昨日NHK総合(21:00~)で、
NHKスペシャル「“がん治療革命”が始まった~プレシジョン・メディシンの衝撃」
というのをやっていたので、見ました。
 
今までの殺傷型抗癌剤に代わり、癌の原因となった遺伝子の変異に合わせて、
適合する分子標的型の薬剤を使用する事により、劇的な効果が得られる、
という内容です。
肺腺癌ならEGFR陽性の変異に対し、イレッサやタルセバを投与する、という意味です。
そんな事、当たり前なので、何をいまさら、という気もしますが、
他にもいくつか、誤解を生む内容が含まれていたと思います。
 
(1)分子標的薬は、そんなに長く効く薬ではない。
  番組では、5年程度効く薬のような印象を与えていましたが、
薬剤耐性株の出現により、だいたい1年弱の延命効果しかありません。
 
(2)耐性になった時、代わりの(継続する)分子標的薬は、容易には無い。
  イレッサ、タルセバにはタグリッソが継続手段になりますが、
T790M変異が条件になります。
  番組では、あたかもイレッサが効かなくなったら、
別の薬(たとえばタルセバ)を使えば良いような印象を与えていましたが、
楽天的に過ぎます。
 
(3)ニボルマブ(オプジーボ)は、現在の所遺伝子の型で、効くかどうかは判別できない。
  番組では、遺伝子の変異で選ぶ薬剤の対象として、
免疫チェックポイント阻害薬も挙げていましたが、これは現段階では誤り。
(EGFR陽性の患者にはオプジーボは効かないという「噂」はありますが)
 
(4)何よりも、癌の原因となった遺伝子の異常を特定するために、
癌組織を採る方法が難しい点について、触れられていなかったのが残念です。
  採血だけで分かるようになれば、万々歳なのですが。
 
「がん治療革命」というタイトルからして、少々楽観的な作りの番組でした。