壬生義士伝/中井貴一
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昨日テレビで見ました。
はじめのほう見てなかったのですが、後に行けばいくほど悲しくなってくる。

監督:滝田洋二郎
出演:中井貴一 佐藤浩一
原作は浅田次郎なんだって。

実は、新撰組についてはあんまりよく知らないのです。
悲劇のヒーロー達、というイメージと、京都を荒らしまわっていた人々、というイメージと。
どちらにしても、時代が大きく変わる瞬間に生きていて、その流れに翻弄された人たちなんでしょうね。

主人公は、南部藩の武士で吉村貫一郎(岩手の人です。なまってる)。
生活が苦しいので、脱藩して新撰組に加わる。
人を斬ってお金を稼ぐ、と字面だけ見ると極悪人なのですが、南部に残してきた家族のために襲撃に出かけていって「守銭奴」とののしられながら人を斬る姿は、とても悲しく苦しいのです。
家族にお金を送りたくて、彼は稼いでいるわけ。
それは、武士の基本姿勢とは本来相容れないもので、仲間にも馬鹿にされるのですけれど、でも、愚かなぐらい純粋でまっすぐで、自分の信念に向かう侍の姿がある。お金を見せられても動かないものが、彼の中にはあるのです。
ダメなんだ、自分が間違ってるんだってわかっても、一度決めたら戻らない。
もう、さっさと南部に戻っちゃえばいいのに、そういうことはしない。ちなみに、息子も五稜郭に行ったきり帰らなかった。

彼は「壬生義士」なのですね。義士なんです。

古いっていったらそれまでなのですが、日本人ってそもそもそういう人たちを贔屓目に見るタチらしく、私は特にそういうのに弱いです。
最後の方は、もう涙が出て止まらないのですが、ややひっぱりすぎの感が…。
「泣け!泣くんだ、ふゆき!」と言われている気がしてならない。
そもそも、あれだけ撃たれてあれだけ長く生きていられるものなのだろうか。

それはおくとして、若い役者がやや大根気味(というか、舌足らずというか)ですが、それを抜けば役者は十分でした。
中井貴一と佐藤浩一は、そういえば『亡国のイージス』でも共演していましたが、このデキの差はなんなんだろう(笑)

悲劇の武士ものが好きな方にはおススメです。
泣きたい、というより「泣いてスッキリしたい」とカタルシスを求めている方にもいいかもしれない。

追記:侍って(侍に限らず職人なども。要するに昔かたぎの男性)、日常生活は貧乏だろうが家族が泣いてようがかまいません、というのが「美しい」みたいなところある気がするのですが、日々生活するっていうのがどれだけ尊いか、ささやかな幸せがどれだけ美しいか、というようなことを考えました。
日常生活を卑近なもの、俗なものとしてもっと「高次元」の理想を目指すのはひとつの態度で、そこにも確かに美はあるけれど、毎日の生活を営むっていうそのこと自体が大切で困難で幸せなことなんだな、と。