東京エレクトロン、中計達成「時期遅れる可能性も」 成長投資は緩めず

 

顧客の投資見直しや中国での半導体製造装置の販売減速などを背景に、2026年3月期は期初予想から一転、最終減益を見込む

27年3月期までに掲げる業績目標の達成時期も遅れる可能性が出ている。中長期で人工知能(AI)半導体の需要が拡大するとの見方は変えず、成長投資の手は緩めない。

将来の「1兆ドル(約147兆円)の半導体デバイス市場への成長に向けては順調。米中の関税政策などを注視し、前工程向け装置(WFE)市場の動向を見極めていく」とした。

一方、27年3月期までの現中期経営計画の目標については「WFEの動向により達成時期が多少遅れる可能性もある」と述べた。26年3月期の世界のWFE市場は前期から5%縮小すると見込んでいる。

 

 

来期は売上高3兆円以上、売上高営業利益率35%以上、自己資本利益率(ROE)30%以上を掲げるものの、売上高と営業利益率の進捗が遅れている。市場予想でも来期の売上高は2兆6101億円営業利益率は27%と目標を下回る。

背景には複数の要因がある。まず中国での装置販売減速だ。利益率の高い中国向けの売上高比率は今期は30%台半ばと前期の42%から下がり収益を圧迫する。長期記憶に使われるNAND型フラッシュメモリーの投資抑制も響く。スマートフォンやパソコンの需要低迷でNANDの需給が緩み採算を意識したメーカーが生産を抑えているという。

次が先端ロジック半導体を手がける顧客の投資計画の修正だ。「26年1〜3月期に装置需要が増えるとみていたが遅れている」(川本氏)。最先端分野は技術面で量産が難しく、台湾積体電路製造(TSMC)など一部を除き苦戦しているようだ。

川本氏は「27年3月期後半に出るとみられるAIサーバー向けの半導体需要は伸びるが、個々の顧客の状況で短期的に落ち込みが出るのは否定できない」と話した。

 

さらにAIのデータ高速処理に不可欠な広帯域メモリー(HBM)の投資計画の見直しが重荷になる。現在は次世代品となる「HBM4」への移行期に当たり、生産技術や歩留まりが改善したメーカーが一時的に製造装置の購入を絞っている。ほかに、メモリーの一種で一時記憶に用いるDRAMの投資遅れも響く。

川本氏は、今期の業績の落ち込みは一時的といい、数年先の中長期動向については成長が続くとの見方を示す。「日本で売上高3兆円を超える規模で営業利益率が35%以上ある上場企業はほぼいない。新製品を展開するなどして、同計画を達成したい」と強調した。

 

成長投資は続ける。AI半導体の需要拡大に備え、今期の研究開発費は2950億円とし、売上高研究開発費比率は過去10年で最高の12.6%を見込む。川本氏は「同比率は競合も高い。成長期待の大きいエッチングや成膜分野を中心に投資を続け、シェアを拡大したい」と話した。

 

 

2025/9/24

武者陵司「再度顕在化した日本株持たざる恐怖FOMO」

この記事の重要項目だけを抜粋して記録しています。全文を確認するためには表題のリンクから原文へ跳んでください。

 

 (1)最大の投資主体であった外国人投資家は、昨年来世界主要市場で最も値上がりした日本株比率を高めるどころかほぼすべてを売ってしまった。植田ショック時の昨年8月から今年4月までに12兆円を売り越し、いま慌てて買い戻しているが、ようやく売却分の半分が買い戻されたところである。

 (2)個人投資家ではNISA(少額投資非課税制度)改革が始まり投資ブームが起きている。2025年1~6月で8.8兆円が買い付けられた。年間では20兆円、前年比4倍増のペースである。いまのところ買い付けの大半が海外投信だが、日本株へのシフトが起きるだろう。

 (3)事業法人は昨年来、自社株買いを大幅に増加させている。PBR(株価純資産倍率)1倍以下の是正を求める金融庁・東証の要請、現金の持ち過ぎがM&Aターゲットにされることの恐れ、最も有利な余資運用は自社株であること、などが理由である。東証データによると、企業の株式純取得(1~8月)は、2023年2.8兆円、2024年4.5兆円、2025年7.6兆円と前年比7割増ペースが続いている。

 (4)年金など機関投資家もインフレ定着、金利上昇の下で、日本国債投資比率の引き下げと株式シフトを余儀なくされている。政府による国家公務員共済組合連合会(KKR)など公的年金運用の積極化の要請などが浸透していく。

 このように全ての投資主体が日本株に向かって押し出されている。日本で株式主体の資金運用体制が怒涛の勢いで始まっていることは疑いない。昨年の植田ショック、石破ショック、今年のトランプ関税ショックなど相次ぐ急落の度に、足止めを食らった日本株投資家は再度FOMO(日本株を持たざるリスク)を思い知らされていることだろう。

 

Happy Trading !!

2025/9/21

Terra Drone<278A>、ドローン運航管理大手の米国アロフトを子会社化

Terra Droneは、持ち分法適用関連会社の米Aloft Technologies, Inc.(アロフト、デラウェア州)を子会社化し、世界最大級の市場である米国での顧客基盤を強化する。アロフトは米連邦航空局(FAA)認定のUTM(ドローン運行管理)業者として、米国で84%以上のシェアを持つ。同社は売上高3億7400万円、営業利益△1億1800万円、純資産△2億4400万円(2024年12月期)。

取得価額は約13億3000万円。2025年12月末までに取得予定。

 

現在、Terra Droneはアロフトの株式35.3%を所有している。アロフトの株式3分の2以上を既存株主から取得した上で、特別目的会社のTerra Drone USA, Inc.との逆三角合併により完全子会社化する。

 

Terra Droneは2023年7月にベルギーのドローン運行管理会社Unifly NV(ユニフライ)を子会社化しており、3社で「低空域経済圏のグローバルプラットフォーマー」を目指す。

 

2025/9/16、このニュースが発表されました。この件の重要性について調べた点をまとめます。

 

まず、アロフト社の「FAAにおけるUTM業者としてのシェア率が84%に達する」という点についてですが、これはアロフトが米国の制限空域内における飛行許可申請(空空域許可システム「LAANC」)の窓口になっている割合を示しているだけであって、言い換えれば、FAAの代行で各方面に許可を与える権限を有しているだけなので、収益性はほとんどないそうです。

制限空域の許可ですからね、民間レベルでの利用なほぼなさそうです。

 

ところで、アロフト社の強みはもう一つあります。それがUTM(運航管理)です。

ドローンと有人機の統合管制を目指すリアルタイム管理システム「Air Boss」を発表したのです。これは、FAAが予測する300万機以上のドローン登録に対応するため、人間の管制官では対処できない規模の空域管理を自動化するものです。

つまり、エアロカーやドローンを飛行させる低空域運行網の管理をアロフト社が担う土台が完成したわけで、米国が業務を委託することになれば、とんでもないインフラ企業が誕生することになります。

 

この展望は、テラドローン社が核心的に見据えているもので、同じく23年に子会社化したベルギーのUnifly社も同様の航空管制システムを構築しています。

私は映画ブレードランナーが大好きなのですが、あの世界で見られるようなスピナーが行き来する世界が実現した時に、その交通網をテラドローン社が牛耳っていたとしたら……夢が広がりませんか?

