いろいろ批判はあったようですが、まず、やぐら投げと、猫だましで勝利を収めた、横綱白鵬の取り組みを二番続けて見てみましょう。
        白鵬 VS 隠岐の海
     白鵬 VS 栃煌山   横綱白鵬を称して、相撲史上最高の横綱の一人、 という表現ではなく、谷風、双葉山、大鵬を越えたまさに、史上最高の横綱とたたえる人は多い。記録に関していえば、白鵬が達成していないものは、連勝だけだと思われます。

確かに双葉山の69連勝は、とてつもなく偉大で、70連勝を達成するには、白鵬をもってしても、100年以上は、かかるだろうという数学者もいます。
 
   谷風.....................双葉山............大鵬................................ 白鵬
優勝回数については、既に達成してしまったし、横綱になって、8年ほどでしょうが、おそらくその勝率は、大鵬を上回る9割近くをほこるでしょう。大雑把に見て640勝70敗といったところでしょうか。平均して一場所、13.5勝、1.5敗くらいの成績を残しているはずです。   その割を食っているのが、日馬富士と鶴竜で、なかなかの実力があるのに、白鵬の存在のために恐らく、横綱になって、11勝4敗に満たないペースではないでしょうか。大鵬でさえ、12. 5勝2.5敗くらいでしょう。史上最も負けない横綱であることは、間違いありません。

  他のスポーツ選手と比較すると、白鵬は、世界の王選手、8年間も王者を守ったテニスのフェデラー選手に肩を並べるレジェンド的存在になったと言っても過言ではないでしょう。
  王選手.........................................フェデラー選手

  さて、最初のやぐら投げですが、恐らくかつての把瑠都と同じくらいの体重を誇る隠岐の海空中に釣り上げ,うっちゃるように、やぐらで決めてしまいました。1960年頃の、初代若乃花のやぐらも豪快でしたが、当時、120kg以下の力士も多く、170kgを釣り上げて投げ捨てた白鵬は、あの伝説の雷電為衛門を彷彿とさせるものではないでしょうか。 恐ろしいほどの力と、下半身の強靭さをひしひしと感じさせます.
  初代若乃花................若乃花釣り出し...雷電為衛門
 
そして、打って変わって超可愛らしい猫だまし、後ろ向きになった栃煌山を、送り出しにしようとすれば出来たのですが、一呼吸おいて再び、猫だまし、万全な格好で寄り切ってしまいました。まあ、演出はありますが、年に一二回は、こういう愉快な取り組みもあっても許されると思っています。北の湖理事長は、もし負けたらと怒っていたようですが、それはそれで面白いのではないでしょうか。  

よく、横綱相撲といわれます。白鵬の場合は、押し投げとも多彩でほとんど横綱相撲に徹しています。軽々と相手を転がしてしまう上手投げ、腰を落として万全な体制で寄り切る姿は、一つの型にさえなっています。しかし、スーパーマンではないのですから、一場所に一、二回は、立ち合い変化で、出し投げを打つような相撲もあっていいと思います。このような相撲も取る場合もあるのだぞと知らしめておくのも立派な戦略だと考えます。

  白鵬は、決して100%従順な横綱では、ありません。力士の八百長、ドーピングによる危機の時代も一人乗り越えてきたのですから、気の強い頑なな面もあるでしょう。しかし、朝青龍とは違って、その振舞に十分自己抑制が効いています。インタビューで、頑張ります、精進します、一辺倒ではなく、維新の相撲の歴史で、大久保利通を引用して自分の考えを主張したかと思う一方、舞の海さんが、もはや白鵬の時代ではないと宣言したその場所に、優勝してしまい、そのインタビューで「そんな寂しいことを言わないで」と切り返したのには、ユーモアのセンスの良さを微笑ましく感じました
とにかく、彼は、少しクールないいやつであることは間違いありません。