『アイム・ノット・ゼア』を見てきました。


ボブ・ディランの映画です。


監督・原案・脚本 : トッド・ヘインズ

出演 : ケイト・ブランシェット、 クリスチャン・ベイル、 リチャード・ギア、 マーカス・カール・フランクリン、ヒース・レジャー、ベン・ウィショー


公式サイト


出演としてあげた6人が、みんなボブ・ディランの役です。

ボブ・ディランの役といっても、この映画には「ボブ・ディラン」という人は出てきません。

それぞれ、ジュード、ジャック、ビリー、ウディ、ロビー、アルチュールという名前で出てくるのですが、これが結局はすべて、ボブ・ディランのこと。


あらすじの説明は必要ないと思います。

要するに、ボブ・ディランです。


「難しい映画」というレビューが多かったので、ちょっと心配していたのですが、そんなことはありませんでした。

私はボブ・ディランの曲といったら学生のときに授業で聴いたぐらいで(笑)、それほど熱心なファンではないどころか、「なんかちょっと暑苦しい」という印象だったのですが、映画見てCD買おうかなって思いました(単純)。


もちろん、ファンの方だったら「この場面がボブ・ディランの人生のどのシーンか」というのがよくわかっただろうけれど、その分いろいろな思い入れもあるでしょうから、私ぐらいでちょうどいいのかも。


このテの映画のうちでは、最もすんなり楽しめたし、「好きだからとりました」が嫌な方向に出ていなかった。演出も、やらしくなくて。

135分と長めの映画なのですが、「終わらないでほしいなぁ」って久しぶりに思いました。


映画はとてもきれいだったし、美術がすごくステキ。

ケイト・ブランシェットがなりきってて、びっくりでした。しばらく女性だと気づきませんでした(笑)


「わかってやろう」とか考えすぎないほうがいいのかも。

映像が流れてくるままに、その都度思うことを思っていればいいんじゃないかな。


それでいて茫漠とした映画ではなく、終わるころには「ボブ・ディランってこういう人だったのか」となんとなくわか(ったような気がす)る。


おりしもサザンが活動休止を発表したところですが、アーティストっていうのは本当に孤独な人たちなんだろうな…と思いました。

ボブ・ディランははじめフォークシンガーで、「プロテストをする人」という評価で、そのために人気が出るわけで、だからロックを始めたとき、コンサートで観客に「ユダ!(つまり、裏切り者)」と糾弾されたりもして、それについてもいろいろ考えるわけです。

彼自身の言葉なのかどうかはわかりませんが、途中で、創造するな。創造すると、誤解を受け、それは一生続く、といったような言葉が出てきて、けっこうショッキングでした。

たくさんの人にメッセージを出せば、その数だけの解釈が生まれますし、その多くは誤解なんでしょうね。

それはそれでいいのでしょうが、作り手にとってみれば、プレッシャーにもなるでしょうし、孤独感にも繋がるんでしょうね…。


ともかく、ステキな映画でした。


ああ、でもね、途中で蜘蛛が出てきてさぁ。

でっかい蜘蛛。むくむくしたヤツ。

あれだけは勘弁してほしい。


というわけで、★4.5個です。(5点満点。マイナスの0.5は、蜘蛛/笑)

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これ、ケイト・ブランシェット。

すごくかっこよかったですよ。


あと、リチャード・ギアが思いのほかステキだった。

マーカスくんは、歌がうまいし。

ベン・ウィショーの神経質そうなモノローグもよかったー。(彼は「アルチュール・ランボー」と名乗りますが、これは19世紀フランスの超有名な詩人。放浪の詩人で、いろいろいかがわしいことをしていた様子。詩作は20歳そこそこでやめてしまい、最後はアフリカで亡くなっています。)


私、シャルロット・ゲンズブールって造形だけ見ると美人だとは思わないのですが、魅力的だなーって思いました。肌なんか綺麗とはいえないのですがなんともいえない雰囲気があるなぁ。

ちなみに、この人のお父さんはセルジュ・ゲンズブールで、お母さんはジェーン・バーキン。


公式サイトを見ると、主演の6人はお互いばらばらに撮影したみたいで(まあ当たり前でしょうが)、そのモザイク感も面白いです。

それから、ケイト・ブランシェットはアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたのだそうです。

助演なんだ…。

じゃあ、主演は誰なんだろう。

ボブ・ディランなの?