Happy Trading !!

国産AI開発を政府が支援へ、学習データ提供し資金面も後押し…アメリカや中国依存を懸念

 政府は自国のデータや技術をもとにした国産AI(人工知能)の開発に乗り出す。文章などを自動的に作り出す生成AIは米中が開発で大きく先行するが、海外製への依存は、データの海外流出や日本に関する誤情報の拡散を招く恐れがあり、安全保障上、問題視されている。学習データなどの開発資源を日本企業に提供してAIの開発を支援し、信頼性の高い国産AIの確立を目指す。

 

 総務省所管の国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)が20年近くにわたって収集した日本語データを提供し、AI開発企業プリファード・ネットワークス(本社・東京)が日本の文化や習慣、制度などについて信頼性の高い回答を出すAIを共同開発する。開発した国産AIは、IT企業のさくらインターネットが国内のデータセンターを通じて提供することを想定する。

 

 開発にあたり、良質な日本語データの整備や、傑出した能力を持つスター技術者の登用、開発インフラの提供などを、総務省や経済産業省が資金面などで後押しする方針だ。開発した国産AIは政府や自治体、企業が利用することを念頭に置く。AIの学習に使うデータの提供や、AIの頭脳となる「大規模言語モデル」の開発、データセンターの運営をすべて日本の企業や機関が担い、国内で完結する形で生成AIを開発、提供することを目指す。

 

 国内では米国や中国の海外製AIの利用が広がる。だが、海外製は学習データなど開発過程が不透明で、「日本として許容できないデータが学習されている恐れがある」(政府関係者)との懸念もある。

 

 海外製は英語のデータを中心に学習しており、日本の文化や歴史などの理解も不十分だとされる。AIの回答が開発国の主義や主張に影響を受けるという問題も指摘され、中国の生成AIディープシークに対し、自民党の小野寺政調会長が「尖閣は日本の領土か」と尋ねたところ、「尖閣は中国固有の領土」と答えたという事例もある。

 

 AIの海外への依存には一定の危険性があるとみて、政府は日本の文化や習慣、歴史などを踏まえて信頼性の高い回答を出すAIの開発を後押しすることにした。

 AI開発には大量のデータやコンピューター、優れた専門人材などが必要になるが、開発資源が豊富な米中が先行し、日本は後れを取っている。

 

 生成AIの性能に関する国際的な指標「アーティフィシャル・アナリシス・インテリジェンス・インデックス」によると、米オープンAIや中国アリババ系など米中のAIが上位を独占する。米中のAIを基盤に使う日本企業も増えており、海外依存に懸念が広がっている。

ポーカーを学べば、投資の実力が上がる?

そんな疑問を解消できる本書の中で、私が特記すべきだと思った点だけを掲載します。

本記事をお読みになって他の部分にも興味を持った方は、最後に掲載しているショップリンクから楽天ブックスにジャンプできますのでご利用下さい。

 

