『チェイサー』を見てきました。
監督は新人のナ・ホンジン。
怖い。
でも、見てよかった。
実は劇場で韓国映画を見たのは初めてだったのですが、最初から最後まで目が放せないこんな映画に当たったのはラッキーだった。
かなり暴力的なシーンがありますが、それを見せるための映画ではないと思うのです。
とはいえ、すぐお隣の国なのに、「暴力の描き方」がとにかく苛烈でなんだか独特で新鮮でした。
■お話■
元刑事のジュンホは、今はデリヘル経営。
雇っていた女が失踪したため捜索していたところ、彼女を最後に呼んだ客から再び電話がかかってくる。
この男が店の女たちをどこかへ売り飛ばしていると考えたジュンホは、店の女性を派遣して様子を見に行かせるが…。
もうね、最初のジュンホの登場シーンからして「あ、この映画はアタリだ」と思わせてくれました。
「いったい誰が犯人なの!?」というかたちのミステリーではありませんが、だからいっそう怖いのかも。
怖さも見所だと思いますが、ジュンホの心の動きが、彼の口からは一切語られないのにきっちりと、それも不自然でなく示されているところがすごかった。
いきなりわかりやすく「いい人」になるのではなくて、「ああ、この人はこういう部分も持っているんだな」とじんわりわからせるところがよかったかな。
でも、他人に心を許さないところはずっと一緒だし、こちらが怖くなるような暴力の振るい方をする。
ほっとさせない人でした。
そして、エネルギーの塊みたいな走り方がステキでした。
で。ジュンホ役のキム・ユンソクは桑田佳祐に似ています(笑
ジュンホもすばらしいのですが、ヨンミン役のハ・ジョンウもよかったよ。
怖かったよ。目が。
「こんなやついないよ!」でないのが怖かった。
自分のことは何も話さないのも怖い。全然意味がわからないんです。
命を奪うことなんて、たいしたことないんだよって感じで。ひとりだけ違うところを歩いているみたいで、こういう人って裁けないのではないかな…と思ったりする。
怖いことばかりだ。
暴力シーンは本当に痛そうだし、さらに「人間ってこんなことをするんだなぁ」と思わされるところで二度痛い。
決して楽しい映画ではありませんし(それどころか苦しい)、万人にオススメの映画とはいえないけれど、でも話して紹介せずにはおれん映画です。
ハリウッドでリメイクも決まっているらしい(ディカプリオらしいよ)のですが、このアジア独特の「湿気」というのは出ないだろうと思うのですよ。
どんなふうにリメイクされるのか、ちょっと見てみたいですね。
でも、ちょっと思ったのだけれど、あれだけトンカチでどつかれた後であれだけしっかりと歩けるものなのかしら……?