施設では居ません。

多分、全国的にもほとんど居ないと思います。

ただし9年間の間に一組だけ、捕まらなかった者は居ます。

なぜ捕まらなかったのに行方不明となっていないかは、これも次回に説明します。


もっとも、以前の記事を読んでいる方には、お分かりになると思いますが。

長くなるので、今回はここまでにしますが、今回次回に説明とした部分は、できれば施設の子の心理状態を、皆さんにも考えて欲しいと思ったからです。

ただ出来事を羅列するのではなく、

何故そうなったんだろう

と考えて貰う事で、私たちの心理を、皆さんにも理解して貰えるかも知れないと考えてです。


意外と長くなりそうなので、とりあえず今回はここまでとさせて頂きます。