p28 論理的な戦略と確率的な思考が必要で、期待値を常に考えながらプレーする

p29 自分のカードは分かるけど、他のプレーヤーがどんなカードを持っているかは

   分からない。その状態でベットするかどうかを決断しなければならない

p32 利益を大きく伸ばして損失は小さく抑えるというのは現実的には矛盾します

   大きく儲けたければ大きなリスクを取らなければならない

p35 僕の場合、損切りのルールを徹底することより、下落しても喜んで買い増しす

    るような銘柄を、損切りしなくていい金額に抑えて投資する

    そもそも株価はその企業とは全く関係のない理由で下落することがある

    本来そこは損切りではなく、買い増しするポイントなんです。明らかに不当に

    安くなっているのは期待値がプラスな局面です

    損切りしなければならない状況に追い込まれたとしたら、単純に投資金額が高

    すぎるのであって、もっと少ない投資額だったら損切りしなくて済むはず

p37 見えている情報だけを手掛かりに見えていない情報を推測して戦う必要がある

p39 多くの人が負ける最大の原因はゲームに参加しすぎること

     手が弱ければあえて勝負に参加せずに降りることができる人が勝ち残る

p50 正しい行動をして負けてもそれは仕方ないことで、それでも期待値が最大にな

     る確率的に正しいプレーをしていれば長期的には勝てます

p54 本来は買っているときなら少しリスクを高めてもいいし、負けているときは慎

     重になるべきなんですが、逆をやる人が多い

p58 (木原さん手法)機関投資家、外国人投資家が勢揃いしている銘柄(優良銘柄)
     は避ける。時価総額が2桁~3桁億円前半しかない小型銘柄は勝ち易い

     強いプレーヤーは良い銘柄が割安になるとすかさず買ってくるからあっという

     間に株価が上昇してしまう。強いプレーヤーがいない小型は良い銘柄が割安で

     ゴロゴロ放置されていますよ

p68 (エミンさんストーリー投資)有望そうな企業を見つけたら、その企業が属する

     市場が長期的にどれだけ成長できる余地があるか、その市場で何%のシェアを

     取れるかに注目します

     市場が拡大する上にシェアも拡大できるシナリオがベストだが、市場が拡大す

     れば現状維持でも業績は伸びる

   (予想株価)市場規模が1000億、シェア10%の場合、時価総額が100億が適正。

     150億なら割高だし、50億なら割安だから2倍になっても良い=株価も2倍

     市場規模が1兆円に拡大できるなら株価は10倍になってもよい

     シェアを20%に伸ばせるなら株価は2倍を狙える

p81 インフレ経済下では低PBRは必ず是正される

p85 機関投資家は基本的に1000億円以上ある銘柄でないと買わない

     中小型専業でも100億円未満の会社には投資できない。

     2桁億円の銘柄は個人投資家の独壇場です

p86 大型株だと悪材料が出たら瞬時に株価に反映されてしまう点がハイリスク

     小型株でも反映はされますが、大型株ほど敏感ではなくさほど下落しない

p88 中小型株でも信用買い残が膨らんでいるとヘッジファンドのターゲットになる

p90 2割ぐらいの株価上昇は「確定で上がる」くらいの感覚で投資しています

     95%の確率で2割上昇、3%の確率で横ばい、2%の確率で下落するイメージ

p93 好業績にも拘わらず割安な銘柄はその理由を徹底的に調べます。その割安さが

     解消される可能性がどのくらいあるかが重要なので

     割安さを解消するカギになることもあるので大株主も調べます。買い集めてい

     る株主がいる銘柄は株価が吹き上がる可能性が高いんです

     板を見て、株価が少し下がるとすかさず買いが入ることが続いている銘柄は、

     買い集めされている可能性が高い

p94 現金保有率が高い銘柄、現金同等物を大量に持っていて有利子負債が少ない

     (又は0)という企業は買収対象になり得るし、アクティビストが 口を出してくる
     可能性はある

     保有株持ち合い解消などの動きも出やすいため、銘柄選びの際は注意

P96 (木原さん)板がスカスカな方が下落しにくいので、出来高はなるべく少ない方

     がいい。出来高が多い銘柄ほど資金が抜けた時に下落しやすいんです

     流動性がない方が下値リスクは少ないので、利益を出しているのに出来高が枯

     れているような銘柄で、将来の上昇が予想できるものはほぼノーリスク

     大株主は長期保有が前提で、出口は株価が大きく上昇した時であるのが大半

P97 「何%の上昇を期待できるか」よりも「何%下落リスクがあるか」の方が重要

P99 下値の堅い銘柄は上方向に動くにも時間がかかることが多い

P104 どんな会社でもPSRが1を割っていれば割安。そもそも企業は売上と同じ位の

    時価総額があってしかるべき

P119 自分が来期の営業利益は15億と予想している銘柄を、四季報が12億と予想し

   ていたらまだ業績上昇分が織り込まれておらず投資余地ありと判断できる

   逆に20億と予想されていたらすでに株価に織り込まれている危険水域かも

P120 四季報のコメント欄がネガティブ一辺倒になっている銘柄は底値圏、

    ポジティブ一辺倒のものはすでに割高圏と判断できることもある

p123 直感でいけると感じることがある。それは長年蓄積された経験値が潜在意識

   で呼び起こされて成功経験を思い出しているから。ただし、浅い経験ではダメ

   ただ、その直感は100%ではない。確率的論理的に考えるのが優先、直感は後

p135 割安な銘柄は大株主が売り続けて(持ち合い解消)割安になっていることが多い

p143 心理トラップ 疑似確実性効果トラップ プロスペクト理論

   損失を回避するために、実際には不確実な選択肢にも拘わらず、それが確実で

   あるかのように感じてしまう心理的な罠

   人が利益と損失を異なる方法で評価してしまう(フレーミング効果)

   利益局面では、人は不確実な選択肢(もっと上がる可能性)よりも、確実な選択
   肢(今得られる微益)を好む傾向が出る

   損失局面では、人は不確実な選択肢(もっと下がる可能性)よりも、確実な損失

   (今確定する損失)を避ける傾向が出る

   つまり、人は「損小利大ができない」

p146 損切りは減税効果の一つ。

p151 10バガーを目指すには、株価が2倍になったものを半分売って保有し続ける

p176 ブル相場でもベア相場でも儲けられるけど、イナゴは上でも下でも佃煮に

    されるだけ

    成長している良い企業にはまともな株主がついているから仕手化しない

p195 業績が大きく伸びてキャッシュに余裕が出てくると配当や自社株買いに回す代

    わりに関連会社の完全子会社化する動きが出てくる。株を100%持てばそれま

   で外部に逃げていた配当も全額受け取れる好循環に

p197 26年3月期に有望なのは【鉄鋼】【金属製品】【その他製品】【輸送用機器】

   増収率増益率が対前期比で大きく改善している場合、株価が強く反応する傾向

p204 ネットキャッシュが時価総額を上回っている場合、買収候補になり易い

 

 

以上、本記者が覚えておきたい箇所だけ抜粋した記事をご覧いただきました

感想を述べさせて頂くと、ご存知のとおりエミンさんは長期投資家なのでファンダ最重視、木原さんも中長期のファンダオンリーで低流動のミクロ株を狙うという独特な感性をお持ちの方なので、私とは投資スタイルが違っていて共感点は少なかったです

「サラリーマンで片手間に投資をかじっている」という大多数の個人投資家向けに書かれた内容だと思いました

Happy Trading !!

2025/8/12 緊急記事

8/11(月・山の日)の祝日明け、米国が下落傾向を示す中で、なぜ日本市場は買われたんでしょうか?しかも1,000円を超す急上昇

私はこれをアラートと受け取りましたが、実際に識者たちにはどう見えているんでしょうか?

株探の記事から今後の動向の参考になりそうな部分のみ抜粋しました。大見出しから元記事へ跳べますのでみなさんもご参考にどうぞ

【特集】日経平均が史上最高値を更新、青空圏突入し「乱気流」アラート点灯中 <株探トップ特集>

―米利下げ期待・関税の不透明感後退でユーフォリア、半導体関連の一角には出遅れ感も―

 日経が最高値を更新。米国の利下げ期待、相互関税の新税率で企業業績への影響の不透明感が後退し、売り方の買い戻しを誘う形で上昇に弾みがついた。

 短期的な急騰により青空圏に突入した日本株は需給面では真空地帯に差し掛かり、相場の乱高下に警戒が必要な局面となっている。

●コールが示す上値のメド

 3連休明けとなる12日、日経平均は前営業日比897円69銭高の4万2718円17銭で終え 、昨年7月11日につけた最高値を更新した。5営業日間の上昇幅は2400円超。取引時間中の高値は4万2999円71銭と、4万3000円まであと29銭となる水準まで値を上げた。

 株高の原動力の一つに挙がるのが、米国での利下げ観測である。FRBが年内に0.25%幅で2回以上の利下げを実施する確率は約86%。トランプ大統領によるFRBへの利下げ圧力が高まるなか、パウエル議長の後任人事を巡る報道も相次いでおり、中央銀行の首脳陣がトランプ氏の意向を汲む人物に置き換わり、FRBが利下げに傾斜するシナリオが現実味を帯びるようになった。

 トランプ関税による景況感の悪化が懸念される一方で、日本の上場企業による4~6月期決算では、米国関税に関して一定の前提を置いて業績予想を見直す動きが相次ぎ、株式市場において関税の負の影響はある程度は織り込まれる形となった。

 米国企業の4~6月期決算は全体では増益基調を維持し、今後は「トランプ減税」の恩恵を受ける企業が現れるとみられている。米国景気が底堅さを見せるなかで中央銀行が利下げに踏み切れば、マネーの向かう先は株式となり、日本株もその恩恵に与ることとなる。

 9月限の日経平均コールオプション(買う権利)をみると、日経平均の現在値よりも上の価格帯で最も積み上がっているのは、4万3000円、その次が4万4000円、そして4万5000円と続く。原資産の日経平均が4万3000円を上回った場合、コールの売り手が損失を抑制するために株価指数先物の買いに動く可能性があり、その際は日経平均は一段と水準を切り上げる形となる。

●昨年夏は急落劇、今年は?

