よこやま信一公式ブログ
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福島漁業応援団

ALPS処理水の処分方法は2021年4月に2年後を目途に海洋放出すると決まったが、この決定以前から政府の「ご意見を伺う場」や復興副大臣として関係者との意見交換を積極的に行ってきた。処分方法の決定後もALPS処理水の処分の着実な実行に向けた関係閣僚等会議ワーキンググループの一員として関係団体との意見交換を行ってきた。これらを通じて実感したことは、福島県の水産関係者の中で一番苦しんできたのは仲卸の方々ということだ。福島県で行われてきた試験操業の水揚げでは商売として扱う量が少なすぎるのだ。

 

仲卸業者の皆さんの意見は、10年かけて取り戻した今日の経営がALPS処理水の海洋放出によって再び風評に晒されるのではないかとの不安や東京電力に対する不信感であった。誰一人取り残さないとの思いのもと、仲卸業者に対する支援の姿勢を復興庁としてしっかり見せていきたいと考えた。そこで、福島県産の魚介類を取り扱う意思のある都内の飲食店を選定し「福島漁業応援団」を立ち上げることにした。

 

具体的には、新ハンズオン支援事業を活用して販路開拓を行うことにし、まず、コロナ禍ではあったが専門家が東京都内で福島県産の魚を取り扱う意思のある飲食店を選定。2021年9月頃から選定された飲食店において福島県内の仲買人から提供された魚介類を使って新商品を開発。10月からは試験的に新商品を提供するテストランとフィードバックを行い、12月には本格的取引を開始する予定だ。

 

10月から緊急事態が解除され、徐々に飲食店での日常が戻りつつある。今後、福島漁業応援団の取り組みが順調に進むよう見守っていきたい。

浜通り地域勉強会

2020年12月に若松謙維参議院議員からいわき市で若手経営者の集まりがあるので参加してもらいたいとの連絡があった。行ってみると、原子力災害被災12市町村といわき市の若手経営者の会合で、会の名前は「HAMADORI13」と言い、その代表はこれまでも復興事業に積極的にかかわってもらっている吉田学さんであった。「13」には様々な思いが込められていると感じた。いわき市の経営者と言っても12市町村からの避難者ばかりだからだ。

 



HAMADORI13は、浜通りの青年が中心となって地域連携を図りながら持続的な地域発展に貢献することを目的とした団体だ。メンバーの一人ひとりと挨拶を交わしながら、復興への思いや経営内容を伺った。経営者としての彼らが健全に成長することは、復興推進に貢献することになると思い、経営勉強会の開催を提案した。

 

復興庁で検討し、福島相双復興推進機構(官民合同チーム)と共催で経営ノウハウ等事業に役立つ情報共有を行う勉強会を開催することにした。HAMADOROI13だけを対象とすることはできないので、浜通り地域で事業を行っている経営者やこれから創業される方を対象とした。

 

第1回は2021年5月に中小企業基盤整備機構の中小企業支援アドバイザーの立石裕明氏を講師としてオンラインで開催した。2回目は2021年8月にroomsエクスペリエンス・プロデューサーの佐藤美加氏を講師としてオンラインで開催した。今後も続けていくので、対象地域で興味のある方は是非参加してもらいたい。

EU等の輸入規制の大幅緩和

日本産食品の輸入規制を行っているのは現在14か国・地域(2021年10月5日)。これらの規制緩和を求めるため、復興副大臣に就任してから大使館訪問を重視してきた。これらの国々の農業大臣らと直接交渉するのが最も良いのだが、コロナ禍によって海外渡航が難しくなってしまった。政務においても人間関係のある大使や書記官らにお会いすることはできるが、政府の代表として駐日大使と会談するのとは重みが違う。この間、副大臣として訪問した大使館は、サウジアラビア、ノルウェー、ギリシア、ロシア、米国、EU代表部、中国、ケニアがある。なかでもEU代表部のフロア大使には2回お会いしている。

 

科学的根拠を考慮せずに輸入規制を行っている中国、韓国、台湾、香港、マカオを除くと、EUと米国の輸入規制は丁寧な説明を繰り返せば必ず規制緩和できると考えてきた。これら2か国・地域が規制緩和に動けば英国、台湾、ロシア、EFTA(ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン、アイスランド)などへの影響も大きい。そこで、環境意識の高いEUの影響力を考慮して、EU代表部への働きかけを復興庁として強めるよう努力してきた。事務レベルでの交渉はもちろんのこと、副大臣としてフロア駐日大使との会談を強く要請した。

最初の会談は、2020年10月に行った。セシウムなど有害な放射性物質を含む食品が流通しないことや、福島県では風評対策のために厳重な検査を行っていることなどを説明。フロア大使は、科学的な根拠を示せば規制緩和を検討するよう本部に伝えると言ってくれた。これまでも許容値を超える食品が流通しないことはデータで示してきたのだが、あらためて資料を提出すると答えた。大使からはALPS処理水の処分についての問いかけもあった。私は丁寧に説明したのだが、大使は「汚染水」と言う表現を使い続けたのは残念だった。

2回目の会談は2021年5月に行った。フロア大使の理解は1回目の会談よりも格段に深まっており、6月に輸入規制を取り扱う常設委員会が開かれるとの情報提供があった。和やかな雰囲気の中、規制緩和に向け検討が進んでいることを感じさせる会談となった。そして、ALPS処理水に話題が移ると、今度は一貫して「処理水」と言ってくれたのは嬉しかった。

 

2021年9月21日にEUは、日本産食品の輸入規制の見直しを発表した。これにより福島県産タケノコや栽培されたきのこ類の放射性物質検査証明書が不要となり、過去の貿易実績に照らすと放射性物質検査証明書の発行はゼロになる。加えて、産地証明書の発行は約7割削減される見通しとなった。EFTA諸国もEU同様の改正が予定されている。

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