4年越し、蔵の二十二神像の完成。 | 震

4年越し、蔵の二十二神像の完成。

さて、毎度のごとく前置きが長くなりましたが本題となる『蔵の二十二神像』です。途中何度かのトラブルもありながら6月29日無事完成となりました、トラブルは主に虫の関係です、毎年のことですけれど。そして恥ずかしながらここ数年、出張制作が予定通りの期間に終わった事がなかったので、これは当たり前のことですが自分にとっては非常に大きな出来事です。早く新居の工事も再開しなければならず切羽詰った環境のおかげでもありましたが、毎度こうやってきちっと終わらせたいものですね。

image(※最後の1面、『本の神像』の描き始め時。)


それにしても足掛け4年、のべにして8ヶ月近くこの蔵にこもっていたことになります。いよいよ最後の一面にさしかかる頃には感慨深いものがありました。
もはや10年前のことになるのですが、日本縦断の歩き旅以降こういった長期計画の場面で毎回同じことを思うのです。波照間島から歩き始め、路上で絵を売りようやく鹿児島本土にたどり着くのに2ヶ月、それでもまだまだゴールと決めた宗谷岬どころか三日先も見えない毎日。いつになるかわからない最後の日を思い30kgの荷物を背負いながら蟻のように歩き続けました。そうこうしてるうちに到着するのですね、いつかは。終わってみると案外ドライで、歩き旅後に一番やりたかったのは(もう歩きたくないので)自動車の免許を取ることでした。

今回もそうですが、4年前のただ紙を貼っただけの空白の蔵は自分にとっては完成後と同じくらい身震いするような空間だったのです。一度完遂を決めたことに関しては、先の見えない中で想像する完成の形がモチベーションとなり、何よりの楽しみとなります。引き続き今の私にとっての新たな長期計画は現在工事中の家だったりしますが、やはりしんどい以上の楽しみがあります。
一歩一歩の小さな過程を楽しめるようになってしまうと、もはや生涯達成できないかもしれないビッグプロジェクトでもいいのではないかとさえ思ってしまうのですが、、、そんなことをしていたら生きていけないので控えますが、、、、やはりそれも面白いのでどこか片隅でひっそりと続けていきたいなとかも、考えています。


話が脱線しましたが『蔵の二十二神像』は余裕を持って6月29日午前完成、蔵の中にあったお膳と器(絵のモデルになった物達)に山本さんのお米・塩・水・白馬錦(地酒)・稲穂を頂いてお供えさせていただきました。今回は4年越し、たくさんの方々に協力してもらったこともあり、最後の落款入れを夕方『落款式』というかたちで執り行わせていただきました。

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(※蔵の前田敦子こと不動のセンター土偶ちゃんの前で。)



農作業の終わる山本さんの帰宅を待ち、今回の制作機会をくれた原始感覚美術祭主催の杉原さん・長期滞在で6月半ばから滞在しているオランダ人作家のヴィムさん、友人達・実行委員の皆様、新聞記者さん達、そして山本さんご家族、たくさんの方々にお集まりいただき最後の落款を入れさせてもらいました。その後は蔵の神々に感謝を捧げ、白馬錦で乾杯。西丸館に戻り、諸々力が抜けて酔っ払い。翌日は予想通りの二日酔いとなったのですが、なんとか帰宅時間までに看板や案内図の制作まで間に合いました。今後様々な使われ方をしていくであろうこの蔵ですが、今はホッと一息ですね。

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(※床下の部分補強作業。)

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(※廃材で作った看板。文字はやはりうまく書けなかったので8月に書き直したい。二枚目は毎年、扉が重すぎて鍵がかかっていると思ってしまう方がいらっしゃるそうなので扉の開け方案内、コツは腰を落とすことです。最後は蔵の環境維持のために設置の募金箱です。)



ここは神社でもお寺でもないので手厚く保護などはされておりません、普通の農家さんの蔵です。しかし私が心から尊敬してやまない農家さんの蔵です。一般公開は今のところ美術祭開催中の8月1日からですが、それ以外でも見ることはできます、案内しますのでその際はご一報下さい。この蔵は既に築100年、あと何十年、何百年もすれば土に還ってしまうでしょうが、少なくとも私達が生きている間くらいはずっとここにあるのではないでしょうか。物達も今は使われていなくても、昔もこれからもずっとここにある、大切にしたい日常です。管理された特別な場所ではなく、日常の中にこの『蔵の二十二神像』があることを非常に心地良く思います。


毎年完成した面をブログで公開してきましたが、なるべく現地で見てほしい事と、8月に本格的に撮影後来年春を目標に画集を作る予定があるので、今回は各面一部づつを公開とさせていただきます。できればお近くの方は是非8月~9月の開催期間に足を運んでもらえると嬉しいです(^^)ではでは一部を↓

鋸の神像(部分)

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豆絞り器の神像(部分)

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傘の神像(部分)

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バケツの神像(部分)

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電灯の神像(中央額装部分と周辺部)

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糸巻き器の神像(部分)

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籠の神像(部分)

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本の神像(部分)

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(※最後の落款。落款式の様子は地元新聞3誌に取材していただきました。)


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(※今は雨漏り対策のため一時的にバケツがおいてあります。)


年々少しづつ絵の変化がありますが、今年は2年目と3年目の中間くらいの雰囲気、形はシンプルでかつ色調は鮮やかに、といった雰囲気でしょうか。

ちなみに私は8月21日(金)~25日(火)に滞在する予定です。23日に完成祭を開催いたしますので、次回の更新で告知させていただきます、宜しくお願いします。
4年間どうもありがとうございました。