 とはいえ日経平均のPERをみると、8日の段階で17倍を超える水準にあり、15~16倍を中心としていた過去の水準と比較してバリュエーション面でかなり割高な水準に位置している。「17倍台が許容されるには企業の業績予想が上方修正されるとの期待がないと厳しいものがあり、短期的には調整リスクが高い」との声がある。

 昨年の7月11日に日経平均は最高値更新後、8月5日までの1カ月足らずの期間で、終値ベースで1万765円の急落。日銀が利上げに動いた一方で、米国景気の先行き懸念が広がり、8月5日の1日の下げ幅は4451円と過去最大を記録した。この先経済指標などを引き金として市場の米利下げ観測が急速に後退した場合、センチメントが一気に冷え込むリスクもゼロではない。

 半面、株式需給の面では信用買い残や裁定買い残が大きく積み上がっているわけではなく、自社株買いも日本株の下支え要因となっている。真空地帯に差し掛かるなか、下方向だけでなく「アップサイドリスク」にも目配りをしなければならない局面では、今まで以上に機敏な投資行動が求められる。

●防衛・データセンター関連の物色は続くか

 過去1年間での個別銘柄の騰落率をみると

  • 後払い決済サービスのネットプロテクションズHD <7383> がトップ
  • GMOインターネット <4784> が続き
  • 3位にフジクラ <5803> が入った。

 2倍以上の上昇となった銘柄をみると

  • 防衛予算の増加による業績押し上げ効果が注目されるIHI <7013> や川崎重工業 <7012> 、三菱重工業 <7011
  • 三井E&S <7003> や古野電気 <6814> といった造船関連
  • スシローのFOOD&LIFE COMPANIES <3563> 、不動産向けDXのミガロホールディングス <5535> 、楽天銀行 <5838> など内需系も目立つ。
  • スタンダードやグロース市場では、アサイー商品のフルッタフルッタ <2586> が上昇率トップ、暗号資産投資のメタプラネット <3350> やコンヴァノ <6574> が上位に躍り出ている。

 意外にも上昇率上位に半導体関連株がない。レーザーテック <6920>に至っては1年間で42%安と逆行安。東京エレクトロン <8035>や信越化学工業 <4063> 、SUMCO <3436> 、タツモ <6266> も株価水準を切り下げている。エヌビディア<NVDA>が新値追いとなる一方で、日本の半導体株のパフォーマンスの低さが際立っている。
 EUV露光技術に代表されるような先端分野での装置需要に対して弱気な見方も足もとでは広がり、「積層技術関連など後工程の分野での需要の伸びにミートする銘柄は注目されているが、それ以外ではスマホ市場が拡大するシナリオが描けないなど慎重な声が出ている。

●短期的な調整が発生した場合に向かうべきセクター

 もし短期的な調整に見舞われた後、反転攻勢を見越して物色される対象としては、引き続き防衛AIデータセンター電力設備に関連する銘柄とみる向きは多い。
 加えて、政府による財政出動の期待感がある「上下水道を含めた建設関連株」への期待感も高い。

 建設は6月日銀短観でも良好な景況感が示されていたが、大企業の業況判断DIで建設をしのぐ高水準となったのが不動産である。オフィス賃料の上昇が続くなど事業環境は良好な状態となっており、日銀の利上げ観測が広がった際には押し目待ちの買い需要を集める可能性がある。

 不動産事業を抱える企業が多い鉄道株ではJR東日本 <9020> が国土交通省に運賃の改定が認可され、「資本効率の改善に取り組む鉄道会社も増えており、なかには来期にかけて増益の確度が高い銘柄もある」。
 内需株の一角に対する物色意欲も継続が見込まれる半面、半導体関連や外需株に対する投資家の慎重姿勢が解消に向かうには、なお時間が掛かるとの見方が優勢となっている。

 
いかがでしょうか?私個人としては「今、買い増すリスクは高い」と思いますし、10~20%の調整はある可能性が高いと思っています。ですが、その時期は予想よりも後ずれするかもしれませんし、ほとんど押さない可能性も消せません。
いずれにせよ、このまま進めば、9月中旬以降は買い場しかないとは確信はしています。Happy Trading !!

2025/08/10

◇「12万人が学んだ投資1年目の教科書」覚えておきたい点

p28 大損は一瞬で生じる。だから「稼ぐ」<「守る」

p32 基本姿勢は「利益をできるだけ増やし、損をできるだけ減らす」に置く

p38 ビジネスとして投資に取り組む

   「いい情報が得られれば儲かる」というのは誤解

   模範的な投資行動を繰り返せる者のみが安定して利益を増やせる

p51 トレードこそ再現性が高く、リスク管理がし易いルールが構築でき、最も堅実 

   に利益を積み重ねられる方法

   大切なのは、現在の株価と過去の値動き。トレードは現在起こっていることへ

   の対処でしかない

p56 大数の法則 確率的に有利な局面を発見したら繰り返す。それで絶対負けない

p63 チャートとは未来を予測するために見るのではなく、現状を正しく把握する

   ために見る

p64 塩漬けは絶対にしない 損切りはためらわない

   含み損が減るのを待つ<儲かる銘柄を持つ 方が早い

p86 トレンドを作るのは実需、うねりを作るのは時間制限のある投機筋

p119   ダウ理論 ※青ラインが重要

  1. 株価は全ての事象を織り込む
  2. トレンドは短期・中期・長期に分かれる
  3. トレンドには3段階がある
  4. 株価は相互に確認される必要がある
  5. トレンドは出来高でも確認できる必要がある
  6. トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する

p121 トレンドには上昇下降以外にも「勢い」を見る必要がある。勢いが衰えると

   短期筋はすぐ抜ける

p122 出来高が減少していても株価が上昇する局面はしばしあるが、それに乗って

   しまうと高値掴みになる可能性が高い

p125 ブレイクアウトは勝率低い。注文が集中する点を見極めることが重要

p151 リスク=変動幅 変動がなければ儲かることはない

   リスクは避けるものではなく、管理するもの

p177 ロスカットは機械的に 損切りは必要経費

p184 一般投資家が飛びつく頃には、トレンド初期に仕込んだプロの絶好の売り場

 

今回の記事はあくまで私が参考にできると見なした点だけをピックアップしています。

本書にはそれ以外にも多くの示唆や指南がありますので気になった方はぜひ全文をお読みください

Happy Trading !!

