『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』

という本を少し前に読みました。

今、小池徹平(ちなみに顔がわからない)主演で映画上映中ですね。


タイトルからなんとなくわかりますが、小説じゃないです。

2chのスレッドをまとめて本にしたもの。

はじめは「俺」に名前はないのですが、途中で「マ男」と名づけられます。


著者の「黒井勇人」の名は、

ブラック=黒い→黒井

勇人=マ+男+スレッドの人々

という意味なのだそう。


■お話■

中学を卒業後10年間ニートだった「俺」がようやく就職した会社は世に言う「ブラック会社」。

ノルマはきつく、労働条件は過酷、残業代は支払われず、上司は無能。

それでも必死で働く「俺」に未来はあるのか……。


初めて飛び込んだSEの世界、小さな職場で人間関係に悩みつつも成長していく「マ男」のお話。

実話ということですが、物語としてみてもなかなか面白いと思います。


というか、物語としてみれば、なかなか面白いと思います。


「マ男」のがんばりぶりはすごいし、彼が出会うクセの強い先輩たちとも最後にはひとつの仲間としてまとまっていっているようで、フィクションならそこそこすっきり終わっているわけですが(まぁ、「上原さん」はかわいそう過ぎる気もする)。


でも、この本が売れて映画が作られたからといって、ブラック会社撲滅運動が起きたわけではなく、労働環境の改善が叫ばれたわけでもない。

スレッドを見に来ている人たちの反応も、「これぐらい普通だよね」なんてのもある。

「本当にこれでいいのか?」という視点はあんまりないようです。


どんなにつらくても耐え忍んでがんばる、と言えば美しいように聞こえるけれども、ちょっとおかしいよねって思う感覚は必要じゃないかな。

そういう環境で働くのが好きで好きでたまらない、金はいらん、とにかくつらい環境で働きたい、というのならまた違うかもしれませんが。


ともかく、こんな環境で働いている人たちがたくさんいて、その多くは若者(若くないと無理だと思う)。

これでは結婚もできないどころか、心身ともに危険です。


自分の労働の価値を考えるのは大事なことだと思います。

快適に働ける環境、自分の労働の対価について主張することは大事なことです。

過剰な要求や甘えとなってしまってはいけないけれど、主張自体はいいことでも悪いことでもなく、当然のことと憲法で認められているはず。


ま、我々が拒否した分の労働力を、もっと弱い立場の人や発展途上国の労働力が埋めているのが現実だと思うと、大きな欺瞞があるような気もするけれど……。

なかなかうまくいかないものです。

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない (新潮文庫)/黒井 勇人
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フツーにフィクションとして読めばフツーの話ですが、こういう環境で働いている人々がいて、それにあんまり疑問もなく、脱落しようと誰が守ってくれるわけでもない、というのが今の日本の状況なんだ……なんてことを考えてみるのもいいかもしれません。

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