 

 

2025/08/09

◆ 騰落レシオが未来を描く?

 

あるアナリストが今後の推移を予測するのに「騰落レシオ」を確認すべきだと勧めていました。

 

「騰落レシオ=上昇銘柄数÷下落銘柄数X100」

なので偶然の要素が高いと思っていました。決算発表やら新製品発表やらで簡単に株価は動きますので、そこに意味はあまりないんじゃないかと。

 

そのアナリスト曰く、騰落レシオは通常「上限が120~下限が80」のその間で推移するため、行き過ぎた場合は要注意だと言っていました。

では、実際の騰落レシオを確認してみましょう。

2024年8月の植田ショック時をデータとして拾いたかったので、直近2年間のチャートで表示してあります。

 

 

なるほど、確かにチャートは80~120間に大半収まっています。

そして、130を超えた辺りで急落。

去年8月でも、今年の4月の関税問題時でもその傾向が見て取れます。

しかし、問題点は騰落レシオが下落に転じたところで、日経平均も下落に至ってはいないということですね

ですので、騰落レシオで日経平均の推移は推測できない

 

TOPIXの騰落レシオチャートも探したのですが、ちょっと簡単には見つけられない様子でしたので、ますます相関性の確認をできませんでしたが、少なくとも

  • 騰落レシオ138で高値圏
  • 日経平均41,820で高値圏
  • 夏季休暇で取引減少

という地合いによる下落の可能性もしばらくは視野に入れて投資に臨んだ方が賢明かと思います

Happy Trading !!

2025.07.28

毎日のように、政策保有株の排出や自己株式取得のニュースがあふれかえっていますね。

これって大きな材料ではなくても、長期的にはじわじわ効いてくる(トレンドを形成する)要因になります。

該当銘柄の保有を検討の際はご確認ください

 

政策保有株「売り出される側」ランキング(推定)

順位

売り出された企業名

売却元企業・グループ

売却額(推定)

備考

1位

アイシン

トヨタ、デンソー、豊田自動織機

約6,700億円以上

トヨタグループ内の持ち合い解消

2位

三菱商事

三菱電機、三菱重工、ニコンなど

約3,000億円以上

三菱グループ内の整理

3位

トヨタ紡織

デンソー、豊田合成、アイシンなど

約1,500億円以上

トヨタグループ内の売却

4位

三菱重工

三菱倉庫、三菱商事など

約1,000億円以上

グループ内株式の縮減

5位

三菱電機

ニコンなど

非公開(49銘柄売却)

大規模な整理

6位

KDDI

京セラ(第2位株主)

約1,000億円以上

京セラが1兆円超の保有株を整理中

7位

日本航空

京セラ(第3位株主)

数百億円規模

同上

8位

三井不動産

三井住友建設など

非公開

不動産系持ち合いの解消

9位

住友不動産

三井住友建設など

非公開

同上

10位

トヨタ自動車

東京海上HD、SOMPO、MS&ADなど

約1兆円以上(合算)

損保系の政策保有株ゼロ化方針


🧠 補足ポイント

  • 損保大手3社の売却総額は6兆円以上とされ、2025年3月期には1.5兆円超の売却が計画済み

  • トヨタグループは政策保有株ゼロ化を宣言した企業もあり、売却対象が集中

  • 京セラは保有額1兆円超で、KDDIやJALなどが売却対象に


この視点で見ると、売却される側の企業は資本構成の変化浮動株比率の上昇が起こりやすく、株価の短期的な下落圧力と中長期的な再評価が交錯します。

 

 

ただ、現状、下落している銘柄はほとんどありませんでした。

中長期で保有しようと思っている場合は、前述の金額程度は売り圧力として存在することを認識しておいた方がいいと思います。

Happy Trading !!

2025/7/25

これはGEMINIに生成させたエンタメ系企業の参考PERのデータ分析です。文面そのままを掲載していますので、運営者の見解とは違う情報も載っていますのでご理解ください。

日経平均の最近の平均PERが25倍、長期米国債の利回りは約22倍ですが、エンタメ系企業は新興企業のようにPERが高めの傾向がありますので、投資の際の参考にして下さい。

 

日本の上場エンターテイメント・IP企業のPER分析:最新動向と評価トレンド

 

1. はじめに

 

本レポートは、日本の株式市場に上場するエンターテイメント系企業および知的財産(IP)系企業の最近の株価収益率(PER)を分析し、各セクターの評価水準と市場トレンドを明らかにすることを目的とする。投資家や業界関係者が、これらの成長産業における投資機会や企業価値評価を理解するための一助となる情報を提供する。

PER(株価収益率)は、株価が1株当たり利益の何倍になっているかを示す指標であり、企業の収益力に対する株価の割安・割高を判断する上で広く用いられる。成長産業においては、将来の成長期待がPERに織り込まれるため、同業他社や市場全体の平均と比較することで、相対的な評価を把握することが重要である。本レポートで引用するPERデータは、主に2025年7月24日または25日時点の「会社予想(連結)」に基づいている。リアルタイムデータは変動するため、分析時点でのスナップショットとして理解する必要がある。

 

2. 分析対象企業の選定と分類

 

本レポートでは、コンテンツの制作・提供を通じて収益を得る企業を「エンターテイメント系企業」、知的財産(IP)の創出、保有、管理、および多角的なライセンス展開やメディアミックスを通じて収益を最大化する企業を「IP系企業」と定義し、分析を進める。

 

エンターテイメント系企業(映画、テレビ、音楽、ゲームなど)の定義とリスト

 

エンターテイメント系企業には、映画製作・配給・興行、テレビ放送、音楽制作・配信、ゲーム開発・運営、芸能プロダクションなどが含まれる。主要企業としては、映画分野から東宝、東映、松竹 1、テレビ分野からフジ・メディア・ホールディングス、日本テレビホールディングス、TBSホールディングス 1、音楽分野からエイベックス、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサルミュージック、アミューズ 1、そしてゲーム分野から任天堂、ソニーグループ、スクウェア・エニックス、バンダイナムコエンターテイメント、カプコン、セガサミーホールディングス、コナミホールディングス、コーエーテクモホールディングス、ミクシィ、ディー・エヌ・エー(DeNA)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、サイバーエージェントなどが挙げられる 1

 

IP系企業(キャラクター、アニメ、コンテンツ権利など)の定義とリスト

 

IP系企業は、著作権、商標権、キャラクター使用権といったIPを核として事業を展開する。主要企業としては、アニメ・出版IP分野から東映アニメーション、KADOKAWA 4、キャラクターIP分野から円谷フィールズホールディングス(ウルトラマン)5、サンリオ(ハローキティ)7、タカラトミー 7、VTuber IP分野からANYCOLOR(にじさんじ)、カバー(ホロライブプロダクション)7、音楽著作権管理のNexTone 8、Web小説・漫画IPのアルファポリス 7、カードゲーム・アニメ・音楽IPのブシロード 7、そしてアニメ制作・版権のIGポート 5などが選定される。

 

両分野にまたがる企業の整理とPER分析の視点

 

ソニーグループ、任天堂、バンダイナムコホールディングス、KADOKAWA、サイバーエージェント、アミューズなど、多くの企業がエンターテイメントとIPの両分野で事業を展開している。これらの企業は、コンテンツ制作(エンターテイメント)とIPの多角的なマネタイズ(IPビジネス)を融合させることで、持続的な成長を目指している。PER分析においては、これらの企業をそれぞれの主要な事業領域に基づいて分類しつつ、IPの強みがPERに与える影響についても言及する。

 

3. エンターテイメント系企業のPER分析:主要セクターの評価トレンド

 

主要なエンターテイメント系上場企業のPERは以下の通りである。

Table 1: 主要エンターテイメント系上場企業のPER一覧 (2025年7月24日-25日時点)

企業名 証券コード 主要事業 PER (会社予想・連結) データ取得日時 備考
東映 4816 映画・テレビ・アニメ 35.17倍 2025/07/25 09:40

アニメ・特撮IPも強み 9

松竹 9601 映画・演劇 61.73倍 2025/07/25 09:35 10
日本テレビホールディングス 9404 テレビ放送 17.80倍 2025/07/25 09:40 11
TBSホールディングス 9401 テレビ放送 29.32倍 2025/07/25 09:40 12
エイベックス 7860 音楽 45.18倍 2025/07/25 09:35 13
アミューズ 4301 音楽・芸能プロダクション 17.83倍 2025/07/25 09:21 14
ソニーグループ 6758 ゲーム・音楽・映画・エレクトロニクス 24.30倍 2025/07/25 09:40

多角化エンタメコングロマリット 15

任天堂 7974 ゲーム 51.32倍 2025/07/25 09:40 16
スクウェア・エニックス・HD 9684 ゲーム 44.06倍 2025/07/25 09:40 17
バンダイナムコホールディングス 7832 ゲーム・玩具・キャラクター 32.23倍 2025/07/25 09:40 18
カプコン 9697 ゲーム 37.49倍 2025/07/25 09:40 19
セガサミーホールディングス 6460 ゲーム・遊技機 17.53倍 2025/07/25 09:40 20
コナミホールディングス 9766 ゲーム・遊技機・スポーツ 37.69倍 2025/07/25 09:40 21
コーエーテクモホールディングス 3635 ゲーム 24.94倍 2025/07/25 09:40 22
ミクシィ 2121 ゲーム・SNS 18.11倍 2025/07/25 09:37 23
サイバーエージェント 4751 インターネット広告・ゲーム・メディア 37.99倍 2025/07/25 09:40 24
DeNA 2432 ゲーム・AI・スポーツ --- 2025/07/25

PER算出不可 25

ガンホー・オンライン・エンターテイメント 3765 オンラインゲーム --- 2025/07/25

PER算出不可 26

東宝 9602 映画・演劇・不動産 N/A -

データなし 27

 

サブセクター別のPERと傾向

 

映画・テレビ分野では、松竹のPERが61.73倍と特に高い水準にある一方、日本テレビホールディングスは17.80倍と比較的低い評価となっている。東映は35.17倍、TBSホールディングスは29.32倍である。この評価の差は、各社の事業ポートフォリオや将来の成長期待、あるいは一時的な収益変動によるものと推察される。松竹は映画・演劇に加え、不動産事業も手掛けており 28、純粋な映画事業の評価とは異なる側面もあると考えられる。東宝のPERは本調査では確認できなかったが、「鬼滅の刃」映画の成功や強力なIP活用、垂直統合型ビジネスモデル 4が市場で評価されていれば、高いPERが期待される企業である。

伝統的なエンターテイメント企業におけるPERの分散は、単に「エンターテイメント」という括りでは説明できない要因が背景にあることを示唆している。松竹のPERが際立って高い一方で、日本テレビHDが比較的低いのは、各社の知的財産(IP)の活用度合いが異なるためと考えられる。東映はアニメ・特撮IPに強みを持つことが知られており 4、IPの二次利用やグローバル展開において、放送事業が主軸の日本テレビやTBSに比べて収益貢献度が高い可能性がある。高いPERを持つ企業は、単一のコンテンツ制作に留まらず、保有するIPを多角的に展開し、安定したライセンス収入やグローバルでの収益機会を創出している傾向がある。特に、映画・テレビ業界においては、IPの「垂直統合型」ビジネスモデル(東宝の例 4)や、強力なIPを軸にしたメディアミックス戦略(KADOKAWA、東映の例 4)が、市場からの高い評価に直結している可能性が高い。PERの低い企業は、IPの収益化戦略が未成熟であるか、事業構造がより伝統的な収益モデルに依存している可能性が考えられる。

音楽・芸能分野では、エイベックスが45.18倍と高いPERを示す一方、アミューズは17.83倍と相対的に低い。これは、エイベックスが音楽レーベル事業を主軸とするのに対し、アミューズは芸能プロダクション事業が中心であるといったビジネスモデルの違いや 1、今後の成長戦略に対する市場の期待度の差を反映している可能性がある。

ゲーム分野では、任天堂が51.32倍と非常に高く、スクウェア・エニックス・ホールディングスが44.06倍、カプコンが37.49倍、コナミホールディングスが37.69倍、サイバーエージェントが37.99倍と、主要ゲーム会社は総じて高いPER水準にある。これは、グローバル市場での成長性、強力なIPの存在(ファイナルファンタジー、ドラゴンクエスト、バイオハザード、ウマ娘など 3)、デジタル配信による高収益性、eスポーツなど新たな収益源への期待が背景にあると考えられる。一方で、セガサミーホールディングスは17.53倍、コーエーテクモホールディングスは24.94倍、ミクシィは18.11倍と、ゲーム会社の中でもPERに幅が見られる。DeNAとガンホー・オンライン・エンターテイメントはPERが算出できない状況(「---」表示)であり 25、これは直近の業績が赤字であるか、将来の利益予想が不透明である可能性を示唆している。

ゲーム業界内でのPERの差は、IPのグローバル展開力、新作ヒットの継続性、そしてモバイルゲームやeスポーツといった成長分野への適応度合いに起因すると考えられる。特に、DeNAやガンホーのようにPERが算出できない企業は、過去のヒット作に依存しすぎた結果、新たな収益源の創出に苦戦しているか、一時的な赤字を計上している可能性が高い。これは、ゲーム業界が常に新しいヒット作とIPを生み出し続ける必要がある、非常に競争の激しい市場であることを示唆している。高いPERを持つ企業は、単なるゲーム開発会社ではなく、強力なIPエコシステムを構築している企業として評価されている傾向が見受けられる。

 

4. IP企業のPER分析:多様なIPビジネスモデルと市場評価

 

IPを主要な事業基盤とする企業のPERは以下の通りである。

Table 2: 主要IP系上場企業のPER一覧 (2025年7月24日-25日時点)

企業名 証券コード 主要IP/事業 PER (会社予想・連結) データ取得日時 備考
東映アニメーション 4816 アニメ制作・IPライセンス (ONE PIECE, プリキュア) 35.17倍 2025/07/25 09:40

アニメIPの強み 5

KADOKAWA 9468 出版・アニメ・IPメディアミックス 48.14倍 2025/07/25 09:40 30
ソニーグループ 6758 ゲーム・音楽・映画IP 24.30倍 2025/07/25 09:40 15
バンダイナムコホールディングス 7832 キャラクター・ゲームIP 32.23倍 2025/07/25 09:40 18
任天堂 7974 ゲームIP (マリオ, ポケモン) 51.32倍 2025/07/25 09:40 16
円谷フィールズホールディングス 2767 ウルトラマンIP・遊技機 12.36倍 2025/07/25 09:39 32
サンリオ 8136 キャラクターIP (ハローキティ) 34.09倍 2025/07/25 09:40 33
ANYCOLOR 5032 VTuber事業 (にじさんじ) 21.94倍 2025/07/25 09:40 34
カバー 5253 VTuber事業 (ホロライブ) 25.26倍 2025/07/25 09:40 35
NexTone 7094 音楽著作権管理 15.17倍 2025/07/25 09:40 36
アミューズ 4301 音楽・芸能IP 17.83倍 2025/07/25 09:21 14
サイバーエージェント 4751 ゲームIP (ウマ娘, グラブル) 37.99倍 2025/07/25 09:40 24
IGポート 3791 アニメ制作・版権 24.37倍 2025/07/25 09:40 37
ブシロード 7803 カードゲーム・アニメ・音楽IP 18.70倍 2025/07/25 09:37 38
アルファポリス 9467 Web小説・漫画IP 18.25倍 2025/07/25 09:40 39
タカラトミー 7867 玩具・キャラクター商品 20.45倍 2025/07/25 09:40 40

 

IPビジネスモデルとPERの関係性

 

IP系企業は、そのIPの多様なマネタイズ能力によってPERが大きく変動する傾向にある。任天堂(51.32倍)やKADOKAWA(48.14倍)のように、強力なIPを保有し、ゲーム、アニメ、出版、グッズなど多角的に展開できる企業は高い評価を得ている 16

VTuber関連のANYCOLOR(21.94倍)やカバー(25.26倍)は、比較的新しいIPビジネスモデルながら 7、高い成長性と熱狂的なファンベースに支えられ、堅調なPERを示している 34。これは、デジタルネイティブなIPが、迅速なコンテンツ展開と直接的なファンエンゲージメントを通じて収益を最大化できる可能性を示唆している。

東映アニメーション(35.17倍)やサンリオ(34.09倍)のように、長年の実績とグローバルな認知度を持つキャラクターIPは、安定したライセンス収入を背景に高いPERを維持している 5

一方で、NexTone(15.17倍)や円谷フィールズホールディングス(12.36倍)は、IPの管理・活用を主とするが、PERは比較的低い水準にある 32。これは、コンテンツの直接的なヒットによる爆発的な成長期待よりも、安定したストック型収益への評価が反映されている可能性がある。

IPの評価において、その「質」と「多角展開能力」がPERを大きく左右する要因となる。任天堂やKADOKAWAのPERが非常に高い一方で、円谷フィールズHDやNexToneが低いのは、単に「IPを持っている」という事実だけでなく、そのIPがどれだけ多様なメディアや商品に展開可能か、そしてグローバルに通用する「質」を持っているかに大きく依存しているためである。任天堂のIPはゲームだけでなく映画やテーマパークにも展開され、KADOKAWAは出版からアニメ、実写、ゲームへとメディアミックスを積極的に行う 4。高いPERを持つIP企業は、IPを単なるコンテンツ源ではなく、多角的な収益を生み出す「プラットフォーム」として捉えている。これは、IPの初期投資を回収し、長期的に安定したキャッシュフローを生み出すための戦略であり、市場はこうした「IPエコシステム」の構築能力を高く評価している。逆に、IPの活用範囲が限定的であったり、特定のビジネスモデルに依存している企業は、成長期待が限定的と見なされ、PERが低くなる傾向がある。VTuber企業が高いPERを持つのは、デジタルプラットフォーム上での迅速なIP展開と直接的な収益化モデルが評価されているためである。

また、デジタル化とグローバル化はIP価値評価を加速させている。KADOKAWAの事例が示すように、「スマホの普及によるデジタル化の進展」がIPの巨額な利益を生む要因となっている 31。東映アニメーションの『ONE PIECE』やテレビ東京HDの『NARUTO』『BLEACH』が海外で流行し、版権収入が増加している点も注目される 5。ANYCOLORやカバーといったVTuber企業もデジタルプラットフォームを主戦場としている 7。デジタル化はIPの流通コストを劇的に下げ、グローバル市場へのアクセスを容易にした。これにより、一つのIPが世界中で同時に展開され、ゲーム、アニメ、グッズ、ライブ配信など多様な形態で収益を生み出すことが可能になった。投資家は、IPが持つ「グローバルなリーチ」と「デジタルを通じたスケーラビリティ」を高く評価しており、これがIP系企業のPERを押し上げる主要な要因となっている。特に、海外での成功実績を持つIPや、最初からグローバル展開を視野に入れたデジタルIPは、より高いPERを享受する傾向にある。

 

5. 総合PERとセクター間の比較分析

 

 

エンターテイメント・IP企業全体の平均PER

 

本レポートで分析対象とした企業のPERを基に、各セクターの平均PERを算出する。

  • エンターテイメント系企業平均PERの算出:

    • 対象企業: 東映 (35.17), 松竹 (61.73), 日本テレビHD (17.80), TBS HD (29.32), エイベックス (45.18), アミューズ (17.83), ソニーグループ (24.30), 任天堂 (51.32), スクウェア・エニックスHD (44.06), バンダイナムコHD (32.23), カプコン (37.49), セガサミーHD (17.53), コナミHD (37.69), コーエーテクモHD (24.94), ミクシィ (18.11), サイバーエージェント (37.99). (16社)

    • 平均PER: 33.36倍

  • IP系企業平均PERの算出:

    • 対象企業: 東映アニメーション (35.17), KADOKAWA (48.14), ソニーグループ (24.30), バンダイナムコHD (32.23), 任天堂 (51.32), 円谷フィールズHD (12.36), サンリオ (34.09), ANYCOLOR (21.94), カバー (25.26), NexTone (15.17), アミューズ (17.83), サイバーエージェント (37.99), IGポート (24.37), ブシロード (18.70), アルファポリス (18.25), タカラトミー (20.45). (16社)

    • 平均PER: 27.10倍

 

両セクターのPER水準比較と特徴

 

エンターテイメント系企業の平均PERは約33.36倍、IP系企業の平均PERは約27.10倍となった。一見するとエンターテイメント系の方が高いように見えるが、これはゲーム業界の主要企業(任天堂、スクウェア・エニックスHD、カプコンなど)がエンターテイメントカテゴリに多く含まれ、これらの企業が高いPERを享受しているためである。

IP系企業は、VTuber関連企業など新しいビジネスモデルの企業が含まれる一方で、著作権管理やキャラクターライセンスなど、より安定したストック型収益モデルを持つ企業も含まれるため、平均値としてはエンターテイメント系よりやや低めに出る傾向がある。ただし、IP系の中でも任天堂やKADOKAWAのように強力なIPを多角展開する企業は、エンターテイメント系企業全体と比較しても非常に高いPERを維持している。

 

PERが算出できない企業の状況と考察

 

DeNA (2432) およびガンホー・オンライン・エンターテイメント (3765) は、提供された情報ではPERが「---」と表示されており 25、これは直近の業績が赤字であるか、あるいは将来の利益予想が公表されていない可能性が高い。これらの企業は過去に大きなヒット作(パズドラ 42, モバゲー 3)で急成長を遂げたが、その後の収益性が不安定になっている状況が示唆される。

東宝 (9602) については、PERの具体的な数値が本調査では確認できなかった 27。同社は映画事業で強固な地位を築き、強力なIPも保有しているため(ゴジラ、名探偵コナンなど 1)、本来であれば高いPERが期待される企業である。情報不足のため平均値には含めないが、その市場での存在感は大きい。

PERの「平均」は、セクター内の多様性を隠蔽する可能性がある。エンターテイメント系平均33.36倍、IP系平均27.10倍という数字だけを見ると、エンターテイメント系の方が評価が高いように見える。しかし、個社のPERを見ると、松竹の61.73倍から日本テレビHDの17.80倍まで、また任天堂の51.32倍からセガサミーHDの17.53倍まで、非常に大きな幅がある。IP系でもKADOKAWAの48.14倍から円谷フィールズHDの12.36倍まで広範囲に分布している。この広範なPERの分布は、単なる平均値だけでは捉えきれない、各企業のビジネスモデル、成長戦略、IPの質、グローバル展開力、そして市場の期待度の違いを強く示唆している。特に、IPの強みを持つ企業は、そのIPの活用度合いや将来の収益貢献度によって、PERが大きく変動する傾向がある。平均値はあくまで参考であり、個別の企業分析においては、その企業の具体的なIPポートフォリオ、収益化戦略、そして市場環境への適応能力を深く掘り下げることが不可欠である。PERが算出できない企業の存在は、市場が将来の利益成長を予測できない、あるいはネガティブな見方をしている可能性を示しており、投資判断において特に注意が必要なシグナルである。

 

6. 考察と今後の展望

 

 

PER水準に影響を与える要因

 

エンターテイメント・IP企業のPER水準は、複数の要因によって形成される。

  • 成長性: ゲーム業界やVTuber関連企業が高いPERを持つ主な要因は、デジタル化とグローバル化を背景とした高い成長期待である。特に、eスポーツやVTuber市場といった新たな市場を創出し、先行者利益を享受している企業は、高いPERで評価される傾向にある。

  • 収益性: デジタル配信やライセンス事業は、製造コストが低く、高い利益率を享受しやすいビジネスモデルである。これにより、収益性の高い企業はPERが高くなる傾向がある。

  • 市場期待: ヒットコンテンツの継続的な創出や、有力IPの獲得・育成に対する市場の期待がPERに大きく影響する。例えば、東宝の「鬼滅の刃」映画の成功は、同社の株価を押し上げる要因となる 29

  • IPの強さ: 「ゴジラ」「マリオ」「ファイナルファンタジー」「ウルトラマン」「ハローキティ」といった強力なIPは、長期にわたる安定した収益源となり、多角的なメディア展開を可能にするため、企業価値の源泉として高く評価される 1。IPの陳腐化リスクを低減し、持続的な価値創造ができる企業ほどPERが高くなる傾向がある。

  • ビジネスモデルの多様性: 東宝の垂直統合型モデル 4や、KADOKAWAのIPを軸としたメディアミックス戦略 4は、収益機会を最大化し、リスクを分散するため、市場から好意的に評価される。

 

IPの多角的な活用が企業価値に与える影響

 

知的財産(IP)は、単一のコンテンツとして消費されるだけでなく、ゲーム、アニメ、映画、グッズ、ライブイベント、デジタルコンテンツなど、多様な形態で再利用・展開されることで、その価値を飛躍的に高める。例えば、ソニーグループはゲーム(PlayStation)、音楽、映画といった多岐にわたるエンターテイメント事業で強力なIPを保有し、これらを相互に活用することで相乗効果を生み出している 3。バンダイナムコホールディングスも、ゲーム、玩具、映像、キャラクタービジネスを連携させる「総合娯楽企業」として認識されている 3。この多角的なIP活用は、収益源の多様化、ブランド価値の向上、ファンエンゲージメントの深化、そして新たなビジネス機会の創出につながり、結果として企業のPERを押し上げる重要な要因となる。

 

市場トレンドと投資家への示唆

 

今後もデジタル配信プラットフォームの普及とグローバル市場への展開が、エンターテイメント・IP企業の成長を牽引する主要トレンドとなるだろう。IPの海外展開実績や潜在力は、投資判断においてますます重要になる。投資家は、単に現在の収益性だけでなく、企業が保有するIPの質と、それを多角的に活用し、グローバル市場で展開する能力を重視する必要がある。特に、デジタルネイティブなIPや、既存IPのデジタル展開に積極的な企業は、将来の成長性が高く評価される傾向が続くものと